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エッセイ 田中一村展

*はじめに
画の展覧会に行ってきたのですが、
見出し画像以外、写真はないです。
文章ばかりですいません。
この感動が伝わればよいですが。

東京都美術館で「田中一村展」が開催中だ。
僕も行ってみた。
上野駅の公園口から一直線。正面にある
上野動物園の近くを右に曲がると東京都
美術館だ。正直、僕は驚いた。
かなり久しぶりに上野に来たのだが、
こんなにオシャレな街になっていたんだ。
途中、国立西洋美術館で「モネ睡蓮のとき
」の展覧会も行なわれていて人が溢れてた。
少しだけ、そちらにも行きたくなった
けれど、初志貫徹。田中一村展に向かう。

田中一村は生前は無名の画家で、没後に
有名になった画家である。50歳を過ぎ、
単身奄美に渡り、亡くなるまで画を描き
続けた。代表作は「アダンの海辺」。
僕は「枇榔樹の森」が好きだ。

南国の島特有の植物と南国に生息する鳥を
画の中に精彩に描く。写真のように精緻に
描かれ、かつ、どこか温かみがある画に
魅了される人は多いだろう。

展覧会は8歳のときに描かれた絵から
始まり、最晩年の67歳までの画が、
計300点以上展示されていた。
そんなに展示されているとは知らず、
始めからじっくりと鑑賞していくと、
見終わった頃には3時間が過ぎていた。

展覧会に来ている人たちは、年齢層が少し
高い気がした。僕と同年代くらいの夫婦
連れが多かったか。若い人もいたけれど、
チラホラといった感じ。僕が行った日は
雨が降っていたからそのせいかもしれない。

田中一村は小さい頃は神童と呼ばれるほど
画が上手く、将来も期待された画家だった
が、なぜか展覧会では入選することが
出来ずに、不遇のときを長く過ごしている。
入選したのは「白い花」という画だけ
だったらしい。

もちろん、僕は画なんて全然わからない。
けれど、一枚一枚画を見てゆくうちに、
一村が何にこだわっていたのか、
考えながら見ていた。
葉の一枚一枚。花よりもたくさん描かれた
葉の一枚一枚がとても精緻に描かれていて
一枚の葉に多彩な緑が使われていた。
そうかと思えば、水墨画のように透明感の
ある色使いで葉の色を表現し、
葉のやわらかさを出しているように見えた。

23歳~25歳にかけて、
雁来紅(がんらいこう)という、
雁がやってくる頃に葉が紅く色づくという
植物を描いている。花はなく、葉しかない
この植物を、毎年描いていて、
23歳、24歳、25歳に描いた3枚の
画が並べられている。
同じ構図で雁来紅が描かれているのだが、
同じではないのだ。
この画を見たとき、確かに感じるものが
あったけれど、僕の拙い文章では言い表せ
ない。なので以下を引用する。

「無限性への意志によって様式を得んと
する努力で、ゴッホの頭は、いつも緊張
している。これは、殆ど彼自身にも
どうにもならぬ傾注の様に見える。
休息も眠りも許さず、
彼を駆り立てる名付け難い力と思われる。」

小林秀雄「ゴッホの手紙」

まさに不断の努力をし続ける人にしか到達
しえないところに一村は到達し、
奄美で完成したのだと思う。

「枇榔樹の森」に描かれた一匹の青い蝶。
アサギマダラ蝶。
画全体を枇榔樹が雨のように画面全体を
覆う中で、白い花に止まるアサギマダラ蝶
を画面の隅に配していて、
その青さに目を惹かれる。

「アダンの海辺」にはたくさんの人がいた。
中央に配されたアダン。その後ろには
海辺の景色が描かれる。
見過ごしてしまいがちなのは、その下に
描かれた砂礫。
一村はこの砂礫をよく見て欲しいと紹介文
を残している。見れば分かるけれど、
まるで写真のように一つ一つが
とても丁寧に描かれていて、これを全部
描いたと思うと、気が遠くなると思った。

展覧会は2024年12月1日まで。
あと1カ月程だ。


自分へのお土産に、「アダンの海辺」と
「枇榔樹の森」のポストカードを
買いました。「アダンの海辺」の栞も
売っていたので、こちらも買いました。
本を読むたびにこの画に会えるのは
少し嬉しいです。

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