
あなたの疲れの原因は「糖質」かもしれない ― 知っておきたい最新の健康リスク
「疲れているのに、眠れない」「食べてすぐにお腹が空く」―こんな経験はありませんか?
実は、あなたの体は重要なサインを発しているかもしれません。
それが「糖質疲労」です。今や日本人の多くが知らないうちに陥っている、この新たな健康リスクについてお伝えします。
毎日の生活の中で「なんとなく調子が悪い」と感じることはありませんか。
集中力が続かない、イライラする、すぐにお腹が空く―。
これらの症状、もしかしたらあなたも「糖質疲労」かもしれません。
第1章:「糖質疲労」という新しい健康リスク
◆見過ごされてきた体からのSOS
健康診断で「血糖値が少し高め」と言われても、特に気にしていない人も多いのではないでしょうか。
しかし、実は健康診断で異常が出る約10年も前から、私たちの体は警告を発していたのです。
専門家によると、糖質疲労には次のような特徴があります。
食後に眠くなる、だるくなる
食べた量の割にすぐにお腹が空く
集中力が続かない
イライラしやすい
これらの症状が一つでもある場合、または食後の血糖値が140mg/dl以上になる場合、それは糖質疲労のサインかもしれません。
◆なぜ起こるのか?
糖質疲労の原因となる「血糖値スパイク」。
これは、食後に血糖値が急激に上昇し、その後急激に下降する現象です。
この上下の激しい変動が、様々な体調不良を引き起こすのです。
特に注目すべきは、この現象が単なる不快感だけでなく、将来的な健康リスクにも繋がる可能性があるという点です。
医学的には、高血糖は免疫システムにも影響を与えることが分かっています。
ノーベル賞受賞者の本庶佑先生が発見した免疫チェックポイントの機能にも、高血糖は悪影響を及ぼすことが報告されているのです。
第2章:意外と知らない「常識」の落とし穴
◆健康的の落とし穴
「和食は健康的」という考えは、日本人の多くが持っている「常識」ですが、実はこれにも注意が必要です。
和食には塩分が多く、脂質が少ないという特徴があります。
これが、高血圧や脳出血のリスクを高める可能性があるのです。
さらに、「果物は体に良い」という考えも要注意です。
果物に含まれる果糖は、体内で特殊な処理を必要とします。
カリフォルニア大学のラスティグ教授の研究によると、果糖は肝臓でのみ処理され、その80-90%は果糖のまま処理されます。
利用しきれない場合、中性脂肪となって血液中に放出されたり、脂肪肝の原因となったりする可能性があるのです。
◆スポーツドリンクの落とし穴
運動時の水分補給に何気なく飲むスポーツドリンク。
しかし、これも要注意です。医療の現場では「ペットボトル症候群」という言葉があり、スポーツドリンクの過剰摂取による健康被害が報告されています。
実は、通常の運動であれば、水だけで十分な水分補給が可能なのです。
◆脂質制限の落とし穴
「脂質を控えめに」という考えも、実は古い常識かもしれません。
2008年の研究では、カロリー制限と脂質制限を組み合わせた食事よりも、むしろ適度な糖質制限の方が体重減少に効果的だということが分かってきました。
さらに興味深いことに、脂質を控えすぎると、1日のカロリー消費量が300kcalも低下してしまうという研究結果も報告されています。
また、適度な脂質摂取は満腹感を持続させ、過食を防ぐ効果があることも分かってきました。
第3章:日本人特有の課題
◆欧米人との違いを知る
日本人を含む東アジア人には、欧米人とは異なる特徴があります。
それは、インスリンの分泌が少ない(遅い)という点です。
これは一見些細な違いのように思えますが、実は重要な意味を持っています。
欧米人の場合、血糖値の上昇に対して大量のインスリンを分泌することで、血管内のブドウ糖を脂肪細胞に取り込むことができます。
つまり、高血糖を防ぐ代わりに太りやすい体質となるのです。
一方、日本人は、インスリン分泌が少ないため、太りにくい反面、血糖値が上がりやすいという特徴があります。
これが、日本人に「糖質疲労」が多い理由の一つなのです。
◆沖縄クライシスから学ぶこと
かつて日本一の長寿県だった沖縄が、特に男性の平均寿命順位を低下させている現象を「沖縄クライシス」と呼びます。
一般的には「食の欧米化」が原因だと考えられていますが、実際のデータを見ると、興味深い事実が見えてきます。
実は、沖縄の脂質摂取比率は日本復帰当初から高く、平均寿命順位の低下とともに脂質摂取比率は低下し、逆に炭水化物摂取比率が上昇していたのです。
この事実は、単純に「脂質=悪」という考え方が適切でないことを示唆しています。
第4章:実践できる対策
◆カーボラストという新しい習慣
食事の順番を変えるだけで、血糖値の上昇を抑えることができるという研究結果があります。
それが「カーボラスト」です。
これは、糖質を最後に食べる食べ方で、特に「1口目を食べ始めてから20分後」に糖質を摂取することを推奨しています。
従来の「三角食べ」や最近話題の「ベジファースト」よりも、糖質疲労の解消には効果的だとされています。
◆ファストフードの賢い選び方
「ファストフードは避けるべき」という考えも、実は再考の余地があります。
例えば、ハンバーガーを食べる場合、以下のような工夫で糖質負荷を抑えることができます。
バンズの糖質量は約30g(おにぎり1個は約38g)
パテやチーズを増やすことで、たんぱく質と脂質を補う
ポテトの代わりにナゲットやサラダを選ぶ
ドリンクは無糖のものを選択
◆健康投資としての考え方
糖質制限食は、一般的な食事に比べて食費が上がる可能性があります。
しかし、これを「投資」として考えてみてはどうでしょうか。
現在、糖尿病患者の年間治療費は4~13万円(自己負担額3割として)にもなります。
さらに、合併症の治療が必要になると、その額は跳ね上がります。
例えば、目の治療だけでも1回15万円近くかかることもあります。
また、企業の視点からも、不健康な社員のパフォーマンス低下(プレゼンティーズム)による損失は、病気による欠勤(アブセンティーズム)よりも大きいとされています。
第5章:これからの健康管理
◆免疫力の新しい考え方
「免疫力をアップする」という表現をよく目にしますが、医学的に見ると、この考え方自体に疑問があります。
人間の免疫力は、成長の過程で既に完成されているもので、むしろ重要なのは、それが適切に機能することです。
過剰な免疫反応は自己免疫疾患やアレルギー性疾患の原因となり得ます。
理想的なのは、必要な免疫反応が適切なタイミングで働き、適切なタイミングで収まることです。
◆家族の健康も考える
特に子どもの場合、果糖の摂取には注意が必要です。
市販のジュース類には、オーガニックや無添加といったうたい文句があっても、果糖が多く含まれています。
子どもの健康は、親や周囲の大人の知識と、社会環境によって大きく左右されます。
妊婦さんの場合も特別な注意が必要です。
妊娠中は血糖値が上がりやすい体質になります。
これは赤ちゃんの発育のために必要な生理的な変化ですが、高血糖は赤ちゃんにも影響を与える可能性があります。
◆持続可能な生活習慣づくり
最後に重要なのは、極端な制限ではなく、続けられる習慣を作ることです。
例えば「ロカボ」という考え方があります。これは低糖質(ローカーボハイドレート)を意味する言葉で、以下の7つのルールを基本としています。
1日の糖質量は70~130g以内
お腹いっぱいになるまで食べる
カロリーは気にしない
たんぱく質、脂質、食物繊維をしっかりとる
糖質とたんぱく質、脂質のバランスも気にしない
糖質ぬきをめざしてストイックになるのはNG
早食いをせず、「カーボラスト」でとる
◆◆おわりに◆◆
健康管理は、正しい知識と適切な実践の組み合わせが重要です。
古い常識にとらわれず、自分の体質や生活スタイルに合った方法を見つけていくことが大切です。
明日からできる具体的な一歩として、以下の3つを提案します:
食事の順番を意識する(カーボラストを試してみる)
間食は糖質だけでなく、たんぱく質も含むものを選ぶ
水分補給は基本的に水を選ぶ
一つずつできることから始めて、自分に合った健康的な生活習慣を作っていきましょう。