シビックテックにまつわるQ&A〜Developers Summit 2020 での質問〜
Developers Summit 2020で、「エンジニアよ、今こそ社会課題に立ち向かおう!」というテーマで講演をさせていただきました。当日のスライドはこちらにアップしています。
当日の反応は、Togetter でもまとまっています。
レポートを書いてくださった方もいます。
以前、東京大学でのやりとりのQ&Aを公開したことがあったのですが、今回も良い質問が多かったので、質問と解答を書き下ろしてみました。では、早速行きましょうー
Q.具体的にテクノロジーを活用した社会課題解決事例を教えて下さい。
A.本プレゼンで紹介したもの以外にも、様々なケースがあります。たとえば、同じく今年のデブサミで発表されていた、伊藤昌毅先生のGTFSの話など。Civic Tech で検索すると海外事例も多く見れると思います。
Q.コミュニティを起こしたり、維持するにもあるていどの費用がかかると思いますが、それらはどのようにしてまかなっているのでしょうか。
A. Code for Japan 本体は、行政や企業向けの案件の多くで対価をいただいていますし、フルタイムスタッフも何人かいます。そこで稼いだお金をコミュニティ活動の原資に充てています。
一方、各地のコミュニティにの場合は、多くはボランタリーな活動のことが多いです。イベントごとなどでは企業から協賛をもらったりしています。よくある地域の技術系コミュニティと同じ感じだと思います。ただし、中には自治体等から活動費が出ている場合もありますし、NPO法人化して収益を得ているコミュニティもあります。
地域で信頼を得るにあたり、続けること、というのは大事です。お金がないと続かない、というのは少し危険です。逆にいえば、低コストでも続けられる体制を地域なりに考えるというのは重要な生存戦略になると思います。
Q.前から気になってました!しかし、普段の業務がハードだったりして、中途半端な活動はかえって迷惑にならないかと躊躇しておりました。継続する意味でちょっとした活動ならやっていきたいのですがどんな作業がありますか?
A. 迷惑だなんてとんでもない!!イベントに来てもらえるだけでも嬉しいですし、そういった時間が取れなくても、記事をシェアしたり、友人や同僚に今日聞いたことの感想をシェアしてもらうだけでも、立派な貢献です。あなたがエンジニアであれば、例えば Code for Japan のGitHub リポジトリにある、’help_wanted’ タグを修正いただく、ということが考えられます。
あなたがエンジニアでなくても大丈夫です。実際、Code for Japan のメンバーの大半は非エンジニアです。それでも、イベントの受付のようなことから、企画づくり、デザイン、広報、グラレコなどいろんな活動の場所があります。ただし、少しだけ積極的に、「こういうことをやってみたい」という意思を示してもらう必要はあります。そうでないと、何をお願いできるかもわからないので。ぜひSlack チャンネルに参加して、まずは自己紹介をしてみてください。
Q.行政(特に国)は、企業のブランド力を重視する印象があるのですが、どうやって食い込んでいったのでしょうか?
Q.行政との繋がりをどう作っていったのかお話出来る範囲でお聞きしたいです。
A. そうですね。最初は特に、Code for に理解のある自治体からアプローチしていきました。徐々に実績や信頼が積み重なり、国の委員会などの場にも有識者として参加できるようになっていきました。特に、国がオープンデータ推進を始めたのと重なった事が大きく、その際にデータを使う側として注目されはじめました。他にそういうことをやっている団体も少なく、長い間活動を続けていることから、行政内部の人たちと信頼関係を構築できました。行政といっても、中の人達は普通の人間です。いろんな職員の話を聞き、我々のできることを実際に見せ、イベントに来てもらい、批判するのではなく手を動かし、「ともに考え、ともにつくる」ことを続けてきたことが良かったのではないかと感じます。もちろん、地域のCode for の活動が重要だったことは言うまでもありません。
Q.その地域でイチから自分で立ち上げるとき、これまで立ち上げられた方は、具体的に何から始められたのでしょうか?
A. 誰でも自由に始められるので、地域によって違いもありますが、多くの場合は、まずは仲間を集めることから始めます。3人くらいの賛同者が集まったら、まずはミートアップ的なことをやるのが良いと思います。地域にどれくらいの人たちが興味を持ってくれそうかわかります。あとはワークショップなりアプリ開発なり、好きに活動してもらって構いませんが、まずは活動の方法を学んでみたいということであれば、お近くの地域の Code for に足を運んで見ることも良いのではないでしょうか。もちろん Code for Japan も相談に乗ります。
ウェブサイトやロゴを作るのもおすすめです。活動することが決まったら、Code for Japan のウェブサイトから登録をすることができます。よかったら Slack に入って質問してみてください!
Q.地元(鳥取)のプロボノに参加したいと思ってるんですが遠距離過ぎてなかなか難しいなと感じています。遠隔地の社会課題にうまく取り組んでいる事例があれば教えて下さい。
A. 素晴らしいです!遠距離で取り組むのってたしかに難しいですね。
ただし、地域で活動している団体がいて、その団体をプロボノで参加したい、ということであれば可能性はあるかと思います。
一度関係性を構築するには、実際に顔を合わせて話すことが重要だったりしますが、関係性を構築できてしまえばオンラインミーティングなどを使って距離を埋めることができます。実際、私も様々な地域の団体をオンラインミーティングでサポートしています。もしその団体がそのような環境を持っていない場合、まずはオンラインミーティングができる環境を作ってあげるプロボノをするのはいかがでしょうか。地方こそ、オンラインミーティングのインパクトは大きいです。
Q.ぶっちゃけ、儲かりますか…?主旨にとても賛同するのですが扶養家族が多いので稼がないともダメで。そう思っている時点でダメなのかもしれませんが…
A. シビックテック活動で儲かるか?と言われると、儲からないこともないけれど、お金を稼ぐだけであれば他にもっと効率の良い方法があるのではないかと思います。自分が儲けることを第一にすると、どうしても周りから共感が得られませんし。活動によって地域が儲かり、結果として自分にも帰ってくる、という形で儲かっている人たちはいます。
人間の資産には、金融資産以外の他に、物的資産、関係資産、信頼資産というものがあります。関係資産や信頼資産は、それ自体を換金することはできませんが、その資産を活用することで金融資産を生み出すことができる資産です。人からの助けを多く得られるる人は、金融資産が潤沢になくても困りません。また、主観的な幸せに対して影響が大きいのは、金融資産ではなく関係資産や信頼資産です。シビックテックの活動はすぐに金融資産には結びつきませんが、関係資産や信頼資産の構築にとても効果があります。あなたは、「お金のために仕事をしている人」と、「社会を良くするために仕事をしている人」のどちらを信頼できますか?
とはいえ、質問者さんが言うように、扶養家族を養うことは大変重要です。私にも家族がいます。
今でこそCode for Japan では役員報酬をもらっていますが、最初の頃は完全ボランティアでした。なぜそんな活動ができたのか?というと、別に仕事をしていたからですし、今私が3つ会社をやっているのもそういった理由からです。しっかりお金を稼ぐところと、自分の信念で活動するところを分けて活動しています。人間の活動はゼロかイチかではありません。隙間時間でできることをやってみてはいかがでしょうか。
Q.お上への依存型の考えから抜けるきっかけや、いい方法が知りたいです。
A. ぜひ Code for Japan のイベントへw
というのは別にして、なんでもいいからアクションしてみてください。ハッカソンに参加してみても良いですし、町内会の集まりに出てみても良いですし、自治体の人に話を聞きにいってみるのも良いでしょう。NPOの活動に寄付してみると、その社会課題について興味が出てくるかもしれません。
エンジニアであれば、オープンデータを使って何か作ってみるのも良いですね。
アクションをすると、フィードバックが返ってきます。そこから新しい想いやアイデアが湧き出てきます。本当に小さなことで構いません。ツイッターでつぶやくだけでも。何か行動してみましょう。
Q.Social Technology Officerとプロボノの違いはなんでしょうか?
A. Social Technology Officer は、我々が生み出していきたい人材の役割の名前です。CTOみたいな一般名詞にしていきたい。
プロボノは、お金をもらわずにプロフェッショナルなスキルを提供する勤務形態のことを指しますので、STOとはレイヤーが違う概念です。
プロボノでNPOを手伝うSTOもいれば、有給でNPOで働くSTOもいるでしょう。
Q.code for japanの存在を初めて知りました。少し敷居が高そうかと思いましたがオープンソースコミュニティに近いとのことなので参加してみたいと思いました!SDGsだと、何から初めて良いかわからない感じになってたので。
A. 嬉しいです!ぜひ、ソーシャルハックデーに遊びに来てください。
わいわいとやってますし、初めて来る人も多く、まったく敷居は高くありません。
確かに、SDGsとか言われてもよくわかりませんよね。
身近な、わかりやすい課題(課題が分かりやすくても解きやすいわけではないですが)もたくさんあります。
ソーシャルハックデー以外でも各地のコミュニティに参加してもらうことも歓迎です。
https://hackday.code4japan.org/
Q.おっさんでも参加してよいですか?
A. Why not?
もちろんです!実際おっさんは多いです。(私も・・)
子供が生まれると、地域や行政の大事さを痛感するので。
というわけでした。講演後の Ask the Speaker でも、たくさんの人が話を聞きに来てくれました。ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました!