僕の好きな詩について。第48回 岡崎体育
こんにちは。僕の好きな詩について好き放題言うnote第48回は、岡崎体育さんです。
え?岡崎氏、詩を書くの?と思われましたか。そうです。書きません。ただ、曲によっては歌詞があまりに現代詩なので、今回この企画の俎上に乗りました。まずは、詩をどうぞ。それから、詩の後にyoutubeのURLも貼っておきますので、良かったら曲も聴いてみてくださいませ。
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花に香りはある 詳しくはないけど
私に愛はある あればいいなと思う
眼は代を削ぎ取るキャメラ
喉は静かなサイレン
部屋の明かりを消して
夜は龍になって 星の隙き間を泳いで
誰も知らない姿をうねらせて
山を掴んで 海を食べて
ここは私だけの場所 私だけの私
うろこは剥がれ落ち ぼろぼろになっても
痛みに名前はない 時に癒されていくだけ
寂しい心を持つと 偏った成長を遂げてしまうもの
あなたには愛がある
夜は龍になって 星の隙き間を泳いで
誰も知らない 唄をつくろう
樹々をなぞって 朝を捜して
ここは私だけの場所 私だけの私
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優しいうたですね。。沁みます。
この詩(詞)で、僕の特に好きなところは二ヶ所ありまして、まず出だしの「花」と「わたしの愛」の対比ですね。見えないけれど、確かに香る花の美しい匂いのように、私たちは愛を宿し、発している(いてほしい)ことを非常に綺麗に言い表しています。良い喩加減です。
次に好きなところは「寂しい心を持つと、偏った成長を遂げてしまうもの」です。なかなかこうはすっきり言えない真実だなぁ、と思います。
恐らくこのうたは、岡崎体育さん自身が作曲という想像力/創造力の世界によって寂しさから救われたことを基に、今孤独を感じている方(特に若いアーティスト)へのエールなのでしょう。わたしたちひとりひとりだけの、誰にも侵されることの無い創造/想像の世界の中で香り、飛翔し、傷ついても時間に癒されながら行けよ、という。
沁みます。
続いて
ちょっと長いかもですが、こちら。
銀河を泳ぐヘラブナ 命を削り登る音
山道 緑青 スニーカー 木々の呼吸 眠る石
風邪が治ったら休みに コーヒー買って川沿いで
地球の丸みを感じるくらいに寝そべりたい
然して変わらず苦やかな顔 価値や見込みを下げること
鼻声 女々しい考え 汗かき 胸のほくろ
もういっそ 永久に伝わらなくてもいい
思い出がうるさく叫んでる
並んで背を比べるように 爪を短く切れるように
皮膚と皮膚が擦れるように
大人にならなくちゃ
些細なことを許すように 平気な顔ができるように
忌まわしい夢で起きぬように
大人にならなくちゃ
メチ臭いドブ川の澱み 虹色油が光る
今月末までずっと手元不如意 赤っ恥
このままじゃ何も贈れない 嘔吐くような深い悲しみ
八月の朝のことや 今までの不甲斐なさを
先へ行く冒険者の本当の姿は
それすらも解らない 解らない
相槌を上手く打つように 不満を外に出さぬように
約束は破らないように
大人にならなくちゃ
涙を瞼に隠すように 時間が解決するように
いつか相生いて死ぬように
大人にならなくちゃ
例外のない摂理さ ごく一般的なこと
バッドエンドは筋が違うと主人公ぶってた
でもなんとなく 頭のどこかで また
「どこかで また」
銀河を泳ぐヘラブナになって
二匹の泳ぐヘラブナになって
「お金が無くてフラれちゃう」と言う詩(詞)なのですが、抽象度が高いので立派に現代詩してます。
「山道 緑青 スニーカー 木々の呼吸 眠る石」なんて、西脇を感じてしまいます。詩は関係ないですけど、ギターも良きです。あとなんかこのPVだけ岡崎氏がやたらイケメンです。
最後はこちら。
相槌もでたらめ 鈍色の朝 わがままに
迷惑かけたいわけじゃないのに
保育園で汚い言葉を覚えて帰ってくるように
色んな色の絵具を脳みそに塗っていくみたいだ
鉄棒の香り冷たく 美しい名前は遠く
薄暮れに木霊して 約束を破って
ひとり洟垂る僕を叱って
相槌もでたらめ 柿色の夕 わがままに
迷惑かけたいわけじゃないのに
年老う指輪は弛み 填めなおしてはまた弛み
瞳に黴が生えても 言葉に血の通った話がしたい
先に呆けてしまえば 寂しくないかな
飯を口から零して テイブルを汚して
にたついてる私を赦さないで
相槌もでたらめ 雪色の夜 どうして
迷惑かけても笑ってるの
この詩(詞)のポイントは「色と時」でしょうか。人生の節目節目に来る様々な式、こうすればああなる、という式、その折々を染める色。やがて老いて、この世を去る過程で誰かに迷惑を掛け、支えられ、そして支え合い、どうしても汚ならしくなってしまう生理(現象)さえ美しく染める自然のなか、生きることを諦めない力、そういったものの発露、表現を感じます。
吉原幸子が「朝焼けと夕焼けが似ている。そのことが人生と似ている」という主旨のことを言っていたのを読んだことがあります。赤ちゃんのときと老後の、スフィンクスの問いのような相似。
それをこのうたは美しい音楽に乗せて、素晴らしい言葉の組み合わせで掬い取っています。
岡崎氏は面白おかしいうたも多いのですが、素敵に泣ける楽曲も多いので、是非聴いて、出来たら歌詞を詩として読んでみてください。「スペツナズ」とか「鴨川等間隔」が僕は好きです。
それでは、今日はこのへんで!またお会いしましょう。お元気で!
いつか詩集を出したいと思っています。その資金に充てさせていただきますので、よろしければサポートをお願いいたします。