僕の好きな詩について 第八回 矢沢宰
好きな詩について放言するnote、第八回は早逝した天才詩人、矢沢 宰(おさむ)です。
短い詩なので2つ載せます。ではどうぞ。
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「少年」矢沢宰
光る砂漠
影をだいて
少年は魚をつる
青い目
ふるえる指先
少年は早く
魚をつりたい
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「再会」
誰もいない
校庭をめぐって
松の下にきたら
秋がひっそりと立っていた
私は黙って手をのばし
秋も黙って手をのばし
まばたきもせずに見つめ合った
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矢沢宰を語る上で大事なキーワードは「病気」です。
父親から感染した腎臓結核によって長い闘病生活を余儀なくされた少年時代、詩や俳句を書くことで生への渇望を、自己の存在を表現し続け、その結果他のだれかには書けない詩をものしていき、21歳で他界した矢沢宰氏。
上記の「少年」の一節は彼の死後に出版された詩集のタイトルとなりました。
他の少年たちと同じように自然の中で遊びたい気持ちが、キラキラと光る言葉になり、胸に迫ります。矢沢宰はキリスト教徒で、そのことと詩の中の「青い目」は無関係ではないと僕は思っています。
「再会」は学校での季節のうつろいとの出会いを描いています。秋を擬人化することで、今まで病院でしか出会えなかった夏の終わりと秋の訪れに抱く想いを表しているようです。
どちらの詩にも強い透明感と輝き、清潔さがあり、たとえ作者の人生を知らなかったとしても、感じるものがあります。
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