Green point of view 8
少しだけあったかくなってきたから、今日はどこかのカフェでランチをすることにした。俺は普通にハンバーガーとか、ラーメンとか、ジャンキーな食べ物も好きだけど、たまにはこういうオシャレな感じも良いかなと思う。何ていうかいろんな意味で、意識が上がるような気がする。世の中はもう卒業シーズンだ。大学もとっくに春休みに入っているし、自由にピアノを弾くか、バイトをする以外にやることもない。ああ…… でも女の子と遊ぶのは気晴らしになる。朱里からもらったバレンタインチョコは美味しかった。手作りだったように思えた。既製品にはない美味しさがあった。でも、あれからたまにメールを返すくらいで、ホワイトデーのお返しも出来ていない。また会いたいとは思うのだけれど、俺のコンディションが整っていない。ふらふら歩いていると、近所のテラス席のあるカフェが見えてきたので、そこに入ることにした。やっとコートなしでも外に出れるようになってきたので、せっかくだからテラス席に座った。ランチメニューの中からパスタを選び、俺はテラスから見える景色を眺めていた。店員のお姉さんが飲み物を運んで来てくれる。
「どうも。」
俺は軽く微笑みながら、お姉さんに声をかける。キッチンの方に戻っていくお姉さんと目を合わせて、再び微笑みかける。「きっとあの子とも仲良くなれるような気がする」そんなことを心で思いながら、俺は道行くさまざまな人々を眺める。世の中の流れを見つめているようで、妙に虚しくてぼんやりするようなこの作業が、俺は嫌いじゃない。しばらくすると、美味しそうな匂いのパスタとサラダが運ばれてきた。シンプルなお皿にきれいに盛り付けられていて、少女のようにピュアだった。お姉さんとまた目を合わせると、お姉さんは少し恥ずかしそうに会釈してもどっていった。「これはいけるな」俺は心でつぶやいて、パスタを食べ始めた。女の子が食べるようなランチを食べて、やっとやってきた春の風を感じいていると、すごく清々しい気持ちになる。春の風は、背負ってきたものや今までの出来事を洗い流していくかのように、静かで爽やかだ。ランチを食べ終わってひと息ついてから、久しぶりに大学にピアノを弾きに行ってみることにした。ピアノはいつだって従順だし、優しいし、こんな俺にいつも答えてくれる……
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