掌編小説 アリの孤独
地べたを這うアリがいった。
「わたしは孤独です。」
僕にはアリの孤独の意味が
わからない。
僕はアリに答えた。
「僕も孤独なんだ。」
アリはいう。
「地表は人であふれています。
人を見ない日などありません。
なぜ孤独なのでしょう。」
僕は答える
「そういうアリだって、
たくさんいるじゃないか。
なぜ孤独なんだい。」
アリは答えた。
「わたしはどこに行くのも独りで、
誰も助けてくれません。
わたしがどこかで死んでも、
誰も悲しみません。
けれど寂しくはないし、
悲しくもないのです。
わたしは孤独です。
けれど独りではないのです。
あなたはどうですか。」
僕には答えられなかった。