
“広義のデザイン”への転換で新たな価値を創出。デザイン部門リーダーの挑戦
制作プロダクション勤務を経て、2020年に博報堂マーケティングシステムズに入社した星野 雄介。現在はデザイン部の部長として、Web制作全般のデザイン監修に携わっています。入社以来、“広義のデザイン”を掲げてデザイナーの役割や可能性を広げてきた星野に、デザイン部への想いを語ってもらいました。
狭義のデザインから広義のデザインへ、領域を広げて感じた“手応え”

日々、WebコンテンツのデザインやUX設計と向き合っている博報堂マーケティングシステムズのデザイン部。部長の星野は5名のチームメンバーと伴走しながら、全体のアートディレクションやデザイン監修を担っています。
「デザイン部では、自動車、金融、教育、美容など、幅広いクライアントのコーポレートサイトやサービスサイトを制作しています。デザインの監修に加えて企画段階からディレクションに入ることもあり、デザイン責任者としてモノづくりをリードしていくのが自分の役回りだと考えています」
そんな星野が社内で尽力してきたのが、デザインとそれを生み出すデザイナーの役割を広げ、“広義のデザイン”へと変革することです。彼が入社した当初は、組織体制が刷新される前のタイミング。ディレクター、デザイナー、エンジニアといった職域別に細かく区切られた役割に違和感を抱いたと当時を振り返ります。
「入社当初は『デザイナーはこの部分』と職種ごとに領域が閉ざされていて、役割の自由度が低い印象を受けました。担当業務も職域ごとにはっきりと分かれていて、ディレクターからデザイナー、エンジニアと順番に流れていくオペレーションになっていました。それだと効率はいいかもしれませんが、クリエイティブな発想は生まれにくいんですよね。
その後、案件ごとではなく専門領域のメンバーでスクラムを組む組織体制に変わり、チームリーダーを任せていただくことになりました。新しいユーザー体験を生むためにも、職域を超えたメンバーでブレストしながら作り上げていくことを進めていきたいと思いました」
そこで星野は、プロデューサーやディレクターとお互いの価値観やアイデアを交換しあう場に参加したり、デザイン思考を学ぶ外部研修を導入したりと、デザインの役割や領域を広げる取り組みに着手します。
「いわゆる狭義のデザインから、課題解決に向けたサービスや体験の設計を含む広義のデザインへと拡張してきたイメージです。デザインにはもっと可能性があることをメンバーに知ってもらいたいという想いで、ユーザーにとって価値ある体験を生み出すデザイン設計を掲げて案件に取り組んできました。
最近はユーザーの体験設計の段階からデザイナーが携わる機会が増えてきて、『デザイン部ってこんなこともできるチームなんだ』と社内に浸透してきた感覚があります。もともと誰かに求められたわけではなく勝手にやってきたことでしたが、少なからずいい影響が出ているのかなと手応えを感じています」
博報堂マーケティングシステムズで「新たなやりがい」に出会えた

星野が当社に入社したのは2020年のこと。新卒から勤め続けてきた制作プロダクションを離れて転職することを決意したきっかけは、コロナ禍にありました。
「コロナ禍での外出自粛やリモートワークへの切り替えで自分自身と向き合う時間が増え、今後のキャリアについてあらためて考えるようになりました。前職では少数精鋭のチームでWebを中心としたデザインやアートディレクションを担っていたのですが、もっと大きな企業で上流工程から携わることでステップアップしたいと、転職を決めました」
新卒で入社して以来、約15年間にわたって1社に勤め続けてきた星野にとって、転職活動は初めての経験。そんな中当社に惹かれた理由には、上流工程へのステップアップができるだけでなく、斬新なサービス展開があったと言います。
「博報堂マーケティングシステムズが行動経済学の知見を活用した『デジタルナッジ』という独自のサービスを展開しているのを知りました。これは人間が本来持っている心理や行動の特性をもとにしたアプローチで、デジタルマーケティングの効果を最大限に引き出すというもの。マーケティングに行動経済学を取り入れる姿勢がおもしろいなと感じたのが、この会社へ興味を持つ最初のきっかけになりました。
実は、入社後にデザインの側面から『デジタルナッジ』の強化に携わるチャンスをもらい、今はまさに力を入れて取り組んでいる最中です。ユーザーの意思決定や行動における障壁をいかに取り除いていくかを紐解きつつ、体験をつくっていく作業が楽しいですね」
入社して約3年が経った今、前職での経験を活かしながら新たな挑戦ができていることに手応えを感じていると語ります。
「前職では、主に企業のスペシャルサイトやプロモーションサイトなどを制作していました。サイトを訪れる人を楽しませるデザイン制作に注力してきた経験やその思考は、今の仕事にもつながっているように思います。さらにクライアントの課題抽出やユーザーの体験設計の段階から携われるので、それが新たなやりがいになっています」
デザイナーに求められる“想像力”が、チームマネジメントのヒントに

前職ではエンジニアと組んでWeb制作を進めることはあったものの、基本的にひとりで完結させる仕事が多かったという星野。博報堂マーケティングシステムズ入社後にチームメンバーを率いる立場を任されてからは、デザイナーとしてのやりがいに加え、チームでデザインに取り組むおもしろさを実感するようになりました。
「前職ではひとりで仕事をこなすことが多かったこともあり、こうしてチームで取り組めるのがすごく楽しいです。たとえば私がディレクションで方向性を示したとしても、デザイナーのメンバーからは、意外なものや自分の想像を上回るものがあがってくることがあるんです。チームでの仕事は、そういった場面に立ち会えるおもしろさがあります」
チームメンバーと関わる上で重視しているというのが、的確なフィードバックをはじめとするコミュニケーションです。その背景には、若手のころの経験があると話します。
「私自身、若手のころは先輩のフィードバックを正しく汲み取れなくて苦労した経験があるので、フィードバックはなるべくロジカルかつ具体的に伝えるようにしています。またアートディレクターとデザイナーはわかりやすい上下関係になりがちなので、なるべくフラットなコミュニケーションを心がけていますね。
私が若手だったころの想いや経験をマネジメントに反映させることもありますが、世代に合わせて伝え方を考えるのも大事だなと思います。どうすればメンバーのモチベーションが上がるかを考える観点は、ある意味、デザイナーに求められる“ユーザー視点に立つ想像力”にもつながっている気がします」
星野が入社した当初はかなりの案件で自ら手を動かしていたものの、ここ1年ほどは手を動かす機会も減ってきたそう。若手メンバーの頼もしい成長を感じています。
「現在は、とくに私の指示がなくてもメンバーが自走してくれていて、チーム内でお互いに声をかけてフォローしあえる関係構築ができています。その成長を感じられるのは何より嬉しいですね。その環境づくりは私が何かしたというよりも、一人ひとりのメンバーの貢献が大きいです。
デザイン部はメンバー同士のコミュニケーションが活発でみんな仲が良いんです。社内で一番なんじゃないかと思えるくらい、いい雰囲気のなかで仕事ができています。本当にいいメンバーに恵まれたなと思いますね」
「自分の強みを伸ばしてもらえたら」大きな価値を生み出すチームをめざして

デザイン部のチームメンバーには、今後デザイナーとして自分なりの強みを持ってもらいたいと想いを語ります。
「これまでデザイナーとしてのキャリアを積んでいくなかで、クリエイティブを突き詰めることで大きな価値を出すにはものすごく尖らないといけないなと、その難しさを感じてきました。
だからこそチームメンバーには、デザインに加えてひとつでも“強み”を持ってもらいたいと思っています。もちろんクリエイティブの質をとことん追求するのもいいですが、たとえばUXの領域を強化してUXデザイナーをめざす、企画のプランニングが得意なアートディレクターになるなど、それぞれの関心領域を伸ばす形でキャリアプランを描いていってほしいですね。
まだ駆け出しで特化したものがない若手メンバーは、なんとなく方向性を探ってみるだけでもいいと思います。担当案件にコミットしながら意識的に自分の強みを伸ばしていくことで、デザイナーとしてもいち個人としても大きな価値を創出できるようになってもらえたらと期待しています」
星野自身も、これまで顧客体験の設計も視野に入れた“広義のデザイン”への拡張をめざして奔走し、新たな価値を生み出してきたひとり。それぞれが思い描くキャリアに向けて活躍の幅を広げていけるデザイン部には、デザイナーという肩書きにとらわれずに、新たな領域に挑戦したい人にぴったりな環境が整っています。
「上司の後押しもあり、リーダーとしてはかなり自由にやらせてもらってきた感覚があります。チャレンジに寛容な社風には感謝しています。そういう意味では、『案件進行をやってみたい』『より良い顧客体験の設計を考えていきたい』といった挑戦意欲のある方に向いていると思いますね。デザイナーとしてただ画だけを作っていくよりも、広い視野を持って幅を広げていきたいという方に、ぜひ来てもらえたらと思います」
※ 記載内容は2023年7月時点のものです