うーん、これは名文だ
湊かなえ「残照の頂―続・山女日記」読了。素晴らしかった。
湊さんと言えばいわゆる“イヤミス”が多く、私はあまりいい読者ではない。
一転、前作「山女日記」は生きづらい多彩な問題を抱える女性たちを取り上げてイヤミス要素が少なく面白かったが、この続編は小説としての進化がさらに顕著だった。
特に「北アルプス表銀座」が心に残る。北アルプスを縦走する女性2人に漂う緊迫感と、その背景にある切なさがミックスした独特の世界観。こうした味わいは決して映像化できず、小説にしか描けないものだと思う(あ、本シリーズはNHKBSでドラマになっていたようだ。まったく見逃していたが、このエピソードは描かれたのだろうか)。いつかまたこの話だけでも再読したい。
とりわけ124pの夜明けの描写は文学史にも残るだろう名文。どうしたらこんな文章が書けるようになるのだろう。
数年前、プチマイブームでハイキング程度の山歩きにハマった私だが、もうこの年齢では本格的な登山はムリ。それよりも休日は読書タイムに耽溺したい。それだけに本作でこの世界を味わうことができたのは幸せだった。
湊さん、ありがとう。
(21/12/9)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?