『フレッシュプリキュア!』が好きなので「光彩の摩天楼」をプレイしました。
※この記事には『フレッシュプリキュア!』の中盤までの展開と、『ワールドフリッパー』ストーリーイベント「光彩の摩天楼」のネタバレが含まれています。
きっかけは以下のツイート。
これらのツイートを読んで、プリキュアシリーズのファン、特にシリーズ第6作目『フレッシュプリキュア!』を好きな人間が、「光彩の摩天楼」に興味を持たないのは難しいだろう。
小松由佳さんと言えば『フレッシュプリキュア!』で敵組織の幹部「イース」こと「東せつな」を演じた声優さん。そして沖佳苗さんは主人公「キュアピーチ」こと「桃園ラブ」を演じている。
イースは「ラビリンス」と呼ばれる、異世界にある管理国家の出身だ。ラビリンスは、すべての国民が番号で管理され、「総統メビウス」の野望のために生かされている、全体主義的なディストピア。そんな祖国の仲間たちと共に、イースは地球へとやってくる。目的は地球の人々の「不幸から生まれるエネルギー」を、メビウスへと捧げること。イースたちは人々を不幸にするべく、怪物を生み出して暴れさせる。
(なかよしで連載された漫画版を手掛ける上北ふたご先生によるイース)
しかし彼女たちの活動を邪魔する者が現れる。それがキュアピーチ、キュアベリー、キュアパインを名乗る3人のプリキュアだ。
イースはその中のひとり、キュアピーチこと桃園ラブに目をつける。プリキュアへの変身アイテムを奪おうと、ただの少女「せつな」を名乗り、正体を隠してラブに近づくイース。疑いもせず、“せつな”に友達として接するラブを、イースは心の中で嘲笑う。
「馬鹿な子……」
しかし、そうやって交流を重ねていくうちにイースは、ラブが持つ純粋さ、優しさに絆さられてしまう(第7話「せつなとラブ 友情のクローバー!」 第15話「せつなとラブ 相手を思いやる心!」参照)。
(上北ふたご先生による『フレッシュプリキュア!』の主要キャラクター。一番大きく描かれたピンク色のプリキュアがキュアピーチ)
どうしてもプリキュアたちを倒すことができず、変身アイテムを奪って無力化する作戦も上手くいかない。自分がどれだけプリキュアたちを憎んでも、友達として真っ直ぐな優しさを向け、気遣ってくれるラブ。苛立ったイースは、ついに自身の正体を明かしてしまう(第22話「せつなとラブ あなたがイースなの!?」)。
その後、アジトに戻ったイースに、ラビリンスから書簡が届く。任務の失敗が続くイースに宛てた、ラビリンスからの書簡には、短くこう書かれていた。
「あなたの寿命は今日限りです。お疲れさまでした。」
もしあなたがまだ『フレッシュプリキュア!』を観ていないのであれば、ここから先の展開は、ぜひご自分の目で確かめていただきたい。上で書いたあらすじは細部をかなり端折っているので、これらの流れを知った上で視聴しても、問題なく面白いはずだ。
何はともあれ、イース……もとい“せつな”はこのあと、4人目のプリキュア「キュアパッション」として覚醒。ラビリンスに反旗を翻すことになる(繰り返すけど、これを知っていてもめちゃめちゃ面白いです)。そんな彼女を温かく迎え入れるラブたち。食事、行動、生きる目的など、すべてをラビリンスに管理されてきたせつなにとって、ラブたちと共に過ごす、笑顔に満ちた毎日は、どんなに幸せなものだっただろう。
そのドラマチックな展開と、そこに至るまでのせつなとラブの繊細かつ丁寧な心理描写もあって、僕にとって『フレッシュプリキュア!』はシリーズで最も思い出深い作品であり、キュアパッションはいちばんの“推しキュア”だ。
そして、“せつな”と“ラブ”の関係は、このアニメを愛するすべての人々にとって、作中の映像を思い出しただけで切なさと愛おしさと尊みが押し寄せてくる特別なものなのだ。
ということで、ようやく『ワールドフリッパー』の話になるのだが、「光彩の摩天楼」で小松由佳さん、沖佳苗さんが演じているキャラクターの関係は、ある意味、せつなとラブの関係を反転させたものに近い。
物語の舞台は、巨大企業が牛耳る金と欲望の街「クオリア・シティ」。小松さん演じるバレッタ(イースと同じ銀髪だ)と、沖さん演じるラヴ(今回は「ラブ」ではなく「ラヴ」だ)は、相棒同士。射撃の腕前に長けたバレッタと、天才ハッカーであるラヴが力を合わせれば、どんな依頼でも百人力だ。
バレッタはささやかな夢を持っていた。それは上空を覆う天蓋まで企業広告で埋め尽くされたこの街で生まれ育った相棒に、「本物の青空」を見せること……
今回の物語で、のちに裏切りが発覚するのはラヴの方だ。己の「生まれた理由」に逆らう術を知らないラヴは、バレッタの前に立ちはだかる。それでも、相棒を信じ、相棒のために夢を叶えたいと告げるバレッタ。ラヴは言い放った。
「莫迦な人」
そしてふたりはそれぞれの信念のためにぶつかり合う…!
今度は小松由佳さんキャラが沖佳苗さんキャラを救う番だ!!!
『フレッシュプリキュア!』のボツ案の中には、「イースは別の世界のもうひとりのラブ」というものがあったという。こういった要素を踏まえるとバレッタとラヴは、「別の世界で、正反対の生き方をし、それでも運命に導かれてめぐり逢ったせつなとラブ」なのかもしれない……という妄想を膨らまさずにはいられない。
(中の人ネタでこういうこと考えるの作品に対して誠実とは言えないかもしれないけど、中の人自身意識してるんだから、いいよね!)
というかこれは恐らく制作サイドも確実に意図してのキャスティングだと思うので、プリキュアのオタクは今後の『ワールドフリッパー』の動向には注目したほうがいいかもしれない。本名陽子さんとゆかなさんとか、小清水亜美さんと折笠富美子さんとか、いつキャスティングされてもおかしくない。
僕も今回のイベントにつられてプレイしてみたうちのひとりだが、このゲームはメインストーリーも出来が良い。ゲームとしてもピンボールの楽しさを、片手で遊べるお手軽スマホゲームへと換骨奪胎、適度な戦略性と気持ちよさが味わえる作りは非常に上手い。これからもちょくちょく触っていければと思う。
なお「光彩の摩天楼」は2020年4月5日(日)のお昼まで開催されるとのこと。ストーリーイベントをプレイするにはメインクエストの第1章をクリアする必要があるが、これには1時間掛からないと思う。そのうちアップデートでストーリーのリプレイとかも出来るようになるかもしれないので、『フレッシュプリキュア!』ファンの方は気が向いたらプレイしてみてはどうか。
最後にストーリーのシンクロ具合以外のことにも触れておきたい。僕がキュアパッションのことを好きな理由の中で、単純に小松由佳さんの声がめちゃくちゃ好き、というのはかなり大きなウエイトを占めている。『フレッシュプリキュア!』完結から10年。スマホゲームのいち期間限定イベントとはいえ、こんな形で小松さんが演じるキャラクターがメインを張る物語に触れられるとは思ってもみなかった。(リセマラでバレッタをゲットしたので戦闘中も粗野な口調の小松ボイスがガンガン流れる。最高……)
良い体験をさせていただきました……
『フレッシュプリキュア!』第1話の公式配信はこちら
イースも第1話から登場するぞ!