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詰将棋が”将棋に勝つための力”を育てる

藤井七段の強さを考察するNOTEをアップしたと思ったら2ヶ月ちょっとで藤井二冠になっておられました。いやはや、恐れ入りました。

上のNOTEでは藤井二冠の強さを裏付けている2つの能力について語りました。一つは超速の未来予知能力(=先を読むスピード)、そしてもう一つは精確な形勢判断力(=最善手を選び取る局面分析力)です。自分は詰将棋がこの2つの能力を育む一助になっているのだろうと思ったので、それについて簡単に語ります。よかったら最後までお付き合いくださいませ。

将棋は先を読むスピードが速い方が絶対に有利

「将棋が強くなるにはどうしたらいいの?」という悩みは将棋の強さに関わらず(将棋を指す人は)誰しも一度は持ちます。そこで、よく挙げられる答えが ”詰将棋” です。将棋の強さの指標には段位やレーティングなどがありますが、より具体的な言葉で表現するとすれば前述した2つの能力が安定的に高いということに尽きます。自分は詰将棋は勝利を保証してくれるわけではないけれど、勝利を引き寄せるための先を読むスピード確実に底上げしてくれるパズルだと考えています。

将棋で何よりも相手にプレッシャーを与えるのは ”先を読むスピードが速いこと” です。陸上ランナーで言うトップスピードのイメージに近く、プロ棋士はよくアスリートに例えられます。単純にこのスピードが速ければ速いほど、限られた時間の中でより多くの手をより深くまで掘り下げることができますし、対戦相手のスピードを上回れば勝負で優位に立つことができます。勝敗が決する最終盤においても同様で「何十何手先に詰みがある」とできるだけ早く読み切る詰将棋の力も先を読むスピードがベースになっています。一言でまとめれば、将棋は先を読むスピードが速い方が絶対に有利だということです。

先を読むスピードの速さが生む2つのメリット

先を読むスピードが速いと少なくとも2つのメリットがあります。

1つ目は、最善手を選び取る局面分析力がアップすることです。単純に単位時間あたりに考える局面数が増えるため、一手ごとの質・精度が高くなります。それらが積もり積もっていくと、自分が有利になる変化の多い方へ局面をコントロールできるため、自然と高い勝率が望めるというわけです。

藤井二冠が当たり前のようにAIが導いた最善手を選び続けているのは ”先を読むスピード” がとんでもないレベルに達していることの証左です。ただし、これはAI最強説を前提とした見方で、当の藤井二冠はAIのことを手放しで信じてはいないそうです。「AIが必ずしもその局面における真の最善手を示しているかどうかなんて分からないでしょう」という風に勝手に解釈すると、プロ棋士としての意地が感じられますね。

2つ目は、一発逆転の勝負手を放てることです。将棋は劣勢に陥ったら形勢がズルズルと悪化していく(ジリ貧になる)ことが多いです。それを避けるため、相手の思考を楽にさせないように局面をわざと複雑化させた上で勝負手を放ちます。勝負手というのは劣勢・敗勢となっている側が大逆転の望みを託して放つ手です。

例えば、の局面にあるように、先手藤井二冠の繰り出した勝負手▲7六桂に対して▽7五玉とすればそのまま後手澤田六段が勝勢でした。しかしながら、▽同金と取ってしまったがために(大事件と言ってもいい)逆転劇が起こりました。 これが無ければ、かの29連勝という連勝記録は作られていなかったでしょう。

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勝負手は一見「どう対応しても良さそう」とカモフラージュされていますが、実際は天国か地獄かの二択です。局面を複雑化するのは、勝負手がより効果的に相手の動揺と判断ミスを誘うためにしていたのでした。対応を誤れば上記のようにたちまち勝勢が敗勢へとひっくり返ります。

こういった相手に楽をさせない局面を作り出すのも、またとんでもない逆転を秘めた勝負手を何気なく見せるのも先を読むスピードが速いからこそできる芸当だと言えます。

詰将棋が先を読むスピードを速くする

藤井二冠は詰将棋によって先を読むスピードを速くしていったと言われています。端的に言うと、詰将棋は正解手順が一つだけ存在する将棋パズルで、どれだけ早く答えに辿り着けるかである程度将棋の強さを測ることができます。

仮に、先を読むスピードを速くする(単位時間当たりに思考できる量を増やす)ことが目的ならば、最悪詰将棋は解けなくても全然問題ありません。重要なのは問題図から相手玉を詰めるためにありとあらゆる手を考えることに頭を慣れさせることです。その結果、駒を実際に動かさずとも脳内で勝手に駒が動いてくれるほどに読みのスピードというのは少しずつですが確実に上がっていきます。この力は最終的に将棋の強さとなって実戦に還元されます。地味なことですけど、繰り返しこの詰将棋のトレーニングをし続ければ将棋で勝利するための安定した先を読むスピードをモノにすることができるでしょう。

おススメの詰将棋

一口に詰将棋と言っても様々な種類がありますが、個人的におすすめなのは長手数ではなく、1~9手のような一桁手数の実戦形の詰将棋です。理由は実戦で似た形が出現しやすいということと、実戦で11手以上の長い詰みがあっても短時間で読み切るのは多少不安があるからです(できるに越したことはないですけどね)。自分の棋力と同じレベルかちょっと上のレベルの詰将棋本を探して、繰り返し解きましょう。

おススメしない筆者の詰将棋

筆者が探索している裸玉双裸玉は実戦とは似ても似つかない特殊形なので避けましょう。解くことが目的というよりも、存在自体に価値を見出す系の詰将棋だからです。

まだ清貧/貧乏図式・飛飛角角ものの方が詰将棋っぽさはありますが、それでも実戦からかけ離れた形をしていることに変わりないので、自作詰将棋ながらおススメはできません。この酔狂についてこられる方にだけ見て頂ければと思っています。


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