「立身出世」の物語は日本の琴線に触れるのか?
先月からのNHK朝ドラは「おむすび」が始まった。ネットでは、ギャルが朝にそぐわない、主人公の行動が突拍子もない、話の展開が遅い、などの「おむすびたたき」で盛り上がっているようだが、「アンチもお客さん」であり、みなさんそうして楽しんでいるわけだ。
橋本環奈は可憐で可愛いし、姉の仲里依紗は出演しているだけで面白いし、私は毎朝楽しく見ている。
同時に見ているのがBS直前枠の「カーネーション」再放送。尾野真千子の凛としたたたずまいや小林薫の芸達者ぶりが見どころで、「なるほど、朝ドラの名作のひとつと言われるだけのことはあるなー」というところだ。
けさは尾野演じる主人公の糸子が洋裁の腕前によって勤め先の生地店をみるみる繁盛させるという展開。なんとなく予想できる展開ながら、その姿にはワクワクさせられる。
「これって何かに似ているな」と思っていて気がついた。戦前の人気漫画、田河水泡の「のらくろ」で、軍隊(その名も猛犬連隊!)に拾われた野良犬が二等兵からぐんぐん出世していく、それをワクワク見守るのに似ているのではないか。
もちろん昭和30年代に生まれた私は「のらくろ」に同時進行で熱中したわけではない。昭和ひとけたの父が買ったのだろう、どでかい「のらくろ大全集」があったのを読んでいただけなのだが。
いまとなっては、猛犬連隊が活躍する姿は旧日本軍がモデルだと理解できるし、豚や猿はアジアの国々を見下した表現だったことに鼻白むが、それだけに当時の子どもたちが夢中になったのだろう。その気分はなんとなく受け継がれていたことになる。
そういえば「のらくろ」はテレビアニメにもなっていたな。戦後のテレビであれを取り上げることに批判やハレーションはなかったのだろうか、とさらに余計な心配も。
とにかく。
「カーネーション」における糸子の活躍は、これからも見逃せなくなっている。
(24/11/7)