シビックテックに関する学生からの質問〜きっかけ編〜
先日、inochi Online Hackathon という、一般社団法人inochi未来プロジェクトが主催するオンラインハッカソンで、慶應義塾大学医学部の宮田 裕章先生とともに学生の質問に答えていたのですが、Sli.do で集めた質問に時間内に答えきれなかったので、こちらで返答していきます。
超大作になってしまいましたので、3回に分けて記事にします。まずは、活動のきっかけに関わるものを抜き出しました。
(医学的な内容など、私が答えられないものは除いてあります。また、質問の意味がわかりやすいように、原文ママでなく若干変更している質問もあります。)
以前の東大の学生とのQ&A記事もよかったらご参考にどうぞ
Q. inochi では inochi Gakusei Innovators' Programという活動で中高生と大学生が一緒になって、市民からヘルスケアの課題を解決しようという活動を行ない、若者だからこそ出せるvalueはなにかに日々向き合っています。このような若者が社会課題に取り組む意義についてどのようにお考えですか?
同様の質問:若者がシビックテックに参加する意義について伺いたいです。
素晴らしいことだと思います!まず、若いうちから当事者意識を持ち、正解が無い課題に取り組む経験を積むことは、社会に出た時に大きな価値を生むと思います。また、当事者ならではの課題に対して実行者になれば、その分良いソリューションを作れる可能性があります。また、たとえ自分たち自身がサービスを作るところまで行かなくても、公共サービスや民間サービスのより良い利用者として振る舞うことができるので、結果的にサービスの質も向上します。
先日、シビックテックに参加する若者が主催したイベントがあり、それについての感想を以下の note に書いていますので、ぜひご覧ください。
そのイベントで、さくらインターネットの田中社長が語っていた以下の言葉に私も同意します。ぜひ色々悩み、活動してください。
先行きが不透明な時代にはクリエイティビティこそが大事であり、そのためには
* やりたいことをやる
* いまやるべきことをやる
* じぶんらしくある
ことが大切である
また、京都大学で意思決定の授業を受け持ち、自らを「若者世代の軍事顧問」と定義し、「2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義」という伝説の講義が最近話題になった瀧本哲史さん(残念ながら2019年8月に病のため夭逝)は、いまや伝説となった上記の講義の中でこう言っています。
「パラダイムシフト」とは、世代交代である。
例えば、天動説から地動説へのパラダイムの転換というのは、皆が議論をする中でコンセンサスが得られたわけではなく、実際には、古い説を唱えていた人がみんな死んでしまったことで行われたということです。
結果論としてしかパラダイムはシフトせず、つまり、みなさんのような若者が新しくて正しい答えさえ選択すれば、いつか世の中は変わるということなのです。
皆さんの年齢の時に、ぜひシビックテックの活動に参加し、いろんなことを感じてみてください。(ところで瀧本さんの著作はどれも良いのでぜひ読んでみてください。)
社会を変える方法は色々あります。スタートアップを始めるもよし、大企業に入るもよし、NPOやNGOに入るのもいいですし、社会起業家になっても良いでしょう。実家の事業を手伝っても良いと思いますし、中小企業で働いても良いです。
市民である以上、シビックテックの活動には年齢、職業関係なくいつでも参加できるのが良いところです。今のうちに経験しておき、ぜひ価値観の引き出しを増やしておきましょう。
Q. トップダウンの対策だけではなく、ボトムアップのコロナ対策を市民から行う上で、専門的な知識を伴ったフォローアップが必要だと思うのですが、今手が空いているのはどこだと思いますか。
保健所や医療機関はなかなか忙しいですが、今回の宮田先生のように、学生に協力してくれる先生や大学、研究機関も存在します。ただ、シビックテックが得意なのは、ドンピシャで感染拡大を防ぐような公衆衛生のど真ん中や医療のど真ん中の課題ではなく、トップダウンの取り組みからこぼれてしまうような領域の課題が多いです。身の回りにある小さな課題と、専門家の知恵を繋ぐことは可能です。NPOなどもそうですが、課題を持っている人のそばには、それを助ける活動をしている団体や専門家がいることが多いです。まずは自分が興味を持った課題の現場に行き、話を聞いてみましょう。(忙しいことも多いので、相手の都合もしっかり考えましょう)
Q. 新たな教育モデルをシビックテックから構築していくことは可能でしょうか。規制の問題がありますか?
教育分野で活動している人もたくさんいます。最近は一つの正解を求める教育ではなく、多様な意見の納得解を目指したり、活動を通じたアクティブラーニングを重視する教育が必要だと言われていますが、シビックテックはまさにそのような教育を提供できる場所でもあります。
プログラミング教育やGIGAスクール、そして昨今のリモート授業といった、従来の教員組織だけでは対応しきれない問題や活動がでてきたいま、多くの人が教育分野に関わり、新しい教育のあり方を考え、教員を支えていくていく必要は大いにあるでしょう。
規制というよりも、政治の問題はありますが、変化が必要だと思う人は増えています。今こそ皆さん当事者の参加も必要です。
Q. code for xxの活動に参加するためには、プログラミング等の技術が必要でしょうか。
必要ありません!Code for の活動の多くは、プログラミングの知識の無い人で成り立っています。実際、参加者の中でバリバリプログラミングをする人は3割くらいだと思います。一般的な会社を考えてみていただいてもわかると思いますが、サービスを企画しデリバリーし、運用するためには、企画を考える人、ビジネスモデルを考える人、デザインを考える人、ユーザーテストをする人、営業に行く人、お金の算段をする人、といった、非エンジニア領域の仕事が必要です。シビックテックといえど、そこは変わりません。さらに、コミュニティ活動においては、ビジョンを伝える人、人々をつなげる人、飲み会を盛り上げる人🍺 、イベント企画をする人なども必要です。いくらでも貢献する余地がありますので、ぜひ気軽に参加してみてください。
まずはSlackに入ると良いのではないかと思います。
Q. ずばり、何か行動するために大事なことはなんでしょうか
ストレートな質問ですね!周りで活動している人たちを見ていると、動機は本当にさまざまです。友人に誘われた、何か自分でできることを探していた、強烈な原体験があった、イベントに行ったら楽しかった、誰かに頼まれた、自分のやりたいことを進めるのに仲間が必要だった、などなど。ちなみに私は、オープンソースコミュニティに参加していたことから、東日本大震災のときに機会がやってきました。
実は、みなさんがこのハッカソンに参加したこと、そのことこそがすでに行動になっています。その時の後押しになったのはなんですか?すでに一歩を踏み出しているのですから、もう少し行動してみてはいかがでしょうか。そして、行動した結果をアウトプットすることです。そうすると、何らかのフィードバックが返ってきます。そのフィードバックが、次の行動につながる源泉になるのです。
この記事を読んだ人にとっても、これがなんらかのきっかけになると嬉しいと思います。まずは、Code for Japan の Slack で自己紹介してみましょう!
本日は以上です。活動編に続きます。
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