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【論文読んでみた】夫婦が親チームとなっていくプロセス:幼児期の子どもを持つ夫婦を対象とした質的研究:大島ほか(2022)
論文記事、なんとか上げるぜい・・・(ぜーはー)
今回のもそうですが、まあそうだよねえ、という結論の論文がいい論文なのだろうなと素人ながら最近思ったりしています。
ひとことでいうとこんな感じ
育児中の夫婦ってどうやってチームになっていくの?
というプロセスを、インタビュー等を通して明らかにした質的研究。
目的・仮説
夫婦間コペアレンティング関係が維持され、かつ、チームとしての育児の担い手である夫婦を「親チーム」と定義し、
夫婦が親になる移行期の困難や葛藤に焦点を当て、親チームの実態と夫婦が育児家事を分担しながら親チームを形成していく過程を明らかにすること。
研究の進め方
2〜5歳の子どもがいる21組の夫婦に対して、
属性等を尋ねる質問紙調査の後、夫婦同席の形で1組1時間程度の半構造化面接を実施。
夫婦が育児や家事をめぐる葛藤を相互に調整していく過程を明らかにするという視点に基づいて分析した。
研究の結果
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夫婦が【子の誕生前後の家庭観】を持ちつつ【夫婦間ホメオスタシスを保つ努力】を行う中で、【思い通 りにいかないことが出て】きたり、そのために【お互いに察してほしいの悪循環】になったりしつつも、【葛藤に対処】し、【親チームになっていく】過程が明らかとなった。
【子の誕生前後の家庭観】は、家事育児は妻が行うものであるとする伝統的性役割観と、「何とかなる」という臨機応変さ(主に夫側の楽観主義)という2つの要素から成っている。
【夫婦間ホメオスタシスを保つ努力】は、子どもの誕生に伴い増加する家事や新たに発生した育児という仕事を何とか夫婦二人で効率良く担っていこうとする試み。この段階には、自分の気持ちを適切に相手に伝える自己主張能力や空気を読む力といった高度なコミュニ ケーション能力が必要になる。
【思い通りにいかないことが出てくる】は、子育て初期に抱いていた伝統的性役割観では上手くいかなくなったり、楽観的な期待が裏切られたりした時に強く感じられる。(なお、子育ての大変さを事前に想像し,家事育児を半々にする ことを目標としていた夫を持つ夫婦は、順調にここをクリアした模様。)
【お互いに察してほしい】という状態は、思い通りにいかないというストレスが増えてくると夫婦はパートナーにまず援助を期待するわけであるが、相手も同様であり、両者とも余裕が無くなり、親チームどころか相手を敵とみ なしてしまう危険性がある。
【親チームになっていく】の段階に結びつけていくものは、お互いへの配慮・感謝と子の成長である。子の成長は親チームにとっては一番の目標であると考えられ、<子の育てやすさに気づく>ことは、子を育てるという夫婦の共通目標の再発見であり、親チームとしての絆を深めることにつながる。
考察
夫が子どもに関わることによって夫自身の父親イメージの再構築が進むことも示唆された。夫婦が親チームとなっていく際にはお互いが<家族の時間を大切にする>ことも示唆された。様々な葛藤を乗り越え、お互いに配慮・感謝し合い、子の成長を感じつつ,家族の時間が大切なものと感じられた時、夫婦は親チームとして機能しているのだろう。
知らないことば
特になし。<子の育てやすさに気づく>という点が個人的には新鮮だった。