僕の好きな詩について 第三十三回 最果タヒ
こんにちは!僕の好きな詩を紹介するノート、矢継ぎ早の第三十三回は、今をときめく女性詩人「最果タヒ」さんです。
少し前に最新刊「天国と、とてつもない暇」を上梓されていました。
今回ご紹介するのは少し前の詩です。では。
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「光の匂い」最果タヒ
夜のあいだは、この都心の大気圏を、巨大なナイフが、羊羹みたいに切り離している。すきまに、宇宙からこぼれてきた透明の光が挟み込まれてまた明日、私たちは距離を見誤る。ゆがめられていくことに誰も気づかないで、愛しているを信じている。
朝は、光の匂いがする。せいいっぱいためこまれたものが、蒸発をして世界の壁すべてにへばりついている。生きていることがあいまいでもかまわないじゃないか、勝手に美しくいてくれる、草や雲があるというのに、どうして生きることを奇跡と呼ぶの。
縄跳びをしている子が、突然飛んだまま消えてしまう気がして見つめていた。きみがいなくなってもいいよ。たぶん、重ねてきた時間が光に飲まれただけだから、慣れることは平気だよ。お花見、あじさい、すずらんの群れ、もう永遠にこんな景色は、見られないと言いたげに、毎年カメラをもつ人が、宇宙でいちばんうつくしい春。
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僕はこの詩を最初最果さんの詩集の中で見付けて、お、良いな、と思って携帯のメモ帳に書き写しておいたんですけど、詩のタイトルで検索してみたところ、CHANELとコラボしたアートの企画のために書き下ろされたもののようでした。
ビジュアルも合わせて楽しんでいただくと、より良さが伝わるので良かったら下記URLよりそちらも見てみてください。
https://thefifthsense.i-d.co/jp/kiji/saihate-tahi-the-fifth-sense/?utm_source=antenna
最果さんが昨年末に「最果てラジオ」という、お話ししたり詩を朗読したりする特番をやっていて、その中で「ブランキー・ジェット・シティの詩に憧れて文章を書き始めた」ということを仰っており、ベンジーはやはり凄い、という事に僕の中でなりました。
あと「最果タヒ」と言う名前が僕には凄く「死」を連想させるのですが、本人は「(タヒるというスラングが生まれる前に)何となく名前を決めた」と言う趣旨の事を言っていて、それって逆に凄い、と思っています。
#詩 #現代詩 #最果タヒ #光の匂い #感想文
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