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関係3団体に苦言、暗号資産の税制改正の議論が盛り上がらないのはなぜなのか

暗号資産(仮想通貨)の税制改正の議論が盛り上がっていません。それはなぜでしょうか。一言で言えば、現行税制の分析が全くできていないからです。ですから、論点を絞れていないので、その議論と提言が説得力に欠けるということではないかと思います。

日本ブロックチェーン協会(JBA)は「暗号資産に関する税制改正要望(2024 年度)」を金融庁に提出し、⑴第三者発行トークンに対する期末含み益課税の撤廃、⑵個人の暗号資産取引に対する課税方法を申告分離課税に変更し税率を一律20.315% とすること、⑶暗号資産同士の交換時の都度利益に対する所得税課税の撤廃の3つを提案しています。

日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と共同で、「2024年度税制改正に関する要望書」を取りまとめ、金融庁に提出し、ほぼ同様の提案をしています。

⑵と⑶は、既に繰り返し要望等がなされています。したがって、この2 つは世間に周知徹底されていて、税制改正により税負担を軽減するか否かを政府が決めるかどうかの問題です。

⑵は暗号資産(仮想通貨)の取引を棚ぼた的な投機的利益と考える一般層からの理解が得られにくく、⑶は租税回避行為の横行が容易に想像できることを考えると、早期の撤廃は不可能であると考えられます。

つまり、現行税制が暗号資産(仮想通貨)を雑所得扱いしている背景や、なぜ暗号資産(仮想通貨)が譲渡所得に区分することができないか等、現行法を理論的根拠を伴って掘り下げて議論することを忘れているので、議論と提言が飛躍し過ぎていて説得力が全くないのではないかと思います。

「発行の時から継続して有する」と「自己の計算において有する」場合の国税当局の解釈は、「法人が保有する暗号資産に係る期末時価評価の取扱いについて(情報)」により明らかにされています。既に立法されている「発行の時から継続して有する」と「自己の計算において有する」暗号資産(仮想通貨)の解釈論と、令和5年度税制改正で見送られた他社が発行し第三者が保有する短期売買目的でないトークンを期末時価評価の対象外にすることは明確に分けるべきです。令和5年度税制改正関係の法令通達の量の多さや、「発行の時から継続して有する」と「自己の計算において有する」場合に係る未解決の解釈論に鑑みれば、⑴の他社が発行し第三者が保有する短期売買目的でないトークンを期末時価評価の対象外にする議論は立法そのものが技術的に難しく、安易に税制改正を提案するべきではありません。

日本ブロックチェーン協会(JBA)、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は税制改正要望の内容を再検討すべきでしょう。

(白桃書房編集注)『暗号資産とNFTの税務』収載の同名コラムについて、若干の編集を加え公開しています。

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