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強くなりたいから朝滑り台を滑ってから登校した、という日記

とにかく、退屈だった。

毎日のように学校はある。というか、毎日ある。
僕らは学校があるたびに学校へ登校しなければならない。登校する時間というのは決して短いものではなく、登校している時間があるならぜひとも別の時間にあてたいくらいだ。

その時間でゲームだってできるし、動画編集もできる。もちろん、寿司を握ることもできる。

そして苦労した先に待つのは学校だ。授業や部活などをする場所。決して嫌いではないが、登校時間を考えると割に合ってない場所な気がする。

しかし、登校する人間は無数にいる。僕だけが体験している辛さだけではなく、多くの人が僕と同じように面倒だと思っているだろう。

それがなんだかおもしろくない。

毎日苦労してやっていても誰にも自慢することができず、なんなら僕より長い時間登校してる人にマウントを取られるだけ。なんにも報われない。もういっそみんな登校するな。

こんな退屈でつまらないことに悩まされたくない。
だから僕は、このつまらなさに勝てる強さが欲しかった。

ふと、こんなことを思った。
ネットスラング的にも存在する言葉「筋肉が解決する」や、少林寺や柔道のようなものを習っている人は心が穏やかになるみたいなことをよく聞くが、それはつまり、嫌なことがあっても「まあ僕が本気出せばこんなのイチコロなんですけどね」的な心の余裕があるから心が穏やかになるのだ。

これの心理を辿っていくと、「他人と違うからこそ心に余裕がある」に僕は行きついた。そうだ、他人と違えばいいんだ。

かといって今から筋肉を鍛えるのも面倒だし、柔道を始めるなんて柄でもない。面倒だし。だからもっと楽に他人と違いたい。どうしようか。

そうだ、登校中に滑り台を滑ろう。

当たり前だが、滑り台というのは対象年齢がざっと5~9歳くらいの小さな子供向けの遊具だ。しかも、登校中に滑りたくなっちゃった子供に向けたものでもない。放課後に友達と一緒に滑りに行くものだ。

だからこそ、誰もしていないのだ。登校中に滑り台を滑ることを。

そう思った僕は早速思いついた次の日に滑り台のある公園に行くことにした。





たどり着いた。
登校の最中についた公園は登校中の学生はおろか、ちっちゃい子供もおらず、いるのは犬の散歩をしていた人たちが一人二人いるだけだった。

もちろん遊具は誰も使っておらず、だだっひろい公園でただ一人の滑り台erだった。

この時点でワクワクが止まらなかった。いつも登校している時間に、公園にいるのだ。ましてや、今から滑り台を滑るなんて、誰も想像がつかないだろう。

階段を上り、子供用に作られたちいさい門を潜り抜け、滑り台の前に立つ。滑り台の床はカラフルで、それでいてローラーになっており、摩擦ですべらない、なんてことはなさそうであった。

今から滑るのだ。

ワクワクが最高潮に達する。



いざ、行かん!!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

楽しいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

たのし~~~のだ。

もちろん、登校中に滑るのは初めてだし、そもそも滑り台を滑ったのが数年ぶりだ。

非日常さと懐かしい感覚が相まって、僕は気づかぬうちに自然と笑顔になっていた。こんなのはじめて。

滑り終わり、登校に戻ろうとする。

すると、体の軽さに気が付いた。普段通っている道だったが、足が軽い。なんだか、見える景色も違う。ふと気づく。今まで「登校」という感覚で向かっていたのが、今は「散歩」のような、気ままにどこかに行こうという感覚になっていたのだ。

滑り台で遊んだんだから、このままどこに向かってもいいだろ、という気持ちが心のどこかに現れ、足取りが軽くなっていたのだ。

最高だ。滑り台を滑るだけでここまで心に余裕が生まれるのか。誰もが簡単にできるこの行為だが、登校の間に入れるだけで筋肉をもりもりつけたような安心感に包まれるのか。

しかし、この効果は長くは続かなかった。

一度しか滑り台を滑ってないが故、思ったより体がすぐに滑り台を滑ったという記憶を忘れ、今は登校の時間だということに気が付いてしまった。
そうなるともう、足取りは重く、面倒な行事へと早変わりしてしまった。

だが、感覚としては一度しか滑ってないから、という気がするのだ。
もっともっと、何度も滑り台を滑り、体を滑り台にならせばこの感覚は長く続くように思う。

だからこそ今度滑るときは五分間ノンストップでやるくらいにしたいと思う。そうすればもっともっと強くなれるはずだ。

明日もきっと、僕はどこかで滑り台を滑るだろう。



P.S. その日の授業はなんかクソ眠かったです。


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