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マンガ雑感想 金剛寺さんは面倒臭い7巻 今こそ全人類に愛の力を

※この記事はネタバレしかありません


17コマのみかん

 結ばれることが確定して迎えた31話。さあ、とよ田センセはどうやって二人の”みかん”をどう描くのかとワクワクしていましたが、まさかの演出。1話全編オール見開き! オール1コマ! 心音で埋まるコマ、そして結ばれた瞬間の静寂。この31話、なんというかすべてが尊い。二人の初めての”みみかん”の悦びがあふれてくるよう。金剛寺さん上位で樺山君が「キャー」となる点も王道ながらとても良い。
 なんというか、とよ田センセの描くセックスにはとても情念が詰まっていますね。育んできた愛の結実であることが、とても幻想的に表現されているといいましょうか。二人の関係の到達点として、読んでいて心が突き動かされる何かがあります。ラブロマのときもよかったですし、とよ田センセのポリシーがあるのかもしれません。そもそも、このセックスが蛇足。これまでのストーリーを振り返れば、別に描くひつようはない。でもそこを描く、新しい表現で描く、っていうのは素人ながらすごいことだなぁ、と思います。
 結果としてこのシーンは自分的ナイスセックスシーン1位かもしれません。これまではめぞん一刻の管理人さんの部屋のやつ。2位が刃牙SAGA(逆ではなく真面目に)、3位がラブロマ。どれも甲乙つけがたいのですが、歩んできた道のりとマンガ的演出の合わせ技一本で金剛寺さんに塗り替えてもいいかなと。


幸せのインフレならば誰も困らない!
 

 そして樺山くんは一発必中のガンマンぶりを発揮し、めでたく新たな命が単純。成長、幸福の絶頂を更新し続けて、樺山くんとの別れ、そして再開。ここから2話かけて、金剛寺さんの生涯が描かれます。 いろんなところの演出もさることながら、この生涯を描くってめちゃくちゃすごくないですか? 一生をハイライトするラブコメがどこの世界にありますか。二人は幸せに添い遂げました、ならともかく人生の節目という節目を描いてくれるなんて、改めてすごいマンガだとこいつは……。
 この中でとても好きだったのが、子供が徐々に世界を認識していく様。もうこの世界が広がっていく感じが愛おしくて愛おしくて。自分お一児の父なので、なんだかわが身のように引き込まれる話でした。とよ田センセは育児マンガも描かれているだけあって、描写が抜群ですね……。熱けいれんのくだりとかマンガ的に正解なのかはともかく涙しましたもんw 作中でハッピーエンドだと明言されていたマンガではありましたが、なんというかここまで幸せが襲い掛かってくるとは予想してませんでした。あまりの幸せの流量に読んでいるとなんだか自分も幸せになってきます。


金剛寺さんは面倒臭いは壮大な生物賛歌だったのだよ!

 最後に最終話1話前で明かされる衝撃(?)の本作品のテーマ。うーん、深い。ポップに表現されているけど深い。金剛寺さんと樺山くんに目が行きがちですけど、確かに1話から一貫してこのテーマですね。うん。お互いに大きくはかかわらなくても、結局どこかで関係している。ビバ人間、ビバ生物、ビバ地球、みたいな。そういう意味ではエビフライエフェクトも荒唐無稽な話かと思いきや、この作品のテーマに大きくかかわっている話でしたね。すげえ。ベタですけど、破水した金剛寺さんを介抱するのが女の子は、1話の妊婦さんの子供だったりするのとかも、とてもほっこりして好きでした。
 そしてついに最終話。蛇足な話を続けてから一転、新しい”金剛寺さんは面倒臭い”が。これがまた良い。ちょっとしたSF感。そしてコロナ禍の現実とリンクするような展開。そしてやっぱり愛は地球を救う。続きが気になるけど気にならない、物語のオチとしてとても心地良い終わり方。Power of Love。愛は物語の始まりなのですね!

 短編集もとてもよかった。特に修羅の話がよかった。悟りの下りすごいですよね。
 短編集そして金剛寺さんとマンガ表現の限界に挑まれてきた中で、次のとよ田ワールドもとても楽しみです!!

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