ここなのファントム解釈を解釈する
最近、わらじ=ワールドダイスターRADIOきっかけでワールドダイスターにハマっています。
アニメ(アプリ内ストーリーでも)で『オペラ座の怪人』を扱っていてぽつぽつ考えたことがあったので残しておきます。
結論から言うと、一般的なファントムよりシリウス版のファントムが年若いから成立しているんじゃないかということを長々と書いているだけ、と8割方書き上がってから気づきました。
本筋ではない導入
読まなくてよい前書き
最初はyoutubeのおすすめに現れて、パーソナリティが石見舞菜香さん&長谷川育美さん=ライス&ブルボンじゃんというトレーナー脳で聞き始めたんですが、お二人の空気感にハマってアーカイブされている第1回から聞きはじめ、そしたらアニメで『オペラ座の怪人』を扱うというじゃありませんか。
それまでのストーリーも、アニメ全く見ないまま聞いていたので若干のネタバレを食らいながら興味を引かれていましたが、最終回の『オペラ座の怪人』までの流れを聞いて「見たい!」気持ちに火がつきました。
ちょうどそのタイミングでAbemaで無料配信(12/16まで1週間)されるということで見るしかねぇ!見る!見た!ということでした。
『オペラ座の怪人』と私
記憶にある限り、私が最初に観た有料の舞台・ミュージカルは劇団四季の『オペラ座の怪人』で、それ以来、少なくとも3回(ロンドン・ウエストエンドでの1回を含む)は劇場で観ているし、2004年公開の映画(ミュージカルをベースとしたもの)も5回くらい観ており、原作も履修済み(だいぶ忘れるくらいには前に)という程度の深さです。
"Think of Me"と"The Phantom of the Opera"はだいたい空で歌えます(下手)。
1度だけ、自分でパリを訪れた際にはオペラ座も訪問しました。観劇は叶いませんでしたが、ファントムの指定席=5番ボックス席の扉前までは行ってきました。
ファントムについて
ここなのファントムへの第一印象
他のファントム候補がファントム像として怒りや憎悪、狂気を中心とした役作りを進める中、ワールドダイスターの主人公=ここなはそれらに加えて「舞台に対する純粋な憧れ」が垣間見えるファントムを表現します。
ここなのセンス=舞台上で発揮される役者固有の特殊能力が具現化した静香が持っていた「舞台に対する純粋な憧れ」を「返して」もらったことで、ファントム役を鬼気迫る演技で勝ち取り本番に臨むことになるのでした。
「舞台に対する純粋な憧れ」で静香とファントムが重なることが、ここなのファントムに対する解釈、ここなが表現するファントムに説得力を持たせているように思います。
一方でこの「憧れ」という要素はワールドダイスターでの『オペラ座の怪人』以外ではあまり全面に出ない要素で、最初の印象ではやや違和感がありました。
アンドリュー・ロイド・ウェーバー版のファントム
私自身が最もなじみあるファントム像はアンドリュー・ロイド・ウェーバーによるミュージカル『オペラ座の怪人』(劇団四季などが上演していてミュージカルとして最も一般的なもの)なので、ここからはこれを一般的なファントムとして言及します。(原作を読み直すことがあれば原作版についても追記したいと思います)
一般的なファントムはオペラ座の地下に閉じ込められ続けたために、地上の社会に対する怒りや憎悪、絶望で固まり、クリスティーヌに異常な執着、歪んだ愛情、独占欲を向ける、狂気の天才と表現されているように思います。
クリスティーヌの美しい歌声を通じて自らの音楽を理想通りに表現できることだけが喜びで、心象風景としては真っ黒けです。
クリスティーヌを地下に引きずり込もうというとしますが、自分が地上に出ることは全く考えていません。
ここなの解釈に対する解釈
ここなはファントムの中に「舞台に対する純粋な憧れ」を見ましたが、一般的なファントムにその要素はあまり見当たりません。
この違いはどこから来るのか、説明できるのでしょうか。
納得いく説明をしばらく(無料配信期間中に最終回を5回くらい見ながら)考えて、1つ思い当たることがありました。
ファントムの年齢(地下で孤独に過ごした期間の長さ)です。
一般的なファントムはクリスティーヌの親世代の登場人物、マダム・ジリーに匿われてオペラ座の地下に住みついたこととなっており、映画版の表現を信用すると、マダム・ジリーがまだ10代のころに匿われているので、クリスティーヌと出会う頃には少なくとも20年以上地下で過ごしているように思えます。ミュージカルの方でファントムが地下で過ごした期間について言及があるか記憶にありませんが、10年以上は地下で過ごしているような気がします。
一方でワールドダイスター版(シリウス版、Eden版はまた違うかも)『オペラ座の怪人』ではマダム・ジリーに当たる登場人物が見当たりません。ファントムがいつから噂になっているのか、どういった経緯でオペラ座にやってきたのかについても私が12/18現在確認できた範囲ではよく分かりません。クリスティーヌにレッスンをつけている期間以上ではあるはずですが、それも具体的な期間については言及されていません。
演じ手が23歳になると卒業するシリウスで上演されていて、16歳のここなが演じていることも考えあわせると、シリウス版のファントムも10代半ば、地下で過ごした期間もせいぜい5年前後と考えてもよさそうです。一般的なファントムの年齢を考えるキーになっているマダム・ジリーにあたるキャラクターがシリウス版には登場しないことも、この解釈を補強します。
なぜファントムの年齢が問題になるかというと、狂気の純度、闇深さはファントムという人間が地下に閉じ込められていた期間に少なからず影響されるだろうと思うからです。10年以上、場合によっては数十年も閉じ込められていたとおぼしき一般的なファントムと、まだ地上の世界から隔離されて5年ほどで、それまでの過酷な生活から開放された心持ちから少しずつ孤独による狂気へと移り変わりつつあるファントムではかなり違いがあるでしょう。年若いファントムにはまだ希望や憧れがどこかに残っていてもおかしくありません。心象風景真っ黒けになった一般的なファントムとは違っていてよいのです、というのが私の解釈です。
蛇足
『オペラ座の怪人』序盤の山場の1つは間違いなくファントムがはじめて舞台に登場し、クリスティーヌを地下のすみかに案内する場面でしょう。
(こちらの動画は2004年の映画版)
ミュージカルを観ない人も知っている、あのメロディーの力強さ、この場面での説得力たるや、という見せ場です。
シリウス版では"Masquerade"がこの場面に彩りを添えますが、これが個人的にはイチオシの曲でした。
この曲のおかげで私はワールドダイスターにハマりました。
アニメでの、目が輝いてSEとともにセンスを発動する表現も大好きです。
"Masquerade"のフル(Lyric Video:公式)はこちら↓。
音ゲーはまったく初心者な上、ちびたちがいるとゆっくりプレイする時間もほとんどありませんが、ワールドダイスター、これからもゆるゆる追いかけていこうと思います。
……実はもう1つ、クリスティーヌがファントムに向ける愛の「質」の違いというネタもありますが、もう1本記事を書き上げる力がないのでさわりだけここに置いておきます。
気になる方はぜひ、アンドリュー・ロイド・ウェーバー版『オペラ座の怪人』とシリウス版について、クリスティーヌがファントムにキスする場面を見比べ(聴き比べ)てみてください。
たぶん、英語版の方が違いがはっきり分かると思います。
日本語訳版ではキリスト教的なニュアンスが捨象されてしまっているので、また少し違っています(原語厨のよくないところ)。