Yellow point of view 8
青詩くんから「大丈夫。」と返信が来て、ぼくは少しだけほっとした。青詩くんに言われたとおりに家の近くの公園で待っていると、夜の色がどんどんと濃くなっていく。ブランコに座っているぼくは、キーキーと音を立てながらブランコをかすかに動かす。
「待たせた! ごめん!」
息を切らして青詩くんがやってきた。そして、隣にはなぜか見覚えのある綺麗なお姉さんも一緒にいた。
「黄依ちゃん? 初めましてよろしくね。わたしは藍。青詩から聞いたわ。ありがとうね、青詩のこと心配してくれて」
「はい…… よろしくです。お姉さんはなんで青詩くんと一緒にいるの?」
「あっえっとね。なんていうか成り行きでね……」
「そうなんだ。黄依はあんまり気にしなくていいよ。それに、今日は遅いからもう家に帰ろう。俺が送っていくよ!」
青詩くんは、夕方よりもなんだか少し穏やかな表情をしている。
「あっうん。あと、お母さんに青詩くんも家に泊まることお願いしておいたから、大丈夫だよ」
「ありがとう。それじゃあ申し訳ないけど、お邪魔しようかな。もう戻れないし…… ごめん。助かる」
「でも青詩くん、あの星のこと急がなくていいの? あんなに必死だったのに」
「ああ今日はもういい…… ちょっと落ち着いて、いろいろ考えてみようと思う。」
そう言うと、青詩くんは藍さんの方をチラッと見た。
「そっか。青詩くんがいいならぼくはそれでいいよ。またゆっくりしてからあの星を探したくなったら、いつでも言ってね!」
ぼくは夜にとけてしまわないように、できるだけ透明な声で伝えた。
夜の公園には、ぼくが座っているブランコが揺れる音だけが響いていた。ぼくたちをどこかへと連れて行ってしまいそうな神秘と恐怖が、そこに横たわっていた。
「じゃあね。青詩! 黄依ちゃん! また必ず会えるわ」
手を振りながら、藍さんはゆっくりと公園を後にして行った。ヒールの音がカツカツと道路に響いて、未来を照らす道標のようなかすかな希望をふりまいていた。ぼくと青詩くんは、静かにぼくの家へ帰った。何かが終わったような、何かが始まったようなそんな不思議なもやもやが、ぼくたちの周りを渦巻いていた。ふと空を見上げると、今日は黄色い満月だった。とろけてきそうなその月は、クスクスと笑ってぼくたちに光をぽたぽた垂らす。
「きれい……」
その不気味な美しさに、ぼくは思わず声をもらした。
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