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ループという新しいゲーム

こんにちは。
僕ことハクです。

元々DJは音の再生屋、音楽をかけることから始まりました。
一時期スクラッチのド派手なサウンドにより、DJ=スクラッチする人というイメージになっていました。
しかし、基本に立ち返りましょう。あくまで再生屋です。
そこでサンプリングという新しいルールが音楽に加わってきました。

新しいルールが設けられたことで、それに基づき新しいゲームを初めたくなるのが人の性です。
丁度この時ブレイクビーツによって、何度もフレーズを繰り返す=ループという概念がもたらされていました。
やがてこのループは新しいゲームへと変貌していきます。
つまり、サンプラーを使っていかにヤバいループを構築するか...それが新しい音楽になっていくことになります。

ということで、今回はループという新しいゲームについて解説していきたいと思います。


■音楽的な構造から

いきなり「音楽的な構造」とか言われても、尻込みしてしまいますよねw
大丈夫です、再生屋の視点からこれについては説明します。
大抵のポップミュージックに分類される音楽は、①ビート②ベース音③それ以外、これで構成されていると思ってください。

①ビートについてですが...何拍子とか小難しいことは全部抜きにしましょう。
「ドンタン、ドドタン」とか「ドッドドタン」とか、口ずさむレベルで考えるともの凄く楽です。
あらかじめサンプラーに入れていおいたそれぞれのドラム音を、この口ずさみと同じように配置していけば...あら完成。
もっと言うと、ブレイクビーツの項で説明している様に、おいしいドラムフレーズをそのままサンプラーに入れてしまいましょう。
はい、それを繰り返しループさせるだけ…難しくないです。
ほとんど元ネタが決まっている、というかアーメンブレイクという定番中の定番があるので、これ使っておけばまず問題ないです。

②ベース音についてですが、これはちょっとセンスいるかもしれないです。
ビートが決まったので、それに合うベースのプレイ...僕だったらジャズあたりからあさりますね。
これは何とも言い難いところですが、後述する③それ以外のネタと一緒にいいフレーズを探し出してきて、丸々サンプリングしていくのもありです。

とはいうものの、①と②に関してはそんなに気にすることはありません。
後にTR-808、TB-303という、ドラムとベースを作曲できる神機材が登場するので...この部分はあっさりとこの電子楽器に頼っていいと思ってます。
問題は③それ以外、ここからが勝負になりますね。

■センスの見せ所

ビートとベースが決まったので、いよいよ③それ以外のループを作っていましょう。
まずはややこしいこと抜きで、僕が最高にヤバいと思ってるループをいくつか紹介します。

The Pharcyde - Drop

SHAKKAZOMBIE - 虹

Nujabes - Feather

こんな感じです。
PharcydeのDropはJ・ディラが作ってますね。
どれもその曲知ってるだけで凄いねってなるようなところからネタを掘り出してるのですが...よくそのフレーズを選びましたねっていうセンスがヤバい。
更に、いくつものフレーズを重ねて構築してたり、エフェクターかけたり、音の速度変えてみたり...やっぱやってること変態すぎる(勿論ほめてます)

■余談

そして、これは絶対に意図してないと思いますが、フレーズの速度を変えてしまっているということは、厳密に言うとそれは実際の楽器の音程に存在していない音が含まれるということです。
バトルDJ編のトーンプレイの際に少し触れましたが、通常より速く再生すると音は高くなり、逆に遅く再生すると低くなります。
この音響原理にしたがうと、実際に鳴っている楽器の音とは音程がずれるということになります。
難しい言葉を使うと「微分音」が発生します。

微分音について簡単に説明しますね。
ちょっと音楽を知っている人であれば「ド」と「レ」の間の音は何ですか?答えが「ド#(レ♭)」であることがわかります。
これはピアノの白と白の間に黒い鍵盤、即ちそこが間の音になります。
では「ド」と「ド#」の間の音は何ですか?これが微分音になります。

微分音は音楽関係者などでない限り、人間の耳には区別がつかないレベルの小さい音程差になります。
普通の人からすると違和感があるぐらいの違いでしかありません。
しかし音楽的には、この差異があることでハーモニーのバランスは崩れてしまいます。
これをセンスだけで作曲に当て込んでいるのは、結構至難の業です。

例えるなら、チューニングのずれたギターとピアノで作曲するようなものでしょうか。
イメージしただけでも脳がバグりそうです💦
この辺りを含めて考えていくと天才としか思えませんね。
(何百回も繰り返してサンプリングしている努力の人たちであるとも言えます)

■まとめ

こんな感じで、全く新しいルールのもと作曲を行うことができるようになっていきました。
但しそれは音楽のルールを覆す新しい音楽のルールであり、いずれはこれも理論化されていくような気がします。
オリジネーター達はこれをセンスと実験による努力で賄ってきました。
その歴史の上に理論が成立していくのは世の常かもしれませんね。

それではまた。
アディオス!

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