運動学習過程を統合する超学習仮説(Super-learning hypothesis)
【論文紹介】
原文はこちらから(OA)→
https://doi.org/10.1016/j.neubiorev.2019.02.008
これまでの運動学習システムの考え方
学習(特に運動学習)の文脈においては、これまで「強化学習」、「教師あり学習」、「教師なし学習」の3つのシステムの強い相互依存性はあまり考慮されてこなかった。
そうはいっても、まったく別のシステムとして完全分業しているとは考えている臨床家は少ないだろうし、脳機能の大部分がそうであるように、これらのシステム間の多様性と冗長性は、相互補完して機能していると考えるのは自然である。
実際、ニューラルネットワークの存在は知られているし、脳機能障害ではある程度の代償機転が生じる。
超学習(Superlearning)による理論統合
ここで、2019年のCaligioreらの総説から、超学習(Superlearning)の概念を紹介する。
筆者らも述べているように全く新しい概念を展開しようとしているわけでなく、これまでの概念を統合し、大脳皮質-小脳-基底核システムは協調して働いていること、そのコンセンサスを確認する内容となる。
超学習について、原文から抜粋すると、、、
協調して作用するメカニズムとして、ここでは具体的に3つのパターンを提唱している。
1)協働(Cooperation)
2)受け渡し(Pipeline)
3)出力相互作用(Output interaction)
である。
あくまで仮説であり、今後、修正される可能性があることに留意が必要である。特に大脳、基底核、小脳にフォーカスしているが、今後は意味記憶やエピソード記憶などの統合がありうるとされている。
超学習の階層性
ほとんどの皮質領域は大脳基底核や小脳のさまざまな部分と高度に統合されたサブシステムを形成している。
イメージの補助として皮質・皮質下の階層性について紹介する。複雑なためここでは詳細な解説は割愛する。
とりあえず最初は、皮質システムの情報フローに基底核と小脳が、様々なレベルで強く作用しているという事実を再確認すれば良いと思う。
さいごに
これまで教科書的に提示されてきた運動学習システムの図は、今後は更新されていくと思われる。
各システムの作用を個別単純化して理解することは初学者では有用と思われるが、中枢神経系の機能はそこまでクリアカットできるものでもなく、ある程度の冗長性を持ち、オーバーラップされたシステムであることは念頭に置いておく必要がある。
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