2022年の大型連休を振り返る
ついせんだって、オンテッドリーからこんなメールが届いた。
ずいぶんとまた、昔の出来事を振り返れと。しかも「会社でやったプロジェクト」という稚拙な言い回し、「いつでも振り替えれる」という誤字などいろいろとツッコミどころは満載なのだが、ほかでもないオンテッドリーのことなので大目にみましょう。
それにしてもだ。
31年前。俺はコピーライターの先輩に紹介されて、読売広告社系の制作会社、アドエッグのクリエイティブディレクターとの面接に臨んだ。
「竹内くんからの紹介ってことなんだけどサ、いまちょうどコピーの椅子が空いてなくてサ」
「いや、そこをなんとか…」
「うーん、なんとかって言われてもなあ」
あまり健康的とはいえない感じの浅黒い顔をしたアドエッグのCDは俺のポートフォリオをパラパラをめくりながら煙草を蒸す。
「まだ若いよな。いくつ?」
「今年で2になります」
「お?意外と歳くってんじゃん」
「そうですか?」
「30代は間に合ってんだよなあ」
そのとき俺は21だった。
結局アドエッグには入れてもらえず、代わりに「ここ連絡入れとくから顔出してみな。ウチよりは小さいけど」と教えてくれたのが神楽坂のプロダクション、レキップだった。いい時代である。
と、31年前に思いをよせたところで
もうちょい直近を振り返らせてください。今年のゴールデンウィークとか。
子どもの頃からの悪癖でめんどうなことをすぐ先送りする俺は、人によっては10連休となるのをいいことに、4月に入ってからの仕事のほとんどの納品(提出)を「じゃ、連休明けで」と笑顔でキメまくっていました。
クライアントも気心知れた相手ばかりでなおかつ大型連休前にタガがおもいっきりゆるんでおり「オッケー!じゃ連休明けにシクヨロ!」と気さくに了承してくれるわけです。
おかげで連休突入前の4月28日の時点で以下の仕事が手元にありました。
・インタビュー記事…4本
・対談記事…1本
・インナーブランディング…1本
・Webサイトコピーワーク…2本
・採用ページコピーワーク…1本
・新規採用コンテンツ企画…1本
通常運転ならこれぐらいは朝メシ前の昼メシおかわり!ってなもんですが、なんせぜんぶ9日から10日を目処に提出、という同時多発下呂。
いつものことですが、己のダメ人間さ加減を思い知ることになります。これだから俺、フリーランスみたいな仕事してるけど会社組織を離れたらアカンやつなんや…。
しかし人間
やればできるものです。29日、30日、1日、2日と集中してみっちり仕事に取り組みました。眼の前にぶら下げる人参は規定打数を超えたらビールを呑んでよし、というルール。そして「小仏トンネルを先頭に40キロの渋滞」ではじまるUターンラッシュのニュース。
おかげでインナーブランディングの一部を除いて全て完了。2日にはインタビュー記事のブラッシュアップまで手を回すことができました。
やればできる子と言われ続けて50年超、は伊達じゃない。
そこで3日は仕事上で協力関係にあるプロダクション代表兼コピーライターと、昔からかわいがっているお弟子ちゃんとの3人で昼過ぎから宴会。みんな評価される機会がめっきり減ってきたので、お互いの半期の仕事ぶりを褒め称えあうというハートウォーミングなイベントでした。
そして4日は久しぶりに完オフ。家にいると朝からビールのプルトップをあけてしまうのでクルマで代官山の蔦屋へ足を運びます。愛犬のフードやおやつ、おもちゃを買いつつ、スタバでコールドブリューを飲み、立ち読みに耽るという贅沢な休日をキメるわけです。
最近、高血圧であることが発覚したのでまずは料理コーナー。さすがに減塩料理レシピみたいなわかりやすい本はありませんでした。さらにデザイン・アート、平置きのファッション誌を冷やかしてビジネスやマーケティングのコーナーへ。
そこでふと目にした『ブレーン』6月号。なにを隠そうブレーンは会社で購読しているので別にここで読まなくてもいいんですが、なんか気になって手にして、パラパラと癖で「C-1グランプリ」の頁をめくります。
ここで「C-1グランプリ」について簡単に紹介すると、広告業界で活躍するクリエイターがゲストとともにお題を出して、キャッチコピーを募るというもの。参加資格は一切なし。日本で一番手軽なコンテストといえます。とはいえ、なかなかグランプリには輝けない。ファイナリストにすらひっかからない。エントリーから掲載されるまで3ヶ月から半年ぐらいのタイムラグもあり、ついつい提出したことを忘れてしまうといういわくつきでもあります(俺だけか?)
話を戻します。
ふむふむ今回のお題は…ああ『出社もありだなと思えるコピー』ね。確かにあったよなそんなの。俺、エントリーしたっけ?
そんな感じで目線を移動させていくと
ンごぇっ!?
本屋で何気なく立ち読みしていて自分の名前が掲載されているのに出くわすと、変な声が出るということを体現しました。
まさかマジかの準グランプリ!期待していないどころか、エントリーすら忘れてたぐらいなので、なんかこう、じわじわと喜びが腹の底から湧き上がってきます。しかも大きな仕事の山を片付けた後だったこともあり、ノーストレスでうれしさを噛み締められた。
家に帰って調べたんですが、ぼくは3年前にもこのC-1で準グランプリを獲得していました。その時のお題は『夏木マリさんを思わずCMに起用したくなるコピー』。こちらをぜひお読みください。
つまり高校野球風にいえば3年ぶり2度めの受賞というわけ。すっかり気をよくしたぼくはさっきデザインコーナーで目にして、その分厚さと値段に思わず出した手を引っ込めたこの本をカード一括払いで購入しました。勢いでキヨブタです。
※キヨブタ…清水の舞台から飛び降りる
日本を代表するグラフィックデザイナー、大貫卓也さんの仕事集です。2017年に2,500部限定で発売され即完売、現在では入手困難な幻の書籍のコンパクト&増補完全版。
内容はもう本当にページ数以上に分厚く、大貫さんのデザインに対する考え方、発見や気づきのプロセスが文章でも記されており、作品とにらめっこしながら読むだけで残りの休みが全て充実した潰れ方をしたというシロモノです。
思えば生まれて
このかた、賞罰でいくと罰の多いライフスタイルを貫いてきました。それがどうでしょう。ここ数年、noteの読書感想文コンテストでは2年連続で受賞できたり、このC-1にしても本当に身に余る光栄に恵まれています。
なんかこわい。
こわいからとりあえずお礼をさきにいおう。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
大事だと思うので2回言っときました。
あれですね、なんでも続けているといいことあるもんですね。続けるって大事だなあ。地位も名誉も資本も才能もいらないもんな。ある意味めっちゃ平等、めっちゃ公平。
そんな、当たり前ながら大切なことがあらためてわかった、いい連休でした。