『「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方』

『「顧客消滅」時代のマーケティング ファンから始まる「売れるしくみ」の作り方』

著者:小阪裕司

出版社:PHP研究所(PHPビジネス新書)

発行年:2021年3月11日

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 引っ越しやら何やらで移動していたときに、空港で買って読んでいた新書です。帯に〈コロナ禍でも売上を伸ばし続けるたった一つの方法〉と書いてあるので、書店で見かけたとき興味をもちました。「フロー」と「ストック」という用語を初めて知りました。で、引っ越し後のドタバタで途中で読むのをやめてしまったので、再度一から読み直しました。

 著者は、顧客消滅時代のマーケティングに必要な考え方と手法を以下のように提言しています。

・フロー型からストック型へビジネスを変える

・「ファンダム」を作り、育てていく

・感性と価値で市場を創る

 なるほどな、と思いました。そしてタイミングの問題なのか、私は、三四郎のオールナイトニッポン公式ファンクラブ「バチボコプレミアムリスナー」 のことが思い浮かびました。オールナイトニッポンでは史上初の試みだそうです。これは著者のいう〈マスを狙うな、ファンを作れ〉と同じ戦略なのかしらと考えました。ファンコミュニティをつくることで、番組を存続させていく……。本書の内容と合致しています。「考える人はすごいな」と感嘆しました。また、例えば、

 フロー型ではなくストック型に自社のビジネスをシフトしていくにあたって、必然的にすべきことがある。それは、「自分たちの提供すべき価値は何か」ということと、「自分たちの顧客は誰か」を明確にすることだ。(p.134)

 という箇所を読んで、三四郎のラジオに当てはめていくと、「自分たちの顧客は誰か」=リスナーのことだなと思いました。それもイベントに行ったりグッズを買ったりもするヘビーリスナーのことを重点的に視野に入れていそうです。そういう熱狂的な番組のファンを囲い込むための手法として、「自分たちの提供すべき価値は何か」というわけですが、それが「過去の放送音源」「ファンクラブでしか聴けないラジオ」「ファンクラブでしか見れない三四郎のブログ」「おそらく何かしらの番組イベントのチケットの先行発売」なのだろうなと。ここらへんは、有名人やアーティストなどのファンクラブが提供しているものとほぼほぼ同じですが、ラジオ番組のファンクラブなだけあって、過去の放送音源というコンテンツは、よく考えられていると思いました。ヘビーリスナー以外に新規リスナーをも取り込んでいこうという狙いと、違法アップロードされたやつで過去音源を聞くヤツらに言い訳させない狙い(三四郎の小宮さんが柔らかめに指摘していました)、これは一石二鳥の作戦ですごいです。……ラジオのことばかり考えていましたが、おのれの仕事に対してもあてはめて考えられそうなので、空港にいたときに出会って良かったなと思った一冊です。

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