見出し画像

【美術館ニュース】3月・科博の『恐竜博』に続き、5月末・上野の森美術館で『恐竜図鑑』が開催されます

今年は3月から上野の国立科学博物館科博にて、特別展「恐竜博2023」が開催されます(3月14日~6月18日)。

そして同じ上野の山にある、上野の森美術館でも5月31日〜7月22日の日程で、特別展『恐竜図鑑』が開催されます。立て続けに開催される恐竜関連のイベントですが、今回は、特別展『恐竜図鑑』の詳細が発表されたので、その内容を見ていきます。なお、特別展『恐竜図鑑』は、3月4日からは兵庫県立美術館で、上野よりも前に開催されます。

企画展『恐竜図鑑』パンフレット
左:兵庫県立美術館
右:上野の森美術館

■特別展『恐竜図鑑』は、恐竜アートの美術展

特別展『恐竜図鑑』は、上野の森美術館と兵庫県立美術館と、どちらも美術館で開催されます。なぜ美術館なのかと言えば、同展で展示されるのが、恐竜をはじめとする古代生物を復元した「パレオアート」だからです。

人類は、19世紀に初めて恐竜を“発見”しました。以来、恐竜は様々な姿形で想像されてきました。そんな恐竜のイメージの変遷を、世界で描かれた約150点のパレオアートでたどっていく企画展なのです。

ズデニェク・ブリアン《タルボサウルス・バタール》1970年 油彩・カンヴァス モラヴィア博物館、ブルノ © Jiří Hochman - www.zdenekburian.com and Fornuft Consulting s.r.o.

■1章 恐竜誕生―黎明期の奇妙な怪物たち

特別展『恐竜図鑑』の冒頭では、人類が恐竜を“発見”して間もない19世紀に描かれたパレオアートが展覧できます。パレオアートの黎明期といえる作品群ですね。

まずは古生物の生態を復元した、史上初の絵画のひとつと言われているのが、地質学者ヘンリー・デ・ラ・ビーチの《ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)》です。このデ・ラ・ビーチの原画をもとに、ジョージ・シャーフという人が版画にしたり、ロバート・ファレンという画家が油彩画を制作しました(人の名前が多すぎて、混乱しますね……)。本展では、その版画と油彩画が出品されます。

ロバート・ファレン《ジュラ紀の海の生き物 ドゥリア・アンティクィオル(太古のドーセット)》 1850年頃 油彩 カンヴァス 190×268cm ケンブリッジ大学セジウィック地球科学博物館 © 2023. Sedgwick Museum of Earth Sciences, University of Cambridge. Reproduced with permission

ちなみに下図は、地質学者ヘンリー・デ・ラ・ビーチの英語版のWikipediaに掲載されているものです。画像のクレジットとして「A More Ancient Dorset is a watercolour painted in 1830 by Henry De la Beche, based on fossils found by Mary Anning」とあります。つまりは、古生物学者のメアリー・アニングが発掘した化石をもとに、1830年に地質学者ヘンリー・デ・ラ・ビーチが、水彩で描いたものだということです。(ドーセットとは、イングランド南部の州。おそらく化石が発掘されたのが、このドーセットだったのでしょう)

A More Ancient Dorset is a watercolour painted in 1830 by Henry De la Beche, based on fossils found by Mary Anning

2章 古典的恐竜像の確立と大衆化

前章で紹介されたパレオアートの黎明期に活躍したデ・ラ・ビーチ(19世紀)に続き、19世紀末から20世紀中盤にかけて注目されたのが、アメリカで活躍したパレオアートの巨匠、チャールズ・R・ナイトと、20世紀中盤から後半にかけてチェコスロバキア(現チェコ共和国)で活動したズデニェク・ブリアンの2人です。2章では、この二大巨匠に加え、イギリスで活躍したイラストレーター、ニーヴ・パーカーの恐竜画も展示。

彼らの作品は、日本の図鑑などにも模写され、恐竜イメージの普及に大きな影響を与えました。かつての少年少女が胸おどらせ夢中で読んだ恐竜図鑑に描かれた恐竜画のオリジナルが、一堂に会します。

チャールズ・R・ナイト《ドリプトサウルス(飛び跳ねるラエラプス)》1897年 グアッシュ・紙 アメリカ自然史博物館、ニューヨーク Image #100205624, American Museum of Natural History Library.
ズデニェク・ブリアン《イグアノドン・ベルニサルテンシス》 1950年 油彩・カンヴァス 60×48cm モラヴィア博物館、 ブルノ © Jiří Hochman-www.zdenekburian.com and Fornuft Consulting s.r.o./Moravské Zemské Muzeum, Brno

3章 日本の恐竜受容史

19世紀に欧米で成立した恐竜のイメージは、世紀末には日本にも移入されました。古生物学者・横山又次郎によって「恐竜」という訳語が作られて以来、科学雑誌や子供向けの漫画、コナン・ドイルの『失われた世界』(1912年)といった古典SFの翻訳など、恐竜を主題にした出版物が広く刊行されることになりました。

これと並行して、恐竜の姿を模した玩具模型が多数制作され、今日では恐竜人気を支える中心的アイテムのひとつとなっています。本展では、ジャズピアニストであり国内有数の恐竜アイテムの収集家でもある田村博のコレクションによって、日本の文化史に登場する様々な恐竜を紹介します。

また、恐竜をテーマにした数々の漫画を手掛けた所十三の代表作『DINO²(ディノ・ディノ)』の貴重な原画のほか、ファインアートの領域から福沢一郎などの作品を介します。

所十三の『DINO²(ディノ・ディノ)』

4章 科学的知見によるイメージの再構築

1960年代から70年代にかけて、「恐竜ルネッサンス」ともよばれる大きな変革がもたらされます。「鈍重な生き物」から「活発に動く恒温動物」へと恐竜像が変化。恐竜画も進化を遂げ、新しいアーティストが次々と登場します。

本展では、インディアナポリス子供博物館や福井県立恐竜博物館のコレクションから、ファンタジーアートの領域でもカルト的な人気を誇るアメリカのイラストレーター、ウィリアム・スタウト、パステルを駆使して太古の世界の光と影を精緻に表現するダグラス・ヘンダーソンなど、現代の恐竜画の旗手たちのバラエティ豊かな作品群が集結します。

また、現代日本を代表するパレオアーティスト、小田隆の迫力ある作品も特集します。

ダグラス・ヘンダーソン 《ティラノサウルス》 1992年 パステル・紙 36.8×68.6cm インディアナポリス子供博物館 (ランツェンドルフ・コレクション) Courtesy of The Children's Museum of Indianapolis Douglas Henderson

以上が特別展『恐竜図鑑』のプレスリリースの内容です。プレスリリースの「企画協力」の項目には、古生物造形作家の徳川広和さんの名前も見られるため、おそらく同氏制作の恐竜模型も出品されるのでは……と思われます。

■開催概要

展覧会名: 特別展「恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造」
(英語表記)Dinosaur Dreams: Imagination and Creation of the Lost World
企画協力:小田隆(画家・京都精華大学教授)、徳川広和(古生物造形作家・株式会社ACTOW代表)、田村博(ジャズピアニスト・恐竜グッズ収集家)、エリック・ビュフトー(古生物学者・フランス国立科学研究センター研究部長)
展覧会公式サイト: https://kyoryu-zukan.jp/
展覧会公式Twitter: https://twitter.com/kyoryu_zukan (@kyoryu_zukan)

《兵庫展》
会場:兵庫県立美術館(神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1)
会期:2023年3月4日(土)~5月14日(日)
兵庫展公式サイト: https://www.ktv.jp/event/zukan/

《東京展》
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
会期:2023年5月31日(水)~7月22日(土)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?