突然ですが、詩人 小笠原鳥類さんの評論集を出版したいのでクラファンはじめました。
数年前には全く予想していなかったのですが、私が詩の出版社を立ち上げ、その小さな出版社「ライトバース出版」から、2022〜2023年の間に現代詩手帖読者投稿欄の選者を務めた小笠原鳥類さんの第一評論集『吉岡実を読め!』を発刊することになったのがおよそ半年前。この『吉岡実を読め!』には色々な方からご感想をいただき、感謝に堪えません。
著者の小笠原鳥類さんは、アーティストの崎山蒼志さんの歌詞に影響を与えたり、詩のTシャツが発売されたり、アイドルの朗読する詩を執筆されたりとマルチに活躍される詩人です。
そんな鳥類さんの前作『吉岡実を読め!』へのご声援を受けて、『吉岡実を読め!』の原点となる、小笠原鳥類さんのこれまでの様々な詩評の軌跡をまとめた一冊を世に出したいと考えました。この本が出版されることで、この世界に詩が好きな人が増えることが間違いないからです。
しかしライトバース出版はまだとても小さい出版社である上に、売上の一部を寄付させていただくというコンセプトなので、運営がギリギリです。
本は厚いほど紙代と印刷費が掛かるわけですので(『吉岡実を読め!』は458ページ、『現代詩が好きだ』も452ページになりました)、このように厚い本を立て続けに刊行することは、わたしたちにはとても難しいのです。
でも、それでも、この『現代詩が好きだ』は世に出すべき、本当に素晴らしい評論集だと私たちは確信しており、このような形で、皆様にご助力をお願いしたく、クラウドファンディングを立ち上げた次第です。「わたしも詩が好きだ!」という方は、どうかご支援賜りますよう、心からお願いいたします。
こちらの小笠原鳥類 第二評論集『現代詩が好きだ』では、「1999〜2009」「2010〜2019」「2020〜2024」の3つの時代に章立てし、時代の流れに沿って、既出の評論に必要ならば「現在の鳥類さん」の手を加えて掲載しています。
前作同様、吉岡実に触れているところもありますし、鳥類さんを投稿欄から選出した入沢康夫さんや、鳥類さんの現代詩文庫にお言葉を寄せられた岡井隆さんに関わる文章も多々あります。そして鳥類さんが見いだした方や、同じ時代を駆け抜けた方への評も掲載されています。
そして、本書の一番の特徴は「詩のかたちの評論」が散見されることです。優れた詩に対して連詩のように呼応し、それでも「評論」の有るべき姿、作品をより深く楽しむための〈気付き〉がそこに湛えられています。そして同時に、深いところに、鳥類さんの、せつない祈りとさよならが込められています。もしかしたら、この本は評論集であると同時に、全体を通して眺めたとき、鳥類さんによる抒情詩の新作詩集とも読めるかも知れません。
以下は、著者小笠原鳥類さんから本クラウドファンディング宛てにいただいたコメントです。胸が熱いです。
『現代詩が好きだ』著者 小笠原鳥類さんコメント
「このページをご覧いただき、ありがとうございます。現代詩の小笠原鳥類です。私は1990年代から現在(2024年)まで、雑誌「現代詩手帖」「ユリイカ」などに詩と、詩についての文章を書いてきました。詩集『素晴らしい海岸生物の観察』『テレビ』『現代詩文庫 小笠原鳥類詩集』『鳥類学フィールド・ノート』、詩論集『吉岡実を読め!』などがあります。
現代詩は、冷遇されています。いい詩が、たくさん書かれているのに、「現代詩はダメだ」「終わった」のようなことが言われてしまいます。そのように言う人が悪いのではなくて、いい詩が、どのように、いいものなのか、言うことができなかった詩人たち、詩論を書く人たちが、よくなかったと思っています。
現代詩とは何か。たくさんある、まっとうな説明の文章では、書くことができないことがあります。壊れているような、変であるような、ふしぎな言葉で、書くことができることがあります(でも、雑な破壊でもなくて、しっかり書かれているのが、よい詩だと思います)。そのような〈別の言葉〉は、「難しい」と言われることもあります。でも、書かなければならないときもある。それは、知である、とも言えますけれども、好きなことがあって、好きだー!という叫びが、どうしても、そのようになってしまう。
好きだ、たのしい、おもしろい、この言葉があって生きられる、という言葉が、現代詩です(現代詩についての、ありがちな、つまらない定義が、愛を失っているときがあります。それがよくない)。「読者が少ないからダメだ」という、愛がない、かなしいことを言わないでください。「難解だ」と思われるとしたら、愛の種類が違っているので、違いに困惑されているのです。
いろいろな愛情のありかたがあります。多くの人は、現代詩を好まないかもしれない。どうしても好きになれない人がいても、別の何かが好きであるなら、それでいい。でも、現代詩が好きである人が、多くないとしても(これから多くなるかもしれないですが)いるのであって、私も、そうです。
好きなものが好きで書いているのですが、でも、「現代詩はダメだ」と、いろいろなところで言われて、私は、苦しいと思うことがあります。現代詩を批判してはいけない、とも言えないです。やっぱり、ふしぎな言葉は、あやしいものであり、おもしろいですが、怖いものでもあります。
怖いな、いやだな、と思われるとしたら、それは間違っていないかもしれない。人を傷つける愛もありえて、それは批判されるべき。そうであるからこそ、正確に現代詩を読んで語らなければならない。(完全に、ではなくても)否定されるのであったとしても、正体がはっきりしているものを否定するべきで、なんだかわからなくて不安だから否定だ、は、よくないです。現代詩を肯定するためにも、もしくは否定するためにも、正確に読まなければならない。いいかげんなことが多く言われるのはよくない。
そこで私は『吉岡実を読め!』(ライトバース出版、2024)を書きました。『吉岡実全詩集』(筑摩書房、1996)の詩を、ぜんぶ読んで、1つ1つの詩について、ここは、いい、ここは、どうだろう、ということを書いていきました。458ページの無謀な出版でしたし、1冊も売れないことも予想しましたけれども、予想よりは売れました(第2刷ができました)。ありがとうございました。
しかし、本を作ると、お金がかかるのが、現実です。次に作ろうとしている評論集『現代詩が好きだ』(ライトバース出版)も、予定では400ページを超えてしまっています。この本で、1999年から2024年までの、私がいろいろな雑誌や本に書いてきた、現代詩についての文章(詩であるものも、あるかもしれません)をまとめて、現在の現代詩を一望できるようにしたいと思っています。いい詩がたくさんあるので、ページの数が多くなっています。
内容を少し紹介すると、吉岡実、北村太郎、犬塚堯、岡井隆、入沢康夫、谷川俊太郎、嶋岡晨、支倉隆子、野村喜和夫、広瀬大志、佐藤勇介、鳥居万由実、榎本櫻湖、芦川和樹…詩人たちの詩だけではなくて、それから、短歌や俳句や小説などについても、幅広く書いています。現代詩は、他のものから孤立しているのでもないです。あるいは、現代詩は、予想よりも、もっと、いろいろなものであるようです。
現代詩を、しっかり読んで書いている本が、これまで、なかったのでもないのですが、しかし、ややもすれば「現代詩はダメだ」の大きな声(決して、悪い人たちではないのです。むしろ、まっとうに幸せに生きることができている人たちであるかもしれない)に、押しつぶされそうです。もっと、現代詩はいいぞ、現代詩が好きなんだ、と言わなければならない。そうしないと、多くない人の愛情のありようは否定されて、この国、この世界が、もっと生きることが困難になってしまいます。
たくさんの人に読まれていない現代詩の言葉が、しかし、これまで言われていなかった、発見のあることを言う言葉であるので、人間の生存を可能にしていくことも、あると思っています。生きていて、つらくなってきたら、別の言葉が必要になるかもしれない。そうでもないかもしれませんが、それでも、必要ではない言葉の、たのしさ、おもしろさもありえます。まず、好きなものについて正確に語って、この愛でいいのか、よくないところもあるとしても、でも、いいところがあるのだ、と確認したい。
このように生きている、このようにしか生きられないかもしれない、私だけではない人間たちの記録の本にしたいのです。クラウドファンディングへのご協力、よろしくおねがいいたします。」
期間は今年いっぱい12/31の夜までです。
皆様のご支援、心より、お待ち申し上げております!
ライトバース出版
黒崎晴臣(ハル)
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