これを持って、今日もたたかう話
クラフト紙にシンプルなロゴマーク。
飲み口の穴の空いた、プラスチックのフタ。
冬には紙製のスリーブがつく。
「コーヒー」「カフェ」と聞けば、テイクアイト用の紙カップが思い浮かぶ人も多いのではないだろうか。
もはやコーヒーやカフェの代名詞的存在である。
ドラマに登場するデキる上司や仕事を頑張る女子、
ファッション紙のモデルが片手に持ってポーズをキメているのをよく見かける。
SNSでは写真の背景に映り込ませてある、なんてことも多い。
カフェの紙カップは、ファッション小道具でもあるのだ。
近年は環境配慮の観点からマイボトルが普及しつつあるが、この紙カップの形を模したボトルも多い。
こんなにも人々を惹きつけてやまないのはなぜなのだろう。
ところで、今や、純粋にコーヒーやスイーツを楽しむ、という以上の目的を持ってカフェに赴く人が多いのではないだろうか。
自分を奮い立たせたい。
仕事や勉強と向き合いたい。
お洒落な空間に身を置いて、気持ちを上げたい。
頑張った自分を労いたい。
カフェはそんな願いを叶え、心地よい空間を提供し、気分を上げてくれる。
美味しいコーヒーやドリンクはもちろん、カフェの空気感や、上がった気持ちを持ち歩ける形にしたのが、この紙カップというわけだ。
ドラマに登場するカップはあくまで小道具であって、中身は入っていないだろう。
ファッション紙の誌面から香りがするわけでもない。
なのに、その姿を見ただけで、カフェの素敵な空間を連想し、香り豊かなコーヒーを連想し、なぜか心が踊ってしまうのである。
カップ片手にオフィスに向かえば今日も頑張れそうな気がするし、デスクに置いてあればそれだけで気分が上がる。背筋が伸びる。自分を少しだけ好きになれる気がする。
カフェが好きなんじゃなくて、そこにいる自分、カップを手にしている自分が好きなんでしょ、なんて言われるかもしれない。
それでもいいじゃないか。
っていうかそれでも良くない?くらいの気持ちでいたい。
たたかう相手は、勉強、育児、家事、仕事、、、etc..と、人さまざま。
この春から新たな相手と対峙する人もいるかもしれない。
そんな時、
この紙カップは私たちの気分を上げ、士気を高め、時には心を癒してくれる。
私たちの剣であり、盾なのである。