White point of view 8
わたしは美しいものが好きなんだ。だからただ美しいものに触れていたい。美しいものと触れ合っていると、自分が磨かれていくような気がするから。わたしが緑くんと触れ合いたいのもそのせいだ。それはどうしようもない甘美な誘惑で、わたしはその熟れたメロンのような香りに誘われて、緑くんのもとに行ってしまう。美しく繊細な緑くんの感性に触れたとき、わたしは蝶になれる。世界を新たに想像できるようなそんな気がする。蝶になったわたしはヒラヒラと世界を舞い、天井のない限りなくうすいエメラルドグリーンの螺旋階段を登り続ける。霧に包まれたようなその階段は、夢が醒めるのを妨げる。だってそこは、わたし達だけの秘密の塔だから。誰も近づけない美しい呪い。できるだけ華奢なリボンをかけて、わたしはわたし達を閉じ込める。そうやってわたしは、わたしの身体を透明感のある色で染め上げていく。美しく飾って生きていきたい。だってせっかく生きているんだもの。心がときめく人生を送りたい。そう思って何が悪いの? 緑くんと裸で抱き合い、わたしは今また自分を彩った。
「ああ…… やめられない」
わたしは心の中でつぶやいた。
誰か心がとける音を、聞いたことがあるのだろうか? わたしは今聞いた。自分の心がとける音を……
温かい何かがわたしの心にかけられて、わたしの心はバニラアイスみたいに溶け出した。その温かい何かは、メープルシロップのようにわたしの心に染み込んできた。じわじわと広がるその感覚は、わたしの心を支配していく。味わったことのない琥珀色の幸福感と、安心感で満たされていく。それはモルヒネのようにわたしの身体を麻痺させていく。
ああ…… しあわせなんだ。しあわせなんだわたし……
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