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ギリシャ旅行記03~島に逃げたい女達の逃避行~

【第2話はこちら↓】

【前回までのあらすじ】
無事、目的のサントリーニ島に到着したものの、友人が電気を飛ばすという事件をおこしやがりました。
以上

友人が充電器をコンセントに差した瞬間、
パッアアアン!
という音と共に火花が散り、部屋が真っ暗になった。

や・り・や・が・っ・た。

旅行前に散々下調べをしたはずの私たち。
「大抵の充電器は変圧機能が元々あり、変圧器を使う必要はない。ただ、条件があるのでちゃんと確認するように」というやりとりは一体何だったのか。
私は友人に対して怒ったことは今までに一回もない。ましてキレるなんてことはもってのほかだ。そんな私の「おまえ・・・?」と怒りに震える声に、さすがに9年来の友人もビビる。

電気がショートした真っ暗な部屋に月明かりだけが差し込んでくる。サントリーニ島は人工的な明かりがとても少ない。まさかさっきの電気爆発でホテル全体を闇に突き落としたのではないかと不安になった私は外の様子をバルコニーから窺ったが、そもそもホテルに宿泊しているのが私たちだけのようで、周りに騒いでいる人もいなければ、特に変わった様子もなかった。

しかし、電気が消えるとこんなに暗いものなのか。月明かりだけでは、足下も怪しいくらいだ。まさ
か、こんな事故でサントリーニ島の月明かりの美しさを堪能することになろうとは。と、ゆっくりと月明かりを堪能したいところだったが、飛行機の移動だけで25時間以上使った私の身体と頭は極限状態。ぶち切れるよりも寝たい。
仕方がないのでフロントまで行き、先ほど荷物を軽々と運んでくれたギリシャ人お兄さんに助けを求める。無事に電気は戻ったものの、不安なスタートになった。

余談だが、友人はとても英語が苦手なのに、なぜか率先して話しかけに行く。
その勇気は尊敬するが、自分で行っておいて私に「今なんて言われたの?」と聞くのは本当にやめてほしい。

切実に。

昨日の騒ぎは置いといて、朝は日の出を見るために5時に起床。寝起きの悪い友人を叩き起こして階段を上る。私たちが12月のオフシーズンに来たせいか、ホテルに宿泊しているのは本当に私たちだけのようだ。といっても、サントリーニ島のホテルは明確にここからがどのホテルと明記されているわけでもなく、建物の境は曖昧なものだから、正確には知らない。目に見える範囲では私たちだけだった。それを良いことに寝起きドすっぴんの姿で写真を撮りまくった。はじめは薄暗かった空がゆっくりと変わり始めた。

日が昇り始めると、辺りは朱色に包まれた。白い壁は太陽の色を鮮やかに反射させている。海が色づき始め、輝きだした。ふと地平線に目をやると、虹が2本かかっている。時間が経つにつれて虹も色濃くなってきた。私たちを包む景色は、今までの人生で一度も見たことのない美しさだった。

「あぁ、ここが天国か。」

友人がそう呟いた。
確かに、「実は私たちは行きの飛行機の中で死んでいて、ここは天国だよ」と言われても納得してしまうほどに美しかった。永遠に続いていく海に漕ぎ出せば、きっとどこまででも行けるのではないだろうか。あの海には時の流れも終わりもない永遠があるように思えた。ここから飛び降りれば天使になれるのではないかと、そんなことまで考えさせてしまうほどの天国が、そこにはあった。
想像をはるかに超える絶景を前に、私たちはただ海を見つめていた。

つづく

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