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市販品に学ぶ ~名刺入れ・考~

こんにちは、HAKUです。

先日、レター型の名刺入れを制作してYouTubeに動画をUPしました。よろしければ制作過程の動画をお楽しみください。

こちらのnoteでは動画ではご紹介できなかった事、制作時にアレコレ考えたことを書いていきたいと思います。何気に名刺入れってこれで生涯3作目。まだまだアイテムに対する理解が不足しているなぁ。

仕上がりのサイズに悩む。

名刺入れの制作経験が少ない私。今回、型紙をデザインするにあたって結構悩んだのが仕上がりのサイズ感です。

名刺はだいたい91mm×55mmが標準となるサイズ(関東では名刺4号、関西では9号と呼ばれるサイズです)。デザイン系のお仕事をされている方や、キャバクラのお姉ちゃんとか稀に奇抜な名刺をいただくこともありますが、”標準サイズよりも大きい”ということはまずないでしょう。

欧米サイズですと89mm×51mm(ヨーロッパでは85×55)など国や地域によって微妙な違いはあるようです。いずれにしても、日本国内で主流の91mm×55mmが収納できれば大抵のサイズは対応可能そうです。

ところが、市販されている革製の名刺入れをザッと見てみると、収納対象の名刺に対して意外とサイズが大きいことに気が付きます。

一例として、こちらは「PORTER(吉田カバン)」さんの名刺入れですが、外寸表記を見ると「W110×H75×D15」とあります。

ざっくり言うと縦横サイズが名刺そのものよりも20mmほど大きいのです。

これは吉田カバンさんだけに限ったお話ではなく、たいていの革製名刺入れはだいたい横幅が105~110mm。縦幅が65~75mmサイズで作られています。

一方で、こちらは無印良品が火付け役となり一般に浸透した金属製のカードケース。

こちらは外寸表記を見ると93mm×60mmとかなり名刺に近しいサイズ。革製の名刺入れに比べると圧倒的にコンパクトですね。こういう点がこのタイプの名刺入れが人気を集めた要因かもしれません。

もちろん、素材も構造も収納力も違うのでサイズだけを比較しても仕方がない部分もありますがデザインを検討する上でこのサイズ差は気になるところ。

特に今は「荷物をなるべく小さく、少なくする」というのが一つの大きなトレンドですから、仕上がりサイズをどうするか?というのは結構大事なテーマじゃないかな、と悩んでしまった訳です。

なんでだろう?革製名刺入れがデカい訳

今回、制作をしながらこの名刺入れのサイズについて自分なりに色々と考えてきましたが、なるほど、市販の革製名刺入れのサイズには意味がありそう。

一つは、やはり「名刺を保護する」ということ。

「はじめまして」と出した名刺の角が折れていたり、汚れていたり、シワがついていたらみっともないですよね。「コイツと取引して大丈夫か?」と思われてしまいます。なので名刺入れは単に名刺を持ち歩くだけでなく名刺をキレイに保護する役割も担っていると思います。

そこでネックとなるのが「マチ」。

マチは言わずもがな収納力を確保するパーツですが、内側に折れ曲がると却って名刺の角などを痛めてしまう可能性があります。

長財布を作る時に「マチが大きく開いたら使いやすいハズだ!」と意気込んで作ったら紙幣が引っかかって「くそっ、使いにくいな!あ、カド折れた」みたいな…経験のある方も結構多いのでは!?

きっと市販されている革製の名刺入れはマチ(の折返し部分)が名刺に干渉しないように横幅を広めに取ってあるのかな、と思います。

縦寸法(深さ)についてもクレジットカード等と異なり名刺そのものがすっぽりと収まり全く見えなくなるサイズ・構造になっていることが多いです。これも名刺を汚したり折ったりしないため、と考えるとそんな気がしてきます。

そうは言っても+20mmはちょっとサイズ大きすぎないかい?

そう思ってタイトなサイズで試作をしてみましたが…惨敗。名刺が入ることは入るのですが出し入れがしにくくて「スッ」と出せないんだな。

そうやってアレコレ試行錯誤した結果、最終的にできあがったものは108mm×74mmと、結局一般的な名刺入れのサイズに落ち着きました。一周回ってもとに戻る、みたいな。

きちんとしまえて、スッと出せる

名刺自体の保護という目的と合わせて、「いざ」という時にスッとストレスなく出せるというのも名刺入れの大事な機能。名刺交換で焦ってバタついていたら印象も良くないですし、その後の商談にも影響しちゃいそうですもんね。

名刺をしっかり保護しつつ、いざという時に取り出しやすい。そんなバランスを追求していくと一般的な革製の名刺入れのサイズになるんですね。なんだか凄いな―。

「フツー」や「当たり前」って凄い

今回、改めて思ったのは「普通」とか「当たり前」とか、そういう一般的なモノってやっぱりスゴイな、ということ。

趣味とは言え自分でモノづくりをしてみると、「なんだかこれじゃフツーだな」「これじゃ、ありふれた形で面白くないな」とか思ってしまいがちですが、実はその「フツー」ってものすごい事なんですよね。

デザインのプロが消費者が未だ気づかないニーズやウォンツを拾い上げたり、時に消費者の声を聞いたりしてサイズや機能を具現化してきた。そして、それらが長い年月をかけて淘汰され、洗練されて今の世の中に存在している…。

そう考えると「フツーだな」「ありきたりだな」と言ってしまいがちなモノの形や機能って、実はスゴイと気付かされます。先の名刺入れも然り。「一般的なサイズ」と簡単に言いましたが、きっとこのサイズ感が一般化するまでにいろいろな試行錯誤があったハズ。

作る前は「なんだかデカイんだよなー」なんて思っていたサイズ感も、制作を終えて振り返るとものすごく洗練されたサイズ感のように思えてきました。

レザークラフトをしていると、ついつい斬新なものやオリジナリティのあるもの、時に奇抜なものに目を奪われてしまう時もありますが、今あるものの良さや凄さに気づくのもまた面白いものだなぁと思います。


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