Red point of view 2

「けっこうおもしろかったよね。最後ハッピーエンドになったとこが気に入らないけど」
わたしは余ったキャラメルポップコーンを食べながら、緑くんと腕を組んで人だらけの映画館を歩いていた。
「そうだねー。俺もけっこう好きかも。展開読めるところもあったけど、なんか主人公の性格が好きだな」
緑くんもさらっと映画の感想を吐き出す。わたしたちはありきたりのSF映画を見て、どこにでもいるカップルのようなデートをしていた
「ねえ。なんかおいしいもの食べたい! 緑くんのおすすめのお店つれてってよ!」
「いいけど、もういつも行ってるじゃん。今日は行ったことないところに行こう」
「うん! それでもいい。でもさ、ご飯のあとも一緒にいてね」
「はは。いいよ。俺、明日授業午後からだから」
「ねえ緑くん」
わたしは背伸びして、緑くんにキスする。
「朱里は甘えん坊だな」
緑くんはわたしの頭をやさしく撫でる。
「デザートも食べていい?」
「もちろん。っていうかまだついてもいないよ」
「いいのー」
「朱里は本当いいよ。そういうとこ。素直でまっすぐだし、一緒にいて楽しい」
「ん? そうかな? ありがとう」
「はは。きれいだねなんか今のこの瞬間」
「ん? そうだね。わたしも好き。閉じ込めちゃいたいくらい!」
「閉じ込めようぜ」
緑くんは手を組んで、わたしをもっと近くに引き寄せる。
「ああ、しあわせ」わたしはこっそり心の中でつぶやいて、微笑む。緑くんといるとき、わたしは本当に自由だ。久しぶりに、サバンナに放り出された動物園のライオンみたいに自由だ。自分でも不思議なくらいに、安心するんだ。何か目に見えないベールに包まれて守られているような、おしゃれで繊細な安心感。触ったら消えてしまいそうなこの不思議なバランスの緑くんとの関係が、今のわたしの唯一の楔で、唯一の隠れ家だ。こんなにめんどくさくてやっかいな世界で、唯一わたしが生き返れる場所と時間だ。だからわたしは今を精一杯楽しむ。そうやって緑くんが言うように、この瞬間をガラス瓶にいっぱい詰め込みたいから。そしてわたしが人生に迷ったとき、そのガラス瓶を開いて、魔法のように自分にふりかけたいから。わたしはカスタード色の甘い数秒先の未来へ、ステップを踏んで飛び込んだ。

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