Blue point of view 5

 そびえ立つビルの中を俺と黄依は歩いている。通り過ぎて行く人々は、みんな早足にすれ違って行く。ビルについているスクリーンでは、たくさんの広告が繰り返し流されている。大きな交差点を人々は狂ったように群がって渡っていく。その時あのいびつな星が、あちこちで一瞬だけきらめいた。
「あっ」
俺はそう言うと、あちこちでちらつくその星を探して駆け出してしまった。もう少しだ。あれを壊せば、きっと沙羅は戻ってくる。きっと。そうしたら今度はもっと優しくしてやるんだ。そして、ちゃんと遊園地にも連れてってやるんだ。この世界がもっともっと希望に満ちて、楽しいことがあるんだって、教えてやるんだ。そうじゃないとあまりにも可哀想じゃないかあの子が。星を見失いそうになって、道を歩く人に何度もぶつかりながら急いで駆け出していく。うるさい人々の声や、人々の欲望うずまく街の吐息が、俺にふわっと降りかかってくる。そんなものをかき分けながら、俺は星を追いかけた。
「邪魔だよ! 何ぶつかってんだよ!」
俺は、180㎝は越えているであろう大きな男に弾き飛ばされて、道に倒れこんだ。
「お前何ぶつかってきてんだよって言ってんだろ!」
「うるさい! 俺は探さなきゃいけないんだよ!」
無視して走り出そうとする俺を、その男は思いっきり殴り飛ばした。
「無視してんじゃねえよ!」
そいつは何度も俺を殴ってきて、俺は必死に抵抗したけれど、だんだんと意識が薄れていくのを感じた。
「ダメだ。早くあれを追わないと…… そうしないと沙羅が戻ってこない」
俺は悔しくて悔しくてたまらなくて、その男を蹴飛ばして最後の力で逃げようとした。けれどその次の瞬間、その男にタックルをされて俺はアパレルショップの中に飛ばされた。服がかけてあるハンガーラックにぶつかって、ハンガーラックの下敷きになった俺は、たくさんの服がハラハラと落ちてくるのを見た。そしてそこで俺の意識は途絶えた。

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