「人工的作り笑い」が支える脳疾患と鬱病の無い未来(The Futurologist 2/6/19)
上司の退屈な冗談。
オチのない友人の長話。
あからさまなおべっか。
様々なシーンにおいて、人間誰しも作り笑いを一度は浮かべたことがあるはずだ。
この作り笑いは、概して意図的なものである。
我々は、「決して面白くも愉快でもないが、ここで笑っといたほうがことが円滑に進むだろう」と、笑顔を意図的に作るのだ。
しかし、作り笑いは決して後ろ向きな意味ばかり持つわけではない。
実際に、様々な研究結果が、意識的に笑顔を心がけることが脳に幸福感をもたらすと示している。
とはいえ、辛い時に無理して笑うことは決して容易なことではない。
かえってストレスにもなりかねない。
しかし、もし人工的に、脳に刺激を与えることで作り笑いを作り出せたらどうだろう。
「作られ笑い」とでも呼ぼうこの技術が、どうやら現実のものになりそうだ。
エモリー大学の脳外科チームは、大脳の内側面において、脳梁の辺縁を前後方向に走る脳回「帯状回」に電気刺激を与えることで、人工的に作り笑いを引き起こすことを発見したのである
そしてこの度エモリー大学の脳外科チームは、「作られ笑い」を用いた画期的な脳外科手術に成功した。
脳外科手術を決行すると言う事態は冗談でも笑い事とは言えないが、脳外科手術を行う際には、言語、感覚、感情機能に影響がないか確かめるために、患者の意識を保ったまま手術を決行する必要がある。
どんなに周到な準備をしても患者が手術中にパニックを起こす可能性があり、当然これには大きなリスクを伴う。
手術中にもし脳に刺激を与えることで作り笑いを人工的に引き起こし、幸福感を与えることが出来たなら、このリスクを回避することが可能になるのだ。
実際にこの作られ笑い技術を用いた外科手術を受けた患者は、手術中に笑顔を見せ、幸福感を覚えたと語っている。
手術中に、家族に関するジョークまで語ったと言うから驚きである。
この技術の応用は、脳外科手術に限らない。
うつ病患者や慢性疲労、慢性疼痛に悩む患者にこの技術を応用することで、治療を促進する効果も期待できる。
社交的に振る舞うことに苦労する人が、「自然に」笑えるようになる日が来るかもしれない。
もちろん、奴隷の脳に刺激を与え、服従に幸福を感じさせることだって。
筆者
空飛ぶ車や培養肉事業を前線で率いてました。今は独立して企業のオープンイノベーションや新規事業開発支援、データ解析のご依頼を承っております。頂いたお金は異端な科学者とのシチズンサイエンスプロジェクトに活用しています 。
The Futurologistは、数十年後を見据えるアントレプレナーや科学者に届けるマガジンです。未来を予測する学問「未来学(futurology)」、グローバル課題、未来技術に関する最新情報をサクッと提供します。だって世界は、貴方の未来設計にかかってるから。
参照論文
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