4歳娘が主演女優になった日
幕が開いた。
娘が、舞台の真ん中に、ひとり胸を張って立っていた。
すこし緊張した表情だったが、音楽に合わせて小さく顔を動かしてカウントをとり、大きく息を吸った。
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週末は、保育園の「ミュージカルコンサート」だった。
今年度は、遠足も、運動会も、お泊まり学習も無くなって、それでも、唯一先生たちが開催を死守してくれたのが、このイベントだ。
娘は、これが4回目のコンサート。
1歳クラスでは、座ってるだけで号泣
2歳クラスでは、棒立ち
3歳クラスでは、怒ったような何とも言えない顔で。
ことしはねぇ、にほんむかしばなしをやるんだよ。
○○ちゃんは、まちむすめをやるから。
娘によれば、日本昔話の三つのお話(一寸法師、かぐや姫、浦島太郎)をオムニバス形式でやっていくミュージカルで、年中・年少クラス合同のプログラムだという。
小さな保育園で、年中クラスは6人。
男の子は浦島太郎と一寸法師。
女の子はかぐや姫、乙姫、一寸法師のお姫様。
あれ?町娘ってオマケの役かしら?
と思ってしまったのは否めない。
毎年、家では張り切って全クラスの全パートをバッチリ披露してくれるのに、本番はほぼノーパフォーマンス。
だから、先生が考慮してくれたのかしら…いや今年は泣かずにできたら御の字だよね、などと思いつつも、ちょっと複雑なような、なんとも言えない気持ちだったけど、当の娘は誇らしげ。でも、今年は、家ではあまり披露してくれないなぁ、って思っていた。
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「むかし、むかしのことだった〜」
左右にステップを踏み、手を大きく広げて歌い始めた。マイクなんてもちろんないけど、100人くらいの観客の後ろまで聞こえるくらい、よく通る大きな声。
音楽が始まるまでちょっと泣きそうな緊張したような顔だったけれど、なんと堂々としたものだ。
町娘は、このオムニバスのストーリーテラー。舞台の真ん中に大きな絵本が置いてあり、次のお話を説明しながらページをめくっていく役だった。
かぐや姫、月に帰ってしまいましたね。
次は浦島太郎のおはなしです。
絵本のページをめくりましょう。
最初、お話の切り替えで2回、終わってから、と娘の独演タイムは4回もあり(元のセリフを知らないけれど)全てにおいて堂々と大きな声で。
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前の日、昨年のビデオを一緒に見ながら、今年は大きな声でできるかなぁ?と話した自分を猛烈に反省した。
そんなこと、私だったら絶対言われたくないのに。
本番が終わり「すごかった」としか言えず(←語彙)
ただ娘をギューっと抱きしめて「頑張ったね」と伝えた。誇らしげにニッコリした娘は、大きな声だったでしょ、と。まわりのお友達のパパママからも、○○ちゃんカッコ良かったね!と声をかけられて、嬉しそう。そしてなんと「今年はお客さんの席も明るかったよね、昨年は暗かったのに」と呟いていた。そんなとこまで見えていたとはね。
間違いなく、主演女優のようだった。
先生は、4歳クラスの全ての子が「主演」であれるよう、最大限心を尽くしてくださっていた。あぁなんと母の心の狭さよ。。
※この年齢だと、1人が間違えると続かないので、掛け合いのセリフはあまり多くない。3歳までは、みんなで同じ役、をやっている。
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2日経ってもなお、興奮冷めやらぬまま、朝の保育園。
いつもなら、変わりないです〜お願いします!と出てくるだけなのだけど、珍しく園長先生に話しかけられた。
○○ちゃん、素晴らしかったですよね。
実は練習の時は結構モニャモニャしちゃってましたが、舞台で練習したら振り切って開花して、あの仕上がりになりました!意外と本番に強いタイプかもしれません。
練習も全力で取り組んでいるし、舞台でやるのが楽しいみたいですね!本当に素敵でした!
昨年は、前日に、
○○ちゃん、お友達と一緒ならいいテンションで乗り切れると思いますよ!
と励まされていたことを思えば、園長先生もびっくり、そして嬉しく思ってくださったのだろう。そして今日知ったのだが、本番の2日前に1つ役割を追加したのだそうで(そういえば、町娘と、かぐや姫のおばあさんと二役やっていた)、それも完璧でした!と絶賛してくれた。
なんと、頼もしく、成長していることか。挑戦を応援してくれて、可能性を開花させる。親と過ごしているだけでは、引き出せないところまで。保育園て素晴らしい、有難いところだなぁと改めて感動。
そして、大泣きも棒立ちも怒ったような顔も、決してノーパフォーマンスじゃなかったことを、4回目にして初めて知る。母もまだまだ未熟だし当然ながら未完だ。私は4年前とこんなにパフォーマンス変わっているか?
今日も保育園ではたくさんの主演俳優たちがワイワイ楽しく1日を始めようとしていた。なんて最高なんだ!
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