『スペース金融道』
『スペース金融道』
著者:宮内悠介
出版社:河出書房新社
発行年:2016年8月20日
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『書き下ろし日本SFコレクションNOVA』シリーズ掲載作品+書き下ろしから構成された短編集です。ベタですが、題名の「スペース」と「金融道」という組み合わせにまず惹かれました。金融道と聞くと、『ナニワ金融道』が頭の片隅にちらつきます。刷り込まれている……
題名の通り、金融会社の債権回収担当者が、〈宇宙だろうと深海だろうと零下190度の惑星だろうと取り立てる〉お話になっています。語り手である「僕」と上司のバディが基本なのですが、その上司の無茶振りが何というか宇宙的? ですごかったです。それ以上に、その無茶振りにほぼ耐えている「僕」がすごいことに注目してしまいました。本書はSFであり、宇宙規模のお仕事小説でもあるので、ブラック企業だなあ、と何回も思ってしまいました。それでも、彼らの織り成すドタバタ劇を読んで、くすりと笑ってしまいました。
あえて一編ベストを挙げるとすれば、私は「スペース蜃気楼」を推します。取り立て屋たちが何だかんだトラブルに遭い宇宙船に助けてもらったのですが、その宇宙船は地上へ帰るには「現金」が必要な決まりでした。この時代〈ここ数年ロクに使ってないぜ〉(P.123)という状況なので、どうにかこうにかカジノでお金を稼がないといけない―—。なかなかのピンチのなか、ある打開策を投じたところ思わぬ展開に。
その打開策が今となっては、世間的にだいぶ認知されていますが、掲載当時はどうなんでしょうか……
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