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個人もミッション・ビジョン・バリューを作ってもいいのかも

かなり押し付けがましい話をすることになるかもしれません。最初にお断りしておきます。でも「なんか月曜の仕事noteに適したテーマってないかなあ」と浜松町のクライアント先で思いついてしまったので仕方がありません。ごめんなさい。

ここ5年ぐらい、ぼくの仕事の1/3を占めている企業のミッション・ビジョン・バリュー(以下MVV)策定におけるワーディング支援。最近ではここにパーパスという要素が加わったり、あるいは企業トップの考えていることを外に向けてエモーショナルにアレンジするといった仕事も含まれるようになっています。

ここで正しい説明が必要かなって思うのは、ぼくがお手伝いするのはMVVの作成ではなくてあくまでワーディング支援であるということ。MVVを作る主体はあくまで企業サイドであって、ぼくは最後のブラッシュアップというかクリエイティブジャンプをサポートしているんですね。

この座組みって結構大事で。いくつか理由があるので箇条書きにしてみます。

・主体性と責任

MVVとはいうまでもなく会社が何のために存在しているのか、何を目指しているのか、そのために社員はどういう思想に則って行動するのかを言葉で規定するものです。決して綺麗事や美辞麗句を並べて採用の際に有利になろう、みたいな目的で作られるべきものではありません。

故に「こんな感じで作っといて」みたいに外部に丸投げ、というのはダメ、ゼッタイ。です。ぼくも過去に経験が浅かった頃、いくつか丸投げを丸受けして全く形にならず失敗した苦い経験を持っています。

MVVは取り組みスタートのところから社員からも選抜メンバーを募ったりして、社員と経営陣が一体感を持って作成するものです。あるいは強烈なトップダウンでもいいけど。いずれにしてもぼくのようなどこの馬の骨かわからないような輩が骨組みから作ってはいけません。

そういうのは頓挫するか、完成してもワークしません。なぜならそこに理想と意思と責任が存在しないから。人まかせでは何年も持続する経営理念は作れないのです。当たり前ですが。

・新鮮な発見と愛着

いったんは自分たちの手でなんとか最後のフィニッシュまで持っていこうと頑張ること。これ結構大切です。ぼくは最初にお声がけをいただき、その時点での最終版を見せてもらうときに必ず言う言葉があります。

「これでいいんじゃないですか?」

これは何も自分にやる気がなく、あわよくば何もしないでギャラだけ掻っ攫おう、としているからではありません。書いてて思いますがひどい話ですね。

そうではなくて、前述もしましたがぼくは基本的には自分たちの会社のMVVのようなものはそこで働く人たち、つまり自分たちで作るべきだと思っているからです。ここにクリエイターっぽい輩がシャシャリ出ていっちょひと儲けしてやろう、なんて企てるからややこしいことになるんです。

余談かもしれないのですが、ご縁あって地方の中小企業の経営者の方からお声がけがかかると結構な確率で、東京の大手広告代理店のクリエイターだった、という人が企画の段階から手を出して、なんだかんだで4桁ほどのお金をかけた挙句、宙ぶらりんの状態になっている案件に出くわします。

それらは一応、フィニッシュというか最終アウトプットの形には行き着いているんです。ぼくからみてもそれっぽいというか、フレーズだけ見るとかなり洗練されていたりする。だけど、問題は経営者以下関係する人たちがみんな「なんだかなあ」と納得感を得られていないことにあります。

そういうこともあって、ぼくはできれば当事者たちの意思を最大限に尊重するようにしています。その上で、出来上がっている最終成果物には何が足りないのか、何に不満を持っているのか、どうしたいのかを聞くことにしている。

そうすると、ぼくが出力するフレーズに対して本当に新鮮な驚きを感じてくれます。思考のプロセスを共有しているので「なるほどそうなるのか!」「そういう表現があるのか」と。同時に、そうなる一歩手前までは自分たちで考えた痕跡は残る(残らない場合もありますが)ので、自然とフレーズに愛着が湧くというわけです。

もちろん最初の「いいんじゃないですか」でなんという頼りない輩だ、と信頼を獲得する前から信じてもらえない場合もなくはないのですが。

・納品後の可変性

一度でも課題の定義から意見収集、USPの言語化、さらに言いたいことの分類などを社内で経験すれば、策定したMVVが時代の変化や組織のグロースによってミスマッチになった際にアレンジをかけることができます。

これも外部に丸投げだとどうしてこうなったんだっけ?とまるでソースコードがないシステムをリプレースするみたいなことになってしまいます。そして新たに発注先探しに奔走し、またもや4桁の見積もりが…もったいないですよね。

自分たちの夢や理想を言葉にするとか、行動を規定するとともに士気を上げるフレーズを作るのだから、やはりできる限り内製化すべきだと思うんです。のちのちのことを考えてもです。

外部のパートナーには壁打ち相手、あるいは自分たちが持ち得ない領域での支援にとどめた方がいい。つまりブレストにおけるアイデア出しとか、フィニッシュにおけるクリエイティブジャンプですね。

そこがわかっている仕事の場合、大抵うまくいきます。お互いがやるべき領分を十全に理解して、それぞれが持てる力を思う存分発揮できるんですから当然といえば当然でしょう。


で、最近、MVVのお仕事をやっていてよく思うのが、何も法人だけでなく、働く人がそれぞれ個人でもMVVを持つといいことがあるのではないか、ということ。少なくとも仕事をする上で前向きになれるんじゃないかと。

あるいは終身雇用の時代が終わりますので、おそらく多くの働く人は1回以上転職を経験することになるはず。ちょっと前の調査で転職経験者が全労働人口の6割をほんの少し下回っていました(※)ので、今はもう少し上がっていそう。しかもこの傾向は間違いなく加速していくでしょう。

(※)Indeed Japan 2023年「転職」に関する5カ国比較調査による

転職がデフォルトになるとしたら、転職のときに持っていた方がいい判断軸があります。それは自分が「なんのために働くのか」「何にやりがいを感じるのか」「自分の能力をなんの役に立てたいのか」といったもの。これって企業におけるパーパスやミッション、ビジョンに通じるところがあるとぼくは思うんです。

こうした軸、つまりパーソナルなMVVを持って転職活動をすれば、かなりの確率でその転職が成功とまで言わなくても失敗はしないんじゃないか。仮にうまくいかなかった場合でも、どこでつまづいたか、判断ミスをしたのかを振り返ることができるはずです。

人生100年時代。終身雇用はおろか定年という概念まで崩れ落ちていく日本社会でサバイブする、しかもできるだけ充実した前向きなサバイバー(ソリッドステイトサバイバーと命名したいです)になるためにも、ぜひ一度、自分のMVVを考えてみてはいかがでしょうか。

何?コピーライターじゃないからそんなものは作れない?

そう思うあなた、落ち着いてもう一度このnoteを読みかえしてみてください。

KEEP CALM AND READ HIROMICHI です。

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