Blue point of view 7

「君大丈夫? それ持ってきちゃったんでしょ? きっと探してるんじゃない警察の人」
紺色のコートの女は、疲れてガードレールにもたれて休む俺の隣に来て言った。
「ああ。でもいいんだ。あれを壊すのには必要なんだ」
「あー、だから壊したって意味ないって言ってるじゃん」
女は呆れたようにそれでいてすごく優しく包み込むように、俺に言う。
「だって、あれが呼びかけてきたんだ。壊せって」
「どうかしら。それってあなたの心の声か何かなんじゃない?」
「いやそんなことない! 俺は確かに聞いた気がするんだ。それにあれを壊せばいいって、本能的に何かが囁くんだ」
「それじゃあダメだって。だって君は逃げようとしているんだもの」
「そんなことない! 俺はただ変えたいんだ。このどうしようもない現実を……」
「じゃあそんな物騒なものに頼らないで、自分の力でどうにかしたらどうかな?」
「そんなこと言われたって。だいたいあんたに何がわかるんだよ……」
「わかるよ……」
「何が?」
「いや…… 何でもない」
その女はまた俺の手を引いて、黒で埋め尽くされた夜の中を駆け抜けていった。
「どこに行くんだよ! 危ないって!」
「あそこだよ! とりあえず気持ち落ち着かせないとでしょ?」
俺は手を引かれたまま、彼女の指す方を見た。そこには展望台のあるタワーが立っていた。タワーは、これでもかというくらい色とりどりのライトをチラつかせて、希望を求める全ての人の道標となっているように思えた。そして凛として妖しく揺らめき、俺の悲しみも吸い込んで、ただただ夜の中心に立っていた。

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