歌
光の雨が降っている。
見事なまでにばらばらな歩みが、速くなったり遅くなったりしながら、地面の上で軽やかな音楽を奏でていた。
黄昏の終わり。
アインベルたちは夜明け前の海を戻りながら、この世の魔獣が最期に吐いた吐息の色を知った。昇りかけた陽が照らそうとする樹海の中で、世界樹の彼が守りたかったものの記憶を、嘆きを、そのたそがれを、自分たちの心臓に突き刺さった紅水晶から見出した。
それから続く街道では、背を太陽に見守られながら、陽光の中を降る雨に人々の涙を想った。辿り着いた塩の街で鳴っていたのは朝を告げる鐘ではなく、この間となんの変わりもなく鳴る、昼を告げる鐘の音だった。
けれども、振り返る少年の目にはもう、〝渦潮〟ではなく、いつも仲間たちの顔が映っている。
各々の馬の手綱を握り、次の町へと向かう七人組はしかし、馬には乗らず、徒歩でその道の上を歩んでいった。
それなりに辺境である塩の街〈ルオトゥルオ〉でも、世界樹〈カメーロパルダリス〉が聖なる樹でもなく、ただの植物でもなく、元は一人の人間であった魔獣であり、王國はその力を以って二人の人間を世界樹の元へと遣わし、一夜の間に彼の討伐を為し得たという話は、最早話と呼ぶべきか、物語、伝説と呼ぶべきか、膨大な色と質量を伴う言葉によって無数の人間に語られていた。
人々が今まで共に在り、そして祈りを捧げてきた世界樹が魔獣だった。そしておそらく、その世界樹の彼こそが、この國に起こる黄昏の元凶だったのだと、人々は語る。
誰そ彼。尾ひれに尾ひれに尾ひれがつきまくっているおかげか、話を聞く人間によって語ることが大分違うものだったが、けれどもどうやら、世界樹を斬ったのが風の剣を操る剣士で、それを補佐したのが月の光を借る錬金術師であるということは不動の真実のようだった。
そして、その二人というのが片や、次期の王國を担うとはいえ、その性質上御披露目もされていない姫殿下であり、片や宮廷錬金術師の、その存在を仄めかされたこともない弟子だというのだから、吟遊詩人にとってはこんなに歌いやすいものはない。
今、光の雨が降る世界には、人々の涙と歌が溢れていた。
葦毛のゼロの手綱を引きながら、レースラインは鳥の群れが飛び立っていく、昼下がりの青空を見上げた。雨は陽に照らされながらやさしく降り注ぎ、彼女の頬をぽつぽつと叩く。
——鳥は、その身のどこに地図を持っているのだろうか。迷わず飛んでいくための地図を、その身のどこに。
ああ、きっと、遙か昔の鳥たちが、その身を以って地図を引いてきたのだろう。今を生きるために、そして、未来の子どもたちに道を示すために。
人も同じだ。
そこにはおそらく、間違った道も在っただろう。けれど、先人たちの歩んだ道が、何もかもすべて間違いだったなんてことは、きっとない。だから、自分たちは選ぶのだろう、何処を歩むのかを。そしてだから、怖いのだろう。道は一つではないから。真実もまた、一つではないから。そう、それは、道の数だけ在る。
けれど、人はこれからまた、道を引いていかねばならないのだろう。怖くても、今を生きていくために。
鳥が迷わず飛ぶのは、もう選んだからなのかもしれない。迷い迷っても、最後には大地を蹴ることを選び、そうして飛び立ったからなのかもしれない。一歩目を踏み出すのにひどく勇気が必要なのは、二歩目からを迷わず往くためなのか。
「なんだか、時をかけた気分だぜ。俺、じいさんになってたりしないよな? ちゃんといつも通りの顔だよな?」
ふと、リトが自分の顔を指差して、大真面目に言った。ハルが呆れ顔でそんな彼の方を見やり、溜め息を吐きながら首を左右に振る。
「ぎりぎり二十歳に見えなくもないくらいの面をしてるわよ、相変わらず」
「んだと、ほっとけ!」
それをきっかけにぎゃあぎゃあと騒ぎ立てながら、リトとハルが頬をつねり合いはじめたのを後ろから眺めて、レースラインは微かに息を洩らして笑った。
「黄昏の終わり、か……こうなると、流石に休暇を返上しなければね」
「なんだ、ちょっと嬉しそうだな。せっかくの休みが終わるっていうのに」
「まあね。会いたい人がいるから」
「なるほど。それは大いに結構。末永くお幸せに」
顔だけ振り返ったクイは、レースラインに向けて彼女が言ったいつかの台詞をそのまま返すと、黒っぽい茶の瞳を細めて笑う。レースラインはわざとらしく発せられた彼の言葉と仕草に肩をすくめると、しかしそれでも小さく笑んだ。その気配に、ハルが後ろを振り返る。
「……変わるものだな、世界は。進むべき道は自分の手で拓けると、殿下は証明してくださった。これで私も、まだまだ進んでいくことができそうだよ」
「うわお、真面目。ちょっとくらい休憩すればいいじゃない。そうね、この雨が降ってる間くらいは。どれだけ泣いたってきっと、みんな許してくれるわよ」
「ふ——休むのは、どうも性に合わないらしくてね。この雨には代わりに泣いてもらうさ。なんせ、騎士は泣かない」
そう微笑んだレースラインに、ハルはやれやれと苦笑する。陽光の下、風が東に向かって流れていった。それにつられて、先頭を歩くアインベルが、日の昇る方角へとその視線を向ける。振り返りざま、鈴の音が鳴った。
「これから、海はどうなるんだろう」
「夜明け前、潮騒が聴こえたな。きみにも聴こえただろう、アインベル?」
「うん。僕はあれが、気のせいだったとは到底思えない。きっと、〝のべつの竜〟が聴かせてくれたんだって、そう思うんだ。海は死んでない、生きてるって、そう彼が」
アインベルは言いながら、空中に指先で円を描いた。光を囲うその指先が、陽に照らされて、微かに赤く色付いている。イリスと並んで最後尾を歩くレースラインは、その銀色の手でゼロの手綱を握りながら、勿忘草を想い出させる水色の瞳を微かに細めた。
「ま、とにかく渦潮は沈めてやったんだ。これで東の海の調査も多少は前進していくことだろう。——だが、ああいった〝兵器〟がこの世の何処に潜んでいるか分からない。東の海にも未だ存在する可能性は十分にあるし、他の方角の海や、この世界のそこここにそういった兵器は在ると考えていいだろう。つまり——私にとっては、これがはじまりなんだ」
やっとね、とそう微笑んだレースラインに、ふとジンがあくどい笑みを浮かべて彼女の方を振り返る。
「んで、騎士さま? あんた、王都に戻ったら、これ報告したりするんだろ?」
「うん? まあ、そりゃあね。休暇中の勝手な行動だから、厳罰くらいは覚悟しているけど……」
そこまで言うと、レースラインは何かに勘付いたようにジンの方を見る。それから小さく笑い声を立てると、ふっと息を吐き、その肩を少しすくめた。
「なるほど、そうか。誰も綺麗事だけでは生きていけないものね、ハンター殿」
「そういうこった」
「……何度も言うようだけど、今回の件は上層部になんの許可も取っていないんだ。たまたまだとか、偶然だとかで突き通そうにも、〝世回り〟の騎士であり、〝白の民〟でもない私には、海へ赴く理由がなさすぎる。だからね、これは、人の上に立つ騎士の小隊長としては褒められたことではない、決して」
そう言うと、レースラインは再び空を見上げた。鳥はもう見えない。彼らは彼らの道の上を往ったのだろう。雨が柔く、その頬を叩いた。彼女は視線を下げると、一番前をぼろぼろの背中で歩いていく、アインベルの姿を見やる。
「ただの私が、彼の力になりたかっただけだ、騎士である前に。彼にはきっと、自分でも気が付かない間に、いろいろと見付けてもらったみたいだから」
「失せ物を?」
「そう。きみもかな」
彼女がそう問うと、ジンはちらりと一瞬アインベルの方を見、その腰で揺れる鈴の音を聴いたようだった。それからすぐにレースラインの方を振り返ると、彼は自身の黒い長髪が結わえられているうなじの辺りを軽く触る。照れているのかもしれなかった。
「……俺の家は代々ジャンベ職人を生んでてな、それを生業にしてる。俺はその家の長男で、このジンって名前も、そのジャンベから取って付けられた」
言って、ジンは目を細めた。弧を描いた黒い瞳には、郷愁が微かに滲んで見える。光の雨を弾いては震える睫毛の隙間から、彼がいつか聴いた、少年の鈴の音が聴こえるようだった。
「ま、安上がりな名前だ。それでも、まぁまぁ……いーい名前、だろ」
誤魔化すように笑いながらそう言ったジンの脇腹を、隣を歩いているクイが小突いた。付き合いが短いレースラインにも彼の感情に気付けるのだ、幼馴染みであるクイに、ジンが照れていることを見抜けないわけがない。
ジンの言葉に頷いたレースラインは、そんな二人をどこか面白そうに眺めた後、少しだけ笑い、そうして小さくかぶりを振った。
「……経緯はどうであれ、それでも東の海の渦潮を止めたのは事実だ。私に罰則が課されど、きみたちにその謂われはないはず。その辺りは戻り次第、上に掛け合ってみるよ。きみたちの功績に、何かしらの報酬が出るように」
黄昏の元凶だった魔獣である世界樹の彼が去って、喜んでいいのかは微妙なところだろうが、國の人間たちはひとまず安心しているように見えた。それはきっと、王の御膝元に在る者たちも、多かれ少なかれそうだろう。なのだから、少しくらいは羽振りが良くなってもよさそうだ。レースラインは心の中でそんなことを思いながら、片手の人差し指を軽く上げた。
「聞いて驚くといい。私、レースライン・ゼーローゼは、王室騎士隊〝鷹の羽〟——その長、レオンハルト=シバルリード・トゥールムの一番弟子だ」
「おお!」
そんな歓声が、いつの間にか全員レースラインの方を振り返っていたポロロッカたちの口から力強く溢れ出た。彼らの反応を見たレースラインは、その肩をどこかわざとらしくすくめる。
「つまり……」
「つまり?」
「——つまり、私がすごいわけじゃあない。あまり期待をしないことだね」
「お、おお……」
溜め息交じりの返事。先の歓声と同じく、息の合ったポロロッカたちの反応に、レースラインは勿忘草色の瞳を少しばかり意地悪く細めた。そんなレースラインを見た彼らは、互いに顔を見合わせると、参ったと言うように笑い声を立てる。
そんな中、ふと、陽光を受けた雨が一瞬、虹の色に瞬く。
風が柔らかく吹き抜けた。
時折後ろを振り返り、ポロロッカとレースラインのやり取りを聞きながらその顔を綻ばせていたアインベルが、何かの気配を感じてその足を止める。そうして半身で振り返った少年の目に映ったのは、何処か遠くを眺めていたイリスの赤い目が、ちょうど、自身の抱いている虹色の方へと落とされたところだった。
「——……」
虹の色が瞬間ではなく、確かに揺らめく。イリスは自身の首巻にくるんでいるものに対して、何事かを呼びかけようとして、しかし思い留まったようだった。
彼女は小さくかぶりを振ると、自分の方へと少しだけ戸惑ったような、或いは、なんと言葉にすればいいのか分からないといったような視線を投げかけているアインベルとポロロッカたちへと視線を向けて、優しく微笑む。
「なんでもないわ。生きてるなって、そう思っただけ」
言った彼女が抱いているのは、この夜明けに生まれたばかりの幼獣だった。
この世界のかわたれに沈んだ誰そ彼の、その一人であった世界樹の彼が、紅水晶となり、砕け、無数に飛び散った水晶の欠片が、この世に息づくすべての命——その心の臓に突き刺さった夜明け前。光が地平に顔を出す、ほんの数呼吸前。この世界に、この〝たそがれの國〟に、他のすべてと共に生きてきた魔獣たちは、しかし彼らだけで歌を歌った。
それは、仲間を呼ぶ狼の遠吠えにも似ていたかもしれない。人が心から歌い上げてきた、聖歌の響きにも似ていたかもしれない。朝を告げるために鳴り響く、鐘の余韻にも似ていたかもしれない。
怒りではない。悲しみでもない。喜びでもなければ、嘆きでもない。それはただ、歌だった。その鼓動のままに上ってくる、心だけの歌だった。
「……泣けないなら……泣けない、から——」
歌うのだ。黄昏の獣である彼らに、血と、そして涙はない。感情のままに涙を流すことができるのは、人ばかりだ。それでも、だから感情がないと、心がないと、そう誰が決めたのだろう。
だから、歌う。
だから、歌った。
歌うしかなかった。
きっと、歌うしかなかったのだろう、彼らは。
それはもちろん、イリスが魔獣貸しのベラから借り、〝道〟という意味をもつ〝ヴィア〟の名前で呼んでは共に旅をした、アニマと呼ばれる馬の魔獣も例外ではなかった。
ヴィアはその喉から風の吹くような——そう、朝に吹く、少しばかり陽を受けて、それでも少し冷たいくらいの風が吹くような声で、東の海、世界樹の在った方角へと向かって歌を歌っていた。
駆けるイリスが遠目に捉えたヴィアは、まだ力強く大地を踏み締めているように見えたが、しかし人の足というのはそこまで速くは動かない。過ぎ去ってほしくない時間には、いつも容易く置いて行かれるものだ。彼女が近付いていくにつれてヴィアの躰はくずおれてゆき、その蹄から順に淡く輝く光へと変わっていった。
紅水晶は流れず、黄金の砂は巻き上がらない。光だ。光、光、光。光がヴィアを、この世界の魔獣を何処か遠くへと連れていく。イリスは反射的にそう悟り、もう届かないと分かっていても、その光を掴むために強く自身の手を伸ばした。
それでも、その手は何も掴むことはなく、ただ宙を掻く。
その反動で両膝を海に突いたイリスは、眉を苦しげに歪め、震える睫毛を抱えたまま、消え往くヴィアの方を見やった。瞬きをする間もなく、ヴィアの躰が光となって地から浮かび上がっていく。イリスは俯き、その指先できつく塩を掻いた。
しかしふと、風の吹く声がする。
ヴィアの声。けれどもただの鳴き声ではない。先ほどまでの響かせていた歌とも違うようだった。
それは、呼びかけ。
きっと、イリスに対する、ヴィアからの呼びかけだった。
イリスが海に爪痕を立てようとするその指先を、淡い光が触れ、そうしてそれは風が吹くような、馬が奔るような速さで彼女の首元まで上ってきた。虹色の首巻にそっと触れるかのように光はイリスの周りをぐるりと回り、それから頬を微かに撫でたようだった。
それがまるでヴィアの鼻先に触れられたようだったから、イリスは思わず顔を上げ、今にも消えかかろうとしているヴィアの真っ黒な瞳を見た。もう逸らすことはできない。もう、逸らさない。最後まで、最後まで。
紅水晶の痛みを知るイリスの赤い瞳が、ヴィアの黒曜石のような瞳を見つめ、炎を爆ぜさせた。そこから舞う虹の火の粉をヴィアも受け、黒曜石の目が微かに、それでも確かに、虹の色に煌めいた。
時間にしては、きっと短い付き合いだった。だが、こうして火を分け合った。色を、夢を、景色を、言葉を分け合ったのだ。ヴィアはずっと、イリスを夢まで連れていく道で在った。
「……ありがとう……ありが、とう……!」
零れ落ちた言葉に、ヴィアがその目を閉じる。もしかすると、笑ったのかもしれなかった。
「——おやすみ、ヴィア」
そのすべてが光になってしまった、ヴィアの首筋を撫でようとしたイリスの手のひらが、一瞬強くなった光の中で、何か温かいものに触れた。
思わずもう片方の手のひらを伸ばし、受け止めたそれを抱くように寄せると、イリスの瞳に映ったのは、なんの動物なのかも分からない、小さな幼獣だった。
夜明けと共にヴィアの光の中から生まれ出たこの幼獣を、イリスは自身の首巻で包み込み、その両腕で優しく抱いては、今、仲間たちと一緒に帰路を辿っている。
ポロロッカたちは、ヴィアの生まれ変わりだの、はたまたヴィアの本来の姿だのと口々に言い合っていたが、イリスはそのどれもが正しく、そのどれでもないような気がした。
まだ名もない幼獣を抱く両腕は、その幼くも強い熱をおくる命によって、ひどく温かかった。
「ねえさん、ヴィアは——」
イリスはこちらを見たまま立ち止まっているアインベルの方を見ると、少しだけ目を細める。アインベルにはそれが喜んでいるようにも、哀しんでいるようにも見えて、心臓を柔い力で握られたような気持ちになった。
「ヴィアじゃない」
イリスはかぶりを振ることもなく、ただ真っ直ぐにアインベルを見つめたまま、落ち着いた声ではっきりとそう言い切った。
「ヴィアじゃ、ないのよ」
風が吹く。幼獣の口元が微かに開いたようだった。そこから風の音は鳴らない。響いたのは、細い声。まるでそれは、イリスが吹く草笛のような鳴き声だった。
「だから、名前を考えなくちゃ。ベラと相談できたら、いいな……」
「……うん」
また風が吹いた。イリスの橙色の髪が柔らかく風に舞い上がり、太陽の光を受ける。その頬を濡らしたのは涙ではなく、雨だった。
「……イリス、なんで——あんたがほんとは泣き虫なんだってことくらい、みんな分かってるのに……」
イリスが発した声を聴き、イリスよりもずっと泣き出しそうな顔をしたハルが、自身の馬の手綱を音が鳴りそうなほどきつく握り締めて、虹の薄布に包まれた幼獣を見つめる紅の瞳を見やった。イリスは顔を上げ、ハルを見る。
「少し、寂しいだけ」
そして、彼女は笑った。ほんとうに優しい笑顔で。
「——なあ、帰ったらみんなで、歌を奏ろう」
ふと、一瞬だけ真っ直ぐな表情をしたリトが、すぐにその表情を和らげて、明るい口調でそう言った。唐突としか言い様がない彼の言葉に、そこにいた誰もの視線がリトに注がれる。彼はそれを難なく受け止めて、鼻歌でも歌うような調子で言葉を紡いだ。
「歴史に残るような名曲を創ろうぜ。もちろん作曲と演奏は俺らがやるとして、指揮と歌詞はイリスだろ。そうだ、ベル坊も奏ったらどうだ? その杖、楽器としても使えるんだろ? というか歌詞は、お前ら姉弟で書いたらいいんじゃないかな。そうだ、それがいい。お前ら二人の言葉を以ってすれば、世界を揺るがす大、大、大名曲が生まれるはずだ!」
片手を振り回しながら脇目も振らず言葉を発するリトは、瞬きもせずに止まっているイリスの紅を見やり、確かめるように彼女に問うた。
「歌えばいいのさ。そうだろ、イリス?」
その言葉に何かを受け取ったポロロッカたちは、自分たちの中に上ってきていたリトの唐突な発言に対する疑問や驚きを呑み込むと、その口から新たに言葉を生み出した。
「歌詞が良くたって、曲がだめだめじゃあ締まりがないわよね。やるからには全力よ、いいわね、言い出しっぺ?」
「もちろん。どうせだったら客を集めて奏ろうぜ。ギルの酒場を貸し切りにしてもらおう」
「おいおい、どこから出てくるんだよそんな金は」
「あ? だってさ、そこの騎士さまがなんとかしてくれる予定だろ」
「は?……いや、きみたちね……期待をするなと何度言えば」
「というかレン、あんたなんで他人事みたいな顔してるんだよ? あんただって来るんだぞ、演奏会。あんたにゃ、一番前の席で聴いてもらわねえとな」
「待て待て、私には仕事がだな」
「そんなのはなんとかしろ!」
「む、無茶苦茶な……」
「つうか歌を奏るんだろ? 誰が歌うんだよ。俺たちの中に歌が歌えるやつなんていねえっての」
「何を寝惚けたことを言ってるんだよ。歌だぞ、歌。そんなの決まってるだろ、歌は……」
リトが言いかけた言葉は、イリスが発した笑い声によって掻き消された。リトに集中していた視線が今度はイリスの方へ向く。幼獣を抱いている両腕の片方を目元まで上げたイリスの、その目尻に浮かんだ光は、果たして雨のものだっただろうか。笑いから生まれた涙だっただろうか、それとも。
「——〝トコソラ〟のハイク・ルドラ!」
イリスのその言葉に、ポロロッカたちの間で笑い声が起きた。イリスの表情にどこか安堵の色も浮かべているポロロッカたちを見やりながら、レースラインは少しだけ首を捻る。
「誰だ?」
その問いかけに、ポロロッカたちは誰もが違わず、にやりとあくどい笑みを浮かべた。レースラインは反射的に眉をひそめる。奥に見えるアインベルの表情もまた、呆れ顔に歪められていた。
「おおっと騎士さま、知りたいか。ハイク・ルドラは——そう! 絶世の美女だ!」
「いえいえ、じつは言うと、〝かわたれの時代〟に滅びた、亡国の王子の末裔なのよ」
「馬鹿を言うんじゃねえよ。ルドラっていや、世にも珍しい、歌を歌う鷲のことだろうが」
「まさかまさか。天使の歌声をもつ、聖歌隊の少年だろう」
間。
「……亡国の王子は流石に妄想が過ぎるだろ」
「絶世の美女に言われたくないわね、絶世の美女に」
「というかジン、鷲はどうかと思うぞ。人を前提に考えてくれ」
「っつっても聖歌隊の少年は有り得ないだろうが。がきの頃のルドラなんて想像もつかねえっつうの」
「よーし分かった、一回意見をまとめよう……」
レースラインを混乱させようとしてのことだろうが、自らが混乱の渦の中に飛び込んでいってしまっているポロロッカたちを尻目に、彼女は視線をイリスへと向けた。レースラインと目が合ったイリスは、その紅を細めてにっこりと微笑むと、
「声の人」
とだけ言い、レースラインの勿忘草色を見つめ返した。
彼らの物言いにレースラインは笑わないままその目を細めると、立ち止まって大盛り上がりを繰り広げているポロロッカたちの横を、ゼロの手綱を引きながら通り過ぎた。そうして、どこか申し訳なさそうな表情をこちらへ向けているアインベルの隣に着くと、彼女は表情を和らげて呆れたように肩をすくめる。
「とりあえず、きみたちに愛されてやまない人間ということは分かった」
言って、レースラインは白い髪を揺らしてすたすたと歩きはじめた。彼女が連れる葦毛のゼロ、その尾っぽもまた、レースラインの歩みに呼応するように揺れている。
気付いたアインベルも歩き出し、レースラインの靴音、ゼロの蹄、アインベルの鈴の音を聞いたポロロッカたちとイリスも慌ててその後を追った。しかしそれでも彼らの話題は尽きない。
「それでさあ、お客さんって一体誰を呼ぶのよ」
「レンとギルのおやじは確定として、後はまあ、俺らやルドラの……友だちの友だちくらいまでを呼べばいいんじゃないか? おおい、レン! あんたも友だち連れてこいよ! なんなら部下でもいいぜ!」
「……仕事の穴埋めはきみたちがやってくれるんだろうね?」
「いいぜ!」
「よかないわよ、ばか!」
ハルに勢いよく頭をはたかれながら、リトがいつものように怒るのではなく、笑った。
けれども、その声色が少し揺れていた。迷っている。怖いのだろうか。こんな日を、誰もが泣くこんな日を、笑顔と楽の音で染めんとする選択をするのが、彼は怖いのか。そんな彼の様子に、ハルは手を引っ込めると、その手のひらで今度は彼の背を軽く叩き、小さく笑った。
目の動きだけがハルの方へと向けられ、すぐに前へと戻される。彼は息だけで頷いたようだった。リトは前を向くアインベルの方へと視線を向けると、いつも通り、よく通る大きな声で笑った。
「な、アインベル! 楽しくて、いい考えだと思うだろ!」
その問いかけにアインベルが振り返り、リトの瞳をその褪せた緑で真っ直ぐに見た。アインベルは微かに笑み、その睫毛を少しばかり伏せる。雨に濡れた睫毛が、昼の陽光に照らされてきらきらと小さく煌めいていた。アインベルは睫毛を上げると、リトの方を見て頷く。
「うん、リト。僕はもっとそういう話をしたい。そうだよ、僕ら、もっと——」
アインベルは擦り傷だかけの自分の顔を上げると、同じように擦り傷だらけの仲間たちの顔を見渡す。そうして彼は力強い笑みをその顔に浮かべ、腰に差した鈴の杖を取り上げて、空に向かって高く掲げ鳴らした。
「もっと、そういう話をしよう。僕らの未来の話を、もっと!」
その言葉に、リトが笑顔で自身の片腕を空に掲げた。アインベルはリトの方へと歩み寄ると、彼の腕に自分の腕をぶつけて笑い声を上げる。高らかに、そして軽やかに、鈴の音が鳴った。
「じゃあさ、ベル坊」
「うん?」
「お前は、どんな大人になりたい?」
再びレースラインの隣について歩き出したアインベルの背に、リトがそう問いかける。アインベルは歩きながらリトの方を振り返り、そうして雨の降る空を見上げた。
青空に高く昇った陽は、もう昼が過ぎたことを、降る雨を輝かせながら力強くこちらへと告げている。明日はもうとっくの昔に今日となり、その今日もじきに暮れ、また明日が今日となっていく。
青く澄んだ空に見上げ、昨日の明日だった今日に立ち、アインベルはふと、朝を迎えるたびに記憶を失う自身の青い友人のことを想い出した。心臓に手を当て、その鼓動から約束を想う。彼の記憶は今日も昨日と違わず失われただろうか。黄昏が過ぎても、新たな時代の鐘が鳴っても、昨日と同じように。
ああ、でもきっと、何もかもがだいじょうぶだ。なあ、そうだろう? 自分にそう問いかける。そう、自分が自分で在り、彼が彼で在り続ける限り、自分たちはだいじょうぶなのだ。だって、ぼくらは友だちなのだから。なあ、そうだろう。彼へそう確かめる。けれど、それでも、夕暮れの光が沈んでいくような寂しさは拭えない。だから、
「一度会ったら、忘れられない召喚師に。そんな、失せ物探しの召喚師に」
そう、ささやかにねがう。
そんなアインベルの祈るようなねがいを聴いて、そこにいる誰もが自身の顔に笑みを浮かべた。その中でふっと洩らすように笑ったクイが、アインベルの方を穏やかなまなざしで見やりながら、困ったように肩をすくめている。
「それだったらきっと、もうほとんど叶ってるんじゃないか?」
「え?」
「少なくとも此処にいる連中は、お前のことを忘れられなかったやつらだよ。同時に、お前が忘れなかったやつらでもある。なあきっと、お前が忘れたくないって思ってるやつは、お前と同じようにお前のことを憶えていて——だから、お前の処に来るんだよ、アインベル」
クイは真っ直ぐに、アインベルの褪せた緑を見つめた。
「アインベル。アインベル・ゼィン・アウディオ。失せ物探しの召喚師」
そう名を呼んだクイに、アインベルは少しだけ泣き出しそうな顔で笑った。クイは照れたように頬を掻き、隣のジンに仕返しと言わんばかりの肘鉄を脇腹に食らっている。そんな三人の様子に、誰とはなしに笑い声がさざめいた。
そうしてしばらく同じ道を往った彼らの前に、ふと、二つの分かれ道が見えてきた。
右と左。左の方から、何やら小気味よい音が響いている。耳を澄ませてそれを聴けば、どうやら蹄の音らしいことが誰にも分かった。
ちょうど道が分かれるという手前で、皆と共に右を取ろうとしたレースラインがつと、その足を止める。それにつられて、アインベルたちもその歩みを止めた。レースラインは、目を凝らすためにその眉をひそめながら、左の道の先をじっと見やる。
茶の色が近付いてくる。あれはそう、栗毛の馬。そして、その上に跨がり、風になびく赤い色が、レースラインにはひどく見憶えのあるものだった。騎士の最軽装であるタバードの色。陽に光る銀色は、兜。その兜のてっぺんに揺れ動くのは、赤い尾羽。一体何本か。そんなものはもう見なくても分かった。何よりも、近付いてくる者の、その気配を自分は知りすぎている。レースラインは名を呼ぼうと唇を開いた。
「隊長! ゼーローゼ隊長——!」
しかしそれは、呼ぼうとした名をもつ本人の大声での呼びかけによって遮られる。久しぶりに聞いたその声量に圧倒されて、レースラインは名前を一度喉の奥に引っ込め、困ったように微笑んだ。
「——カイメン……」
見えてからは早かった。カイメンはレースラインの前で心得たようにぴったりと歩を止めた、主に似て生真面目な栗毛の上から飛び降りると、彼女に向かって騎士の敬礼をした。右腕を背に、左腕を心臓に当てる、世回り第十三番小隊特有のそれである。
ふと、カイメンの唇が何事かを発しようとして開きかけたが、しかしレースラインの言葉がそれを押し止めた。
「分かっている。戻るよ」
「ですが、隊長。休暇はまだ全く——」
「私が戻ると言ったら戻るんだ。こんなときに隊長不在の隊などがあってたまるか。言っておくが、土産話ならおまえら全員の腹がはち切れるほどあるぞ。この者たちのおかげでね」
少しだけ皮肉っぽい笑みを浮かべて、レースラインは手のひらで柔らかくアインベルたちを示した。それを見たカイメンが微かに首を傾げ、しかしすぐにその姿勢を真っ直ぐに正すと、先ほどレースラインにしたように騎士の敬礼をした。
「隊長のご友人とお見受け致します。私はスタラーニイ・カイメン。若輩者ながら、ゼーローゼ隊長率いる世回り第十三番小隊にて、副隊長を務めさせて頂いております」
「お、おお……これはご丁寧に……」
朗々とした声で歯切れよい挨拶を告げたカイメンに、ほとんど毒気を抜かれたような表情で、リトが戸惑いながらなんとなく情けない返事を彼に返した。こうまで騎士らしい騎士に面と向かって声をかけられたことのない面々は、多少の緊張を以って目の前の少年を見やっている。
「隊長。ただいま第十三番小隊は、この先の農村にて滞在をしています。世回りは現在、世界樹の討伐による混乱、また世界樹と黄昏の関係性についての誤情報の伝達——そういった物事の抑制やその拡大を防ぐために、各地を順にまわっているのですが——申し訳ありません、騎士長から拝聴した通りに人々へと話を伝えていることは伝えているのですが、なにぶん自分たちも混乱していて……」
「おやおや、私がいない間に随分と腑抜けたようだな。騎士の心の乱れが表に出れば、それを見た人々の心もまた乱れる。甘えたことを言うなよ。話を自分なりに呑み込む努力をしろ。していると言うのなら更にだ。剣でそれができるのだから、話でだってできるだろう」
背後でレースラインの言葉を聞いているポロロッカたちの顔が、苦虫を噛み潰したように歪んだ気配を感じて、彼女は微かに笑んだ。その笑みはあくどい。
「さて、では——久しぶりに叩き直してやるとするか。覚悟しておけよ、カイメン」
「あの……何故少し嬉しそうなのですか、隊長……?」
「嬉しいからな。それに、おまえたちに今後のことについて話しておきたいこともある」
「今後の?」
「ああ。だが、私が嬉しいのは——おまえたちに会いたいと、先ほどまで思っていたからだろうね」
カイメンの焦げ茶の瞳が、レースラインの勿忘草を見つめたまま、驚きに丸く見開かれた。そんなカイメンの表情を見たレースラインが、まるでからかうようにころころと笑う。そして微笑んだまま、彼女はカイメンの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「果てまでついて来るのだろう? いいか、これから私の往く道は、決して容易ではない。だがもう、あの言葉を翻させはしないぞ。だっておまえたちは、騎士なのだからな」
「は——はい……!」
「声が小さい!」
「——はい!」
「よろしい」
レースラインの言葉に、思わずまた騎士の敬礼をしていたカイメンは、ぱっと音が鳴りそうな笑みをその顔に浮かべた。そうして彼は自身の栗毛の背に乗っている荷物袋から、丁寧に布で包まれた大きな何かを取り出すと、それを広げる。
「約束を守って頂きありがとうございました。それでは、お返し致します」
「ああ。——ありがとう」
布に包まれていたのは、レースラインの兜だった。
三本の尾羽が頂に揺れる兜を、レースラインはカイメンの両手から、自身の血が巡る手と、銀に輝く手、その両方で受け取る。そうして彼女はそれを同じく両手を使って被り、騎士の出で立ちとなると、凜とした所作でアインベルたちの方を振り向いた。白の髪と赤のマントが舞い、彼女の目の中に燃える、青い松明の色を際立たせている。
「アインベル。未来の話をしようと、きみは言ったな。私たちの、未来の話を」
「う、うん」
ふと、そう問われて、アインベルは反射的に頷く。レースラインは音も立てずに、しかし確かにその息を吸った。
「——私は、これからも剣を取る」
自身の腰に差した軍刀の鞘を、レースラインはその義手で軽く触る。けれども視線はアインベルの瞳に向けたまま、彼女は続けた。
「だが……いつかは、誰も剣を振るわずに済む——そんな世界になるといいと、そう、私は夢見るよ」
「——レンさんの、夢?」
「そうさ。だから、そのために私はこの剣を取ろう。夢が叶う、そのときまで」
そう言い切ると、レースラインは深く息を吸い込み、一瞬何かを想うように微かに伏せた睫毛を上げ、そうしてアインベルたちの方を見て微笑んだ。彼女は血の巡る方の拳を心の臓の上に当て、同じように強く握った銀色は背に、空気も澄んでいくような騎士の敬礼をする。
「では、私は往くよ。きみたちとは此処でお別れだな」
カイメンと再会し、更に朗と響くようになったレースラインの声が、アインベルたちの心に別れの自覚を急速に芽生えさせた。
レースラインはそれすらも絵になる仕草で葦毛の上に跨がると、その馬首を左の道へと向ける。カイメンもそれに倣うように栗毛に乗ると、馬首を来た道の方へと向けた。
「——レンさん!」
今にも駆け去ってしまいそうなレースラインの背に、アインベルが鈴の杖を持ったまま、彼女の方へ向けてその手を突き出した。
「前に別れたとき、僕がレンさんに言った言葉を憶えてる?」
「……ああ、憶えているよ」
「じゃあ、それを言って!」
「アインベル。私はもう、できない約束はしない」
「なら尚更だ、約束しよう。それで、叶えて。ねえ、叶えよう!」
レースラインは両手でゼロの手綱を握ったまま、顔だけでアインベルの方を振り返った。根負けしたように肩をすくめた彼女は、しかし少しだけ笑むと、言葉を紡ぐべくその唇を開く。
「——また!」
アインベルとほとんど同時にそう言って、彼女はゼロの歩を前へと進めはじめた。
もう振り返らない彼女の背に向かって、拳を掲げ続けているアインベルの姿が見えているかのように、彼女は右腕を拳にして空へと掲げる。アインベルにもその表情は見えなかったが、しかしきっと、彼女は笑っているように思えた。
ややあって、レースラインは銀の拳をほどくと、そうして柔らかくその手を振った。光の雨を受けた銀色の義手が、光そのもののようにまばゆく輝いている。
それから間もない内に彼女とゼロ、そしてそれに続くようにカイメンが駆け出し、彼女たちは地平の彼方へと去っていった。そこでアインベルはやっと、掲げていた自身の右腕を下ろすと、仲間たちの方を振り返って、少しだけ寂しそうな顔で笑う。けれどもその爪先はすぐに、自身が進むべき道の方へと向けられた。
歩んでいく道は分かれた。
しかし、同じ雨に打たれている。
アインベルたちは右の道を選び取り、その上を歩んでいく。歩を進めながら、ふと、リトが思い出したように言葉を発した。
「なあ、歌を歌おう」
またしても唐突な物言いに、彼を除いたポロロッカの三人たちは呆れ顔になった。三人のそんな表情を見て、リトは大げさに悲しむような素振りをすると、救いを求めてアインベルの方を見る。
「歌おうぜ。だって凱旋には、歌が不可欠だろ! 俺たちにとっても、レンにとっても!」
アインベルは、リトの言葉に柔らかく微笑み、そして頷いた。
彼はゆっくりとその杖を振り、道の上に鈴の音を響かせていく。彼の心音が、歌を歌おうと微かに高鳴る。歩は進む。目はただ前を見ていた。息を吐く。息を吸う。そうして、呼吸をした。アインベルの唇が、微かに開かれる。
夜は明けた。
昼は過ぎ、日は暮れ、いずれまた夜が来る。そして夜はまた明け、朝になる。そうやって今日は昨日になり、明日は今日になるのだ。何度でも、何度でも、何度でも。何度でも、
——明日は来る。
そして、それを知っている彼らから溢れ出たのは、誰もが知り、誰もが歌い、誰もの隣に在った、なんの変哲もない——それでも確かに、誰かが歌い、伝え、また歌った歌だった。
黄昏がやってくる
すべてを呑み込む黄昏が
黄昏がやってくる
心を砕いた紅と
黄昏がやってくる
太陽と月 その二つに照らされて
明けぬ夜は此処になく
暮れぬ朝もまた来ない
黄昏がやってくる
すべてを抱かん黄昏が
意志 魂
歌すらその身で包み込み
黄昏はやってくる
愛しいすべてと共にくる
愛しいすべてと共に在る
愛しいすべてと共に在る……
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?