Blue point of view 8

「どう? 落ち着いた?」
彼女は俺を覗き込むようにして、濃く深い茶色の髪を揺らす。
「うん。少し……」
「君は本当にがむしゃらだね」
「そんなことない…… ただ、いまのこの状況を変えたいだけだよ」
「だからあの星を壊すと?」
「ああ…… そうしろって何かに訴えかけられているんだ」
「逃げるの?」
「え? 誰がそんなこと?」
「だって、そういうことでしょ。現状から目を背けて逃げたいってことでしょ? 違う?」
「違う! 俺はあの星に立ち向かうんだ! だからあいつを壊すんだ!」
「それが間違ってるって言ってるの! それに…… 今のままじゃあの星に触ることすらできないよ」
「ああ…… もうよくわからないよ……」
タワーの下に広がっている夜景が、ぼんやりと輝いて幻想的な景色を作り出す。
「本当によく考えて、最後に自分で結論出しなさい。とりあえず今は何を話しても、同じことの繰り返しになっちゃいそうだから」
「ところで…… あんたは誰なんだよ? 急に現れてさ……」
「そうだな…… あなたの保護者みたいなものかな。わたしは藍。よろしくね!」
「何だよそれ…… なんか調子狂うな。早くあの星、壊したいんだけどな」
「だから! 今は無理だしダメだって!」
「あーもうわかった。いいよ今は」
隙間から入る夜風は、妙に鮮やかで、俺の心をワクワクさせる。
「青詩はもう少し頑張れるよ。うん。きっと……」
藍と名乗る彼女は、どこかものすごく遠くを見つめてそうつぶやいた。俺はしばらく何も言わずに、いつも暮らしているはずの街を見下ろしていた。よく知っているはずの街が、なぜだかすごく新鮮に感じる。まるで初めて来た街のように…… ぼんやりとした街の光が、生き物のようにうごめいて帰る場所を探すように、夜空を埋め尽くしていく。俺は自分を入れ替えるように深呼吸した。

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