綺麗なお母さんは好きですか?

私の母は女優かモデルになれば良かったのにと思う程上背のある美人で、目立たないように地味にしても授業参観で学校に来た母を見ると、「え、誰のママ?」と大人も子どももざわつくので、優越感を覚えた。妬んだ他のママ達が敵意を持って母に近づいても、実家はとっくに没落していた学習院出のお嬢様は気も弱く向上心も戦闘能力も限りなくゼロ。おまけに夫がしがない地方公務員とわかると、あっさりマウントを取られて、彼女らのパシリに使われていた。

妻の美貌を持て余していた父は亭主関白でもなかったので、夫の機嫌を取る為に綺麗をキープする必要もなく外見にはほぼ無頓着の母の下で育ったが、社会に出ると殆どの天然美女が妬まれて嫌がらせをされないように必要以上に目立ないように地味にしてることに気づいた。

反対に裕福な家庭の子女達の母親は、一律皆さん裕福な夫に捨てられないように自分の外見に気を遣っていることを知った。太らない為に鳥が啄む程度しか食事を取らなかったり、夫にスッピンを見せないように家の中でも化粧をしていたり、夫が他の女によそ見しない為に涙ぐましい努力をしている。オラオラ亭主の機嫌を最優先している生活を何十年も続けているうちに、ある日突然台所で水浴びをした母親もいたらしい。

ここ最近は夫の心を繋ぎ止め妻の座をキープしたい、という理由以外に十年以上前に始まった美魔女ブームのせいで、世の中の美意識が向上してしまい、妻や母になったのを機会に美容戦線から離脱して、太ったり老いることが出来なくなってしまった。愛妻家の夫は多分私が太ろうが老けようが気にしないのに、自分自身が許せないので、ジムと皮膚科通いは外せない。どのタイミングで美や若さへの執着を捨てられるのだろう。


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