「Liminal」シナリオ構造を探る
気付けば以前のポストから半年が経っていました。
今回は最近個人的にやりたい熱が高まっている「Liminal」のシナリオ作成手引きとするため、今考えていることをアイディア整理も兼ねて書き記します。
ちゃんとした記事でなく思考整理メモ程度の位置づけになりますが、ご興味があればお付き合い下さい。
Liminal――境界線上に立つ狭間の者たち
LiminalはPaul Mitchenerによって作られた現代伝記モノTRPGシステムです。
日本語版が2023年の3月に株式会社マール・ストロムより発表され、翻訳TRPG界隈では一躍話題となりました。
主にイギリスを舞台として、プレイヤーは現代文明と超常世界の狭間にある存在、どちらにも混ざれる境界線に立つ者――リミナルズとして、対立する組織間を渡り歩きながらケース(事件)を解決します。
人狼、妖精や妖魔、吸血鬼とダンピール、ブラックドック、地相術師に超常現象を監視する警察の知られざる窓際部署「P局」……こうしたワードにときめくのであれば、ぜひともオススメしたいシステムです。
また、イギリスが舞台とは書きましたが、翻訳者のMontroさん曰く、Liminalのシステムは日本を舞台とするにも十分耐えうるものです。
実際にルールブックにも「幽界(p.122,206)」という、人や動物でなく場所の幽霊という設定があり、これを見て私も「マヨイガいけるじゃん!」と歓喜したものです(誰か実際にシナリオ作ってくれたら遊びに行きます)。
Liminalのシナリオ構成
システム解説は別の詳しい方に譲るとして、今回はルールブックのGMセクションおよび公式シナリオ「Faithless Faceless」を元に、システム側で想定されているシナリオ構成を探ってみます。
極力ネタバレは少なくするつもりですが、気になる方はこの時点でブラウザバックしてください。
何らかの困りごとを中核に据える
まず、Liminalのシナリオ構成は基本的に「何らかの超常現象による問題」が中核となるのが望ましいかと考えています。
クルーによって導入(フック)は異なるため、解決すべき状況と捉えた方がシナリオの幅は広がりそうです。
ポイントは敵対者が必ずしも主軸でなくていいということ。
ファンタジーならともかく、現代社会では敵対者の排除が最善手となるとは限りませんし、Liminalは複数の勢力の間にもまれながらの事件解決となる以上、必ず排除しなければならない敵としてしまうと、その後の展開幅はかえって狭まるでしょう。
Liminalでは組織ごとに関係値という好感度のような数値があり、ケース(セッション)ごとに各数値が変化します。
敵対者はときに組織の関係者にもなり得るでしょうが、対処法によってはかえって組織との関係が強固になる、とした方が楽しめるように思います。
場面を作る
続いて、シーンの構成。
PCたちの解決すべき問題だけを配置した初期状態では、PCたちは真っ先に事件の解決に向かい、難なく達成するか、手がかりの不足により返り討ちにあうでしょう。
ルールブックにはこれを回避すべく「ひと捻り」のアイディアがありますが、要は謎解きや交渉を加えて寄り道をさせるということです。
ルールブックでは「場面を二つ準備」とありますが、Montroさんの公式シナリオを見ると、単に場面を経由させるだけでなく何度も同じ場面を往復させています。
いかにも公式シナリオらしく基本に忠実な作りですが、いくつもの場面を登場させてプレイヤーを混乱させるよりは堅実な手法と考えられます(選択肢が多すぎてもプレイヤーには正解がわからないためストレスとなる)。
敵対者やNPCの原動力を考える
LiminalにおいてはPCだけでなくNPC、特に敵対者についても原動力を定義することが推奨されています。
「この人物は組織の復興のために動いている」
「この妖精は妖精郷の女王に仕え、門番として近づく人を懲らしめている」
こうした強い目的(私流にいえば行動原理)を設定することで、たとえ筋道から離れてもGMのアドリブを補佐してくれるでしょう。
また、原動力は時に対立を解決する際の落としどころともなるでしょう。
これはLiminalが必ずしも戦闘を必須とせず、プレイヤーたちの機転次第では戦わずして解決することも可能であることを意味します。
ただ個人的に、簡単にPCたちになびいたり同調したりするような原動力の設定は優れた手法とは思いません。戦闘と同様に困難な説得や根回しを経てシナリオを解決できた方が、達成感はあるのではないかと思います。
Liminalシナリオの俯瞰図
シナリオを俯瞰視点で見ると、下のような図で表せるでしょう。
場面遷移のルールはシステム側で整備されていないので、シーンの達成条件が明確なシステムに慣れた方にはつかみどころがないかもしれませんね。
ルールブックの記述を見るに、Liminalでは判定に失敗して行き詰まるようなマスタリングは推奨されていません(p.75,200-201 失敗の扱いを参照)。
GMは次の場面がどこなのかを明示し、手がかりが途絶えないようにした方がいいでしょう。
プレイヤーが手がかりを求めたり調査行動をとれば、知りたい情報に合わせ何らかの判定を行うことになるでしょう。ただし、判定に用いる技能は(ロール的に無理がなければ)ある程度プレイヤー側で指定できるため、言われた判定だけをこなしているような単調さは覚えなくて済みます。
よって、各場面で手に入る情報には次の場面への動線をセットにし、
「事件の情報+詳しく調べるための場所情報」の形で渡すとスムーズかもしれません。
いかがでしたでしょうか。この記事を読んで、シナリオ書いてみようかな、と思ってもらえれば幸いです。
私もまだこれからルールブックやシナリオを読み解いていく最中なので、同好の士が一人でも増えることを願ってやみません。
それではいつか、現世と超常の交わる狭間にてお会いしましょう。
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