インド・ヨーロッパ語族についてのわかりやすい説明の試み
こういった語族の中で最も代表的なものがインド・ヨーロッパ語族で、訳して印欧語族とも呼ばれており、この印欧語族は新石器時代に南ロシアや南ウクライナのステップ地帯に居住していた農耕牧畜民で後に多くの家畜や青銅器技術を持った人々の子孫であると思われ、後にゼウスやユピテルとなる天空神の信仰を持った。
彼らは遺伝子的に北ユーラシア人(金髪のコーカソイドとモンゴロイドの混血集団)と近東の集団の混血であり、言語学と関連する父系の遺伝子においては西南アジアやヨーロッパに広く分布するR系統の一つであるR1aとR1bという系統を多く持っていて、紀元前2000年頃にはヨーロッパ、中央アジア、シベリアに到達して行ったと思われる。
その後、西ヨーロッパに進出した集団はケルト語派とイタリック語派、北ヨーロッパに進出した集団はゲルマン語派、中央アジアに進出した集団は東に移動してトカラ語派、シベリアに進出した集団は南下して西アジアや南アジアに広がってインド・イラン語派、バルカン半島に移動した集団はアルバニア語派とヘレニック語派(ギリシア語)、カフカス南部に移動した集団はアルメニア語派、アナトリア半島に移動した集団はアナトリア語派、東欧や中欧の人々はバルト・スラブ語派を形成した。
その後、イタリック語派の中から現れたラテン語がローマ帝国と共に南ヨーロッパと西欧を征服、ケルト語派やその他のヨーロッパの先住民言語は追いやられていき、ケルト語は現在、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、ブルターニュにしかいなくなっている。
ギリシア語はラテン語に取り込まれることなく生き残りに成功、とはいえ全盛期のヘレニズム時代にはオリエント世界全土で話されたが現在では縮小しており、その一方で、ラテン語の子孫のスペイン語、ポルトガル語、フランス語は世界中に領域を広げ数億人の話者を誇る。
一方、ゲルマン語派は北欧からヨーロッパ中に広まり、イギリスやドイツなどでは現在でも話される他、イギリスが世界最大の帝国を築き上げ、そこから独立したアメリカが世界を支配したことでゲルマン系英語は世界の共通語に上り詰めている。
東欧に分布したバルト・スラブ語派の内、バルト諸語はリトアニア語とラトビア語が合わせて数百万程度残っている程度で多くがゲルマン語派とスラブ諸語の影響で消滅、一方、スラブ諸語は領域を爆発的に広げバルカン半島の大部分と中央ヨーロッパ東部を支配、さらにスラブ人のロシア帝国が北アジア全域を制圧したことでその人口は数億人を数える様になった。
そしてアジアに進出したインド・イラン語派は後に中央アジア周辺のイラン語群とインドに進出したインド語群に大きく分裂、イラン語群を話す民族達は中央アジアを支配した上、ペルシア族という民族は西アジアの統一まで成功させたが、現在では西方のアラビア語や東方のトルコ語族の進出で縮小しており、本来の文化もイスラム教の進出で消滅した。
その一方で、インド語群を話すインド・アーリア人は先住民のドラヴィダ語族の人々の文化を取り込んでヒンドゥー教やカースト制度など独自の文明圏を作り上げて繁栄、現在でも十数億の非常に巨大な人口を持ち、インド系移民は世界中に数多い。
また、アルメニア語派はトルコ語族やイラン語群、アルバニア語はギリシア語やラテン語、スラブ系言語の影響で近縁の言語が消滅してしまっており、アナトリア語派は前12世紀のヒッタイト帝国の消滅以来衰退して消滅、トカラ語派も長くトカラ盆地の都市国家に存続したが中世には消滅した。