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僕の好きな詩について 第三十二回 帷子 耀

こんにちは!十月がどこかに帰ってゆこうとしています。気が早すぎないでしょうか。

僕の好きな詩を紹介するノート、第三十二回は伝説の詩人「帷子 耀(かたびらあき)」氏です。

氏の15~16歳(!)の頃の作品です。ではどうぞ。
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「瞳冒涜」帷子 耀

眼のようにすべては明るい
眼のようにすべては見えない(瀧口修造)



しんかんと鳩胸しぼる火酒もて
あやめあぐねよ
膿めるあなたは
むずがゆく火の手に孕む不倫

そのまどろみゆめみずくちびる追われた
草笛に荒れてほつれる帝国のバッハ編みなし
はばたこうとする

ぬるい性!
はばたくならば指腹婚領(ラビ・イバ)
ふたなり割らぬ兎口ばかりで受肉する

花挟みたもう主を遊び
拝火となって昂ぶれる節狂れた悲鳴
あくまで淡く
まみれてよハーモニカから噴き出る黙秘に



膝をつき
新約にさす岩清水 されば
華やぐ膝をつきだし

ひとりでの私服失明さらば薔薇
さらばさなかに背にかしたる辺境で
朝を集める
失楽のあなたの四肢をバベルは欲した

非行する!
牌(パイ)と貧しい混血を売り生き急ぐ伏字よつづれ
火喰鳥 ひくくさいなむ
ひとだまのつま 封蝋に招かれはせぬ

草々としたためたくて
バーベルに
種子を与えたしみいる修辞



黄泉帰る視線十字に堰をきり
天の河など
あふれださせる
方舟で引き揚げてくる夜 軍鶏を吸う

色弱は 破調になれて
あぶらぎる示威に 砂丘をさししめす
美貌が負えるハルマゲドンに

不法所持!
<捕縛>血文字と花言葉
舌うちつのる塩となる河

残飯に使途博徒らがぶちまけた
主の起源架け 天の河に沿う
制圧はあなたが素手で
打つ死産 バニーガールよ湯あみあゆめる



恋ざめだ
末裔堕としめる血を焚いた
真蒼な嘘それすらもなく

病むな虚無ふりつもれとはたらちねに
盗み見ていたにくしみの煮る
軟禁を 顕(た)ちすくんでいる
プラトニク あなたは知らずあなたと知った

恋ざめだ!
棲み触れあうのどもとを 痛ませる犠牲(にえ)
なべて密かに生血より なのはな名のる
春に似せ

噛みしめようにも熟れいたる汗 蟻地獄
抱き落ちてゆけずぶ濡れにビスケットがあり
はっしと生きた



泣きはらす春の嵐の美しく
訛る深みに
めぐり没した
逃げ水の安房であらそい身がまえる

あなたが暗に洗うゆうひか
ふかくにも増水の後
ほほえんだ主よ収穫は嫉妬を育てた

光あれ!
赤らみつくすひややかな瞳冒涜
愛でありえぬバリケード

静かにためらい初潮まで完膚なきまで
希望はひたる 青銅のフラッシュバルブ
茫々と
あの彫りふかい空に属して



澄みて咲き
雪溶ける絶句 歳月を
花に起こしてむしろせせらぐ

挨拶は殺意に殉じ
ありふれた尾行を曳くひとすじの息
放水か 正義のようにひきしまり
腹部命を つちにひたした

ひえる罰!
たとえば腑分け禿げあがる神父ひとりに
獅子をおしあて
吐かしめるビアフラの美

星菫と誰を呼ぶのだ しきりにあなたは
けものめき父性を絞める塹壕の
ブルージーンズ 雪にあがめる



白兵を 正装に数えきっとして
押韻のように踏みしめる
午後
ぬら苦く自由がしゃがむ

亡命の底に咳きこみあなたは彼岸
バルタザール 腕のあたりに斧を組み
本能のまま踏みこんでゆく

問え安置!
暗喩にならぬバーナーが
灼きつけた主のいちまいの風

法廷を娼婦にしたて身を投げる
うつうつと見よ うつうつと見て
食らいあう切りたった眉字の暗さすら
〈風の背後〉と言葉すくなに



冴えかえる
菊と刀をふくんでか
咲きそそる傷 非戦闘員(もののふ)の腑に

あえて黙在(もだいま)すあえぎに
まっとうする抒情七つのあえかなる夏
薄明をぬるましめ書く〈三光………〉と
ハネムーン死ぬ爪たちかこみ

尻を追う!
宰相よ死ね唱導の人差指はみずみずしき肉
青眼もいわれなき刻なまじまぬ
霊魂婚礼在せばならず

しんかんと鳩胸しぼるブランコの
死に花真昼
まむけるわたし



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過去最長!なんといいますか、意味深な短歌が無限に続いている、といった趣です。

帷子 耀(カタビラ アキ)氏は1960年代後半に13歳で現代詩手帖の読者投稿欄に颯爽と現れ、数年間 衝撃的な詩を発表し、その後いきなり詩壇からいなくなり実業家に転身し成功を収めるという、凄いとしか言いようのない経歴の持ち主で、先日「習作集成」という氏の集大成的な作品集が出版されたばかりだったり、現代詩手帖でインタビューと作文が掲載されたりと今ホットな詩人のひとりです。

僕の手元にある資料とウィキペディアの情報がずれているので微妙なところですが、1969年に当時ティーンエイジャーの才能を発掘することに懸命だった寺山修司の強い推薦で帷子氏が14~15歳の頃、現代詩手帖新人賞を授賞。時代の寵児となりました。上の詩の内容が時代を反映しているか僕には分かりませんが、当時は安保闘争の真っ只中で、詩人たちは若者の思想の代弁者だったようです。

今、市井の詩に思想を見出だすのは難しいです。それが平和の象徴として良いことであるか、国民全員の教養の平均点の低下とみなされる悪いことであるか、ここでは触れないで筆を置きたいと思います。

#詩 #現代詩 #帷子耀 #瞳冒涜 #現代詩手帖

いつか詩集を出したいと思っています。その資金に充てさせていただきますので、よろしければサポートをお願いいたします。