小2息子が受けたプチいじめの構造をシステム思考で紐解いてみる
小2息子が、トラブルの渦中にいることを教えてくれた。相手は、小5の女の子。
学童がきっかけで仲良くなり、わが家にも遊びに来てくれたことがある。
気が強いタイプだなとは思っていたけれど、礼儀正しかったので大げさに捉えていなかった。
だけど、息子が「今日、嫌な気持ちになったことがあった」と話してくれたことをきっかけに、あれやこれやと出てきたエピソードの数々が胸くそ悪かったため、筆を走らせている。
幸い、まだいじめと言い切るレベルではないし、相手は小5の女の子なので、彼女自身に責任を求めるのは早計だと思う。
それよりも仕事柄、なぜこのようなプチいじめが起きてしまったのか、その構造を紐解き、自分の心も整理したくて、このnoteを書き始めた。
私と同じように、子どもが嫌な思いをしてしまっている親御さんはもちろん、もしかしたら自分の子どもが誰かを傷つけるようなことをしてしまった時、それがなぜ起きたのかを落ち着いて振り返る材料にもなるんじゃないか、とも思っている。
予兆①:そもそも息子はその子が嫌いだった
相手の小5の女の子(仮名:Aちゃんとする)と息子は3歳差で、息子が入学した時は4年生だった。
学童は1〜2年生がボリュームゾーンで、3年生がちらほら、4年生以上となると数人しか来ない。
その頃からAちゃんはボスキャラとして君臨しており、自分がやりたい遊びを主張したり、自分ルールを押し付けたり、気に入らない子に対して意地悪なことを言っていたようだった。
息子が1年生だった当時は、「Aちゃんは嫌い」「Aちゃんが怖いから学童で遊ぶのがつまらない」とこぼしており、小学生でも弱い者に威張り散らす子がいるんだなと恐怖を感じていた。
しかしながら息子も2年生になり活発さが増し、Aちゃんとしても遊び相手として気に入ってくれたようで、「Aちゃんと遊ぶの楽しい!」と言うようになった。
いつの間にか息子はAちゃんの名前を呼び捨てにするようになり、スイミングスクールも一緒に通うほどの仲になった。
その流れでわが家にも遊びに来るようになり、”今日の敵は明日の友”とはよく言ったものだなと微笑ましく感じていた。
予兆②:遊ぶときは必ずお菓子を持参させられていた
自分が小学生の頃、公園で遊ぶ約束をした時、毎回お菓子を持って行っていただろうか?
もう25年以上も前の話なので(え、誰か嘘だと言って)、記憶には定かではないが、ほとんど持っていかなかった気がする。
ある日、息子がAちゃんと放課後に近くの公園で遊ぶ約束をし、嬉しそうに「Aが書いてくれたよ!」と小さなメモ紙を持って帰ってきた。そこには、集合場所と持ち物がわかりやすく書かれていた。
小5の女の子が小2の男の子と、放課後に公園で遊ぶのって楽しいのかしら?と、疑問に思いながら眺めていると、その中に「お菓子」という記載を見つけてしまった。
もしかして、お菓子目当てで呼ばれてるのでは・・・!?という疑念が頭をよぎる。
息子には一旦、「ごめん、うちに今は小分けにできるお菓子がないから、また今度持って行くって言ってくれない?」と言うと「わかったー」と軽く返事が来た(素直か)。
そのまま送り出した数時間後、約束の時間から15分ほど遅れて帰宅した息子のリュックの中には、小分けのお菓子の空き袋が入っていた。
話を聞いてみると、お菓子を忘れた息子は、特に責められることもなく、Aちゃんからお菓子を分けてもらい、また次に遊ぶ約束もしたらしい。
心底ホッとしたことを今でも覚えている。
そういえば土日に子どもたちと公園へ行くと、子ども1人でもお菓子を持参している子が多かったことを思い出した。
近頃の子どもたちは自分の時とは違うのだなと思い、2回目以降は小分けできるお菓子を持たせるようにした。
予兆③:息子がゲームのレベル上げをさせられていた
うちの息子はゲーマーで、Switchをかなりやりこんでいる。
スマブラはもう両親も歯が立たないし、ポケモン バイオレットも自分でYouTubeを調べながらストーリーを全攻略。(ちなみに今は太鼓の達人になっている)
AちゃんもSwitchを持っていて、わが家に遊びにきた時は、2人でポケモンに夢中になっていた。
どうやらAちゃんはまだ、ポケモン バイオレットをクリアしていなかったようで、息子が代わりにストーリーを進めてあげたり、強いポケモンをあげたりしていた。
2人とも楽しそうに遊んでいたし、息子も同学年の子より話が合うから、案外良いコンビなのかな、と微笑ましく見守っていた。
だけどゲームのレベル上げを人にやらせる子のことを、私はもっと注意深く見ておくべきだったのだと、後から気づいた。
このSwitchの話が冒頭の息子からの告白、「Aちゃんから嫌なことをされている」につながっていく。
息子の告白①:「ママには言っちゃダメ」と言われてたんだけど・・・
先日、Aちゃんと息子と、息子と同い年のBくんが放課後にわが家で遊ぶ約束をしていた。
息子もみんなで太鼓の達人ができるのを楽しみにしていたのだけど、私が風邪を引いた上、夫がヘルペスになってしまったので、公園で遊んでもらうことにした。
Aちゃんには約束の前日、たまたま直接話せる機会があったので、私の方から事情を説明し、「本当にごめんね」と謝った。
その時にAちゃんは納得してくれていたように思えたのだけど、実際は違ったようだった。
息子はその後Aちゃんに、「ママ(=私のこと)には言うな」と口止めされた上で、「あの日BくんとSwitchのフレンドになれなかったのは、ママのせいだからね」と責められたらしい。
どうやらわが家で遊ぶときに、みんなのSwitchを持参し、AちゃんとBくんはフレンドというものになる約束をしていたようだった。
息子も「ママだって風邪を引きたくて引いたわけじゃないから、悪くない」と反論したらしいが、3つも上の女の子にすごい剣幕で言われてしまい、その日も言い負けてしまったとのことだった。
約束していたBくんも、家庭の事情で1ヶ月に1回しか放課後の約束ができない子だったので、Aちゃんが悔しい気持ちもわからなくはない、と思いながら聞いていたが・・・
私本人と話した時には、Switchの話は一言も出さなかったのに、わざわざ息子に口止めしてまで嫌味を言ってくるのはどうなんだろうと、胸が少しザワっとした。
息子には私の感想として、「強い大人には何も言わないのに、弱い方に口止めして嫌なこと言ってくるなんて、最悪だね。」と率直に話してみた。
その言葉を聞いた息子から、更なる告白があり、ついにAちゃんの悪事が明らかになっていった。
息子の告白②:Aちゃん主催、地獄のサッカークラブがある
Aちゃんと息子含めた数名の仲良しグループで、サッカー(というかボール蹴り)をする時に、「サッカークラブ」と銘打ってランクをつけていることがわかった。
そのランク付けの階層と、誰がどのランクなのか、ランクアップとランクダウンは全てAちゃんが指揮命令権があるとのことだった。
そのサッカークラブがただ切磋琢磨するためにあるのならば差し支えないけれど、問題は息子がサッカークラブのランクをチラつかせられて、脅されていることだった。
何かAちゃんにとって気に入らないことがあると、「じゃあCランクにするからね」と言われたり、もっとひどい時は「もうお別れにするからね」と脅されたりするらしい。
Aちゃんから見たら、3つも年下で弱い立場の息子に対して、脅して言うことを聞かせるとは、正直言って頭の理解が追いつかなかった。
そしてこの話には続きがあり、サッカークラブが原因で、既に仲良しグループから抜けた子もいるということだった。
息子の告白③:Aちゃんグループから外れた子がいる
前述のサッカークラブには”お別れ”というシステムが存在し、もう一緒に遊ばないことを意味するらしい。(地獄なのか)
息子曰く、Aちゃんの1つ年下の4年生、Cくんも仲良しグループの中で遊んでいたが、Aちゃんとソリが合わず、お別れになったという。
このCくんについても以前、息子が放課後に何人かの友達と一緒に遊んだときに、「AちゃんがCくんを仲間外れにしておいていこうとした」という話を聞いたことがあった。
その後のCくんは、学童でAちゃんから声をかけても聞こえないフリをして、1人で漫画を読んでいる、と息子から聞いた。
「Aちゃん、やべーやつじゃん」と、私も思わず本音が漏れた。
息子もいろんなエピソードを話すうちに、Aちゃんと遊びたくない気持ちが強くなったようだった。
とはいえ、Cくんのようにグループから外れて、Aちゃんに声をかけられても1人で遊ぶことに徹することは難しいようだった。
ひとまず、学童は休ませることにして、まずは学童のスタッフさんに私から事情を相談することにした。
結論として、今では問題も解決し、息子はAちゃんと離れている。迅速にご対応いただいた学童のスタッフさん、先生方には本当に感謝しています。(解決までの経緯はもう1記事くらいボリュームがあるので、また別の機会に)
次の章ではこのnoteの趣旨である、プチいじめがなぜ発生してしまったのかを、システム思考の観点で紐解いてみたいと思う。
Aちゃんが悪事を働く構造を、システム思考の観点から紐解く
今回のケースでは、息子が被害者でAちゃんが加害者という立場になった。
果たして、加害者であるAちゃん”だけ”が100%悪いのだろうか?私は心理学を学んでいる端くれとして、Aちゃんだけが悪いとは思えなかった。
それよりも、何がAちゃんをそうさせているのか、が気になった。
日本ではまだメジャーではないが、海外のフランスやカナダでは、いじめている側に病理があるとして、カウンセリングを受けさせて癒す取り組みもあるらしい。
カウンセリングに使われる心理学も様々な種類があるが、今回はシステム思考が取り入れられている家族療法の観点から、Aちゃんの悪事について紐解いてみようと思う。
システム思考って何?
そもそもシステム思考とは何か。
システム思考とは、目の前に起きている問題に影響する要素を洗い出し、それらの要素がどのように関係し合っているのかを紐解いていくことで、根本的な問題解決をめざすものである。
例えば生態系も、何かの害獣・害虫を間引いたら、それが天敵だった生物が大量に繁殖してしまって新たな被害を起こしてしまったりする、まさに複雑で大きなシステムだと捉えられる。
システム思考では、「ループ図」という形で図解し、要素とそれらの相互作用(フィードバックループ)を理解しやすくする方法が取られることが多く見受けられる。
心理学の分野でも、構造主義という考え方があり、人間の意思・行動は目に見えない構造によって影響を受けていると考えられている。
そういったシステム思考、構造主義の考え方が取り入れられているのが、家族療法だ。
家族療法では、実際に問題が起きている個人を単体でみるのではなく、「家族システム」として家族を捉えていく。
そして、その「家族システム」の中で発生する相互コミュニケーションを明らかにし、悪循環になっているものを改善していくのが、家族療法のアプローチである。
家族療法もいくつか流派があるのだが、ここでは”システム理論に基づいた家族療法”を参考にAちゃんの家族システムに対する仮説を立ててみたいと思う。
なぜAちゃんが悪事を働くのか、その仮説
家族療法で家族システムを紐解く時、実際に何らかの問題を抱えている人は「IP」と呼ばれる。
息子から聞くところによると、Aちゃん家族はこのような家族構成だった。
私が息子から聞いたAちゃんの悪事の中で、印象的だったものを2つ取り上げ、この「家族システム」で何が起きているのか、仮説を立てたいと思う。
仮説①:家族内でカーストが発生している?(Aちゃんのサッカークラブの事象より)
サッカークラブのメンバーは、全てAちゃんよりも年下で構成されており、ランクの昇格と降格は全てAちゃんの一存で決められる。
一方でAちゃんは、上のお姉ちゃんとも歳が離れているため、家族の中では一番弱い立場である。
もしかしてこの家族システムの中で、Aちゃんは弱い立場であったり、自分の意思をあまり取り上げてもらえていないのではないか?
もしくは逆に、歳の離れた妹ということで、全員に甘やかされていて傍若無人に振る舞う癖がついてしまったのではないか?
どちらにしても、家族システムの中で対等なコミュニケーションが行われていない、というのが1つ目の仮説である。
仮説②:家族が本音と建前を使いすぎている?(息子がAちゃんに口止めされた事象より)
正直言って、私が今回一番びっくりしたことは、息子がAちゃんから「ママに言うな」と口止めされていたことだった。
小学生は確かに、悪い嘘を覚えていく時期ではある。例えば自分を守るために、宿題をやったと嘘をついてみたり、勝手におやつを食べたことを秘密にしてみたり。
だけど、それを友達に強要する脅しを、小学生の子どもがするのか、と正直びっくりした。
子どもは良いことだけでなく、悪いことを大人から学ぶ。(うちの子も、私の真似してほしくないところばっかり似てしまう。)
もしかしてAちゃんの家族では、もしかしてお母さんが仲の良いママ友の悪口を言っていたり、お母さんやお父さんがパートナーの愚痴を聞かせたりして「これは内緒ね」なんて口止めしたりしているのではないか。
Aちゃん家族の中で、お母さんとは限らなくても、誰かしらが本音と建前を使いすぎていて、Aちゃんも「相手にバレなきゃ何を言ってもいい」と学習してしまったのではないか?というのが、2つ目の仮説である。
仮説を立てると冷静になれる
これらの仮説は、全くAちゃん家族内での様子を見たことがない私の、勝手な妄想にすぎない。
けれど、仮説を立ててみて感じたのは、「Aちゃんだけが悪いわけではない」ということだ。
こういったいじめの問題は、自分の子どもが被害者になってしまうと特に、冷静さを欠いてしまう。
一歩間違えれば、「あの子のせいで息子が傷ついた・・・!まじで鉄槌を喰らわしてやる!!」みたいな闘争本能剥き出しな状態になりかねない。
だけど、自分の子どもだって、いつ逆の立場になるかわからない。
自分の気づかないところで、私たちの家族システムに綻びがあって、子どもたちがIPになってしまうことだってあり得るんだ。
そう感じたことで、Aちゃんのことを責める気持ちもかなり収まったし、「他人のフリ見て我がフリ直せだな」と、気が引き締まる思いがした。
息子の話を聞いた後、どうするか
一連の事象について話したことでスッキリしたのか、翌日の息子は落ち着いた様子だった。
そして話してみたことで、Aちゃんに対しての嫌悪感が強くなったようで、学童をお休みすることにした。
これからの行動について、私たちには3つの選択肢があった。
私は当たり前に①か②だろうと思ったが、息子は③を選んだ。
息子は第一に、Aちゃんからの報復が怖かったようだった。次点は、この話をしたら、もうAちゃんと遊べなくなってしまう、ということも気にかかっていたようだった。
息子の中では、ここまで傷つけられてもまだ、Aちゃんとの楽しかった思い出も捨てきれない様子だった。
対話を重ねたが、息子の踏ん切りがつかなかったので、一旦は③の誰にも言わないを選択することにした。
息子の意思を尊重する
親から見たら、誰にも言わなければ、状況は何も変わらないじゃないかと、ヤキモキしてしまう。
だけどここで親が無理やり事を進めてしまったら、息子の心にまた新しい傷を作ることになる。
そしてもう一つ、息子の意思を尊重することで、身をもって学んでほしいことがあった。
それは、何かを捨てないと、何かを得ることはできないということだった。
今回については、Aちゃんと楽しく遊ぶという希望を捨てること。
Aちゃんと遊ぼうとすると、残念ながら脅しがつきまとう。
そして、もしAちゃんにそれを伝えたら、もしかしたらもうこの先遊べなくなるかもしれない。
Aちゃんが優しくなって、これからも楽しく遊べる、なんて自分に都合が良く現実が運ぶのは難しい事なのだ。
悲しいことに、私たちは他人を変えることはできない。変えられるのは、自分だけ。
そんな話を息子と話し合ううちに、何日か経つと息子の中で折り合いがついたのか、「学童のスタッフさんに言ってみてほしい。」と言ってきた。
もうAちゃんと遊びたいという気持ちも減ってきたようだったが、報復が怖いようで、「学童のスタッフさんから、Aちゃんには伝えないでほしい」とのことだった。
親は子どもを守るが、本人へ武器を渡すことが一番大事
その後すぐに学童のスタッフさんから時間をもらえることになり、その際に小学校の先生にも伝えた方がいいだろうとの判断で、速やかに先生へ報告してくれた。
解決までの流れはまた別の機会があれば書こうと思うが、無事に事件もひと段落つき、現在も息子は元気に学校へ行っている。
息子には常々、小学校は大人になる練習をするところだと伝えている。
いつまでも、親が子どもを守り続けることはできないから。
なるべくなら、親が手を出さずに、本人が解決できた方がいい。
親ができることは、子どもの代わりに問題を解決することではなく、本人へ武器を渡すことだと思う。
けれど、今回ばかりは本人が解決できる範疇を超えていたので、私たちは子どもを守ることを選んだ。
今回、息子にはこのように説明した。
「”ママに言うな”っていう悪い嘘は、聞かなくていいんだよ。その場では怖いだろうから、”うん”って言っていい。でもそのあとは、すぐに大人に言うんだよ。」
「大人になっても、パワハラやセクハラっていう、嫌なことをされてしまうことがあるかもしれない。その時は、相手に直接言わなくていいから、代わりに誰か別の相談窓口の人に相談するんだよ。」(※多分こっちの話は難しくてわかっていないと思う)
息子は今回、痛い思いをしたけれど、その分もっと人に優しくなれると、私は信じている。
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