接着剤を使い分ける
こんにちわ、HAKUです。
先日から接着剤について記事を投稿してきたので、今日は私なりの接着剤の使い分けについてご紹介してみたいと思います。前回、前々回の記事をまだご覧になっていない方はぜひ先にこちらをどうぞ。
使い分けと言っても私の場合は結構大雑把なものですが、参考になれば幸いです。
まずは特徴を整理してみる
接着剤の使い分けをする前に、接着剤の特徴を知っておかなければ使い分けも何もできません。まずは各接着剤の特徴を整理しておきましょう。
【ゴム系ボンド(溶剤系)】
・接着する両面に塗り、塗布面が乾いてから圧着。
・塗布面の柔軟性が維持される。
・縫製を前提とした仮止めタイプと、完全接着タイプがある。
・トルエンなど有機溶剤を利用して希釈・粘度調節できる。
【水溶性ボンド(サイビノール)】
・片面塗布でも接着可能。半乾き状態で貼り合わせる。
・塗布面が乾いてしまうと接着力は発揮しなくなる。
・塗布面はパリッと固くなりハリがでる。
・乾くと非常に強い接着力を発揮する。
・乾くと透明になり目立たない。
・水を加えるとゆるくなるが、ダマや接着ムラになることも。
非常にザックリと2種類の接着剤について特徴を書き出してみました。使い分けを考える前に最低限このあたりの特徴についてはしっかりと抑えておきたいポイントではないかな、と思います。
私の使い分け事情
以上の特徴を踏まえた上で、私の使い分け事情ですが、私はメインでゴム系の接着剤(ノーテープ9820)を使っています。理由は、私の「手が遅い」からです。
上記の特徴でも触れたように、ゴム系の接着剤は塗布面が乾いてから圧着して使用します。言い換えれば塗布から貼り合わせまで時間的な余裕があるということ。
私のように作業スピードに自信がない場合や、貼り合わせをする際に位置関係をきちんと確認したい場合は、この時間的な余裕がとてもありがたいものだったりします。
逆にサイビノールは貼り合わせのタイミングを図るのが少し難しい印象。特に広い面積になると手早く作業をしなければ、全て塗り終わる頃には最初に塗った部分が乾いてしまっている(=接着不良を起こす)なんて事も。
あと、ゴム系接着剤で何気にありがたいと思うのは「圧着して初めて接着力を発揮する」という特徴。ファスナーを貼る際など圧着する前であれば多少の貼り直しが効くので、結構重宝しています。
「ゴム系メイン」ということで、逆に「どのような時にサイビノールを使うのか」を次から具体的にご紹介してみましょう。その方が使い分けとしては分かりやすいですよね。
私がサイビノールを使う時
【1】ヘリ返しをする時
以前はヘリ返しもゴム系接着剤を使っていましたが、最近はほぼサイビノールを使うようになりました。理由は「片面接着でも可」「完全接着」という特徴です。
ゴム系接着剤は両面塗布が必要です。これは言い換えれば片側に塗りムラがあると即・接着不良につながるということです。
ヘリ返しをする際、返すヘリの部分と、返したヘリを貼り付ける部分の両方に接着剤を塗布しますが、もし片側に塗りムラがあったら…ゴム系だとそこから剥がれてしまうリスクがあります。
サイビノールの場合は「片面接着でも可」ですから、仮に塗りムラがあったとしても、もう片側にしっかりと接着剤が塗布されていればセーフ。要するに接着不良を起こすリスクが低い訳です。
またサイビノールは完全接着タイプですから乾くと強力な接着力を発揮してくれます。ヘリ返し部分にステッチをかけずに仕上げたい場合などはとても便利です。
【2】ハリをもたせたい時
サイビノールは「塗布面がパリッと硬くなりハリが出る」特徴があります。これを意図して使うことで完成時の質感をコントロールするわけです。
残念ながら私の作例ではマッチする事例がありませんでしたので、メロディさんのキーケース動画を拝借。
ずいぶん薄い芯材を使うんだなぁと思っていたらサイビノールでベタ貼りをしてハリ感マシマシ作戦を実行されていました。「厚みは抑えたいけれど、もう少しハリが欲しい➞サイビノール」という制作の意図が伺えますね。
芯材と接着剤の”合わせ技”でハリ感をコントロールするとは…お見事ですね。
【3】糸止め
ポリエステル系の化繊糸であれば焼き止めができますが、私がよく使うリネン系の糸では焼き止めができません。そのため最後に糸にサイビノールを塗布し、革の中で一重結びをして縫い終えます。
これは言わずもがなですが、「乾くと透明になる」というサイビノールの特徴を踏まえての使い方です。
【4】コバ割れの補修
これはあまり褒められた使い方ではありませんが…。縫製途中やコバ磨きの最中に貼り合わせたコバの一部がパカッと割れてしまうことが時折あります。
接着剤の塗りムラや圧着不足、接着箇所に無理なテンションがかかっている、など色々と原因は考えられますが、そういったコバ割れの補修にサイビノールが便利です。
丸ギリなどを使ってコバの割れた部分にサイビノールを押し込み、圧着してやると簡単にコバ割れの補修ができます。ゴム系ボンドを使うと既に塗布してある接着剤とくっついてダマになり、接着面が凸凹してしまう可能性があるので、私はサイビノールを使うようにしています。
以上が私がサイビノールを使用する主なケース。コレ以外の場合はたいていゴム系ボンドを使うことが多いです。
ただ、ATSUSHI YAMAMOTOさんの動画を観ると、「サイビノールはもっと活用できそうだぞ」っと感じるのでなるべく使用機会を増やしていきたいなとは思っています。
仮止めか完全接着か
もうひとつ、「仮止めタイプ」か「完全接着タイプ」か?という使い分けのポイントもあるかと思いますが、私はほとんど完全接着タイプを使ってしまっていますので実際に使い分けはしていません。
ただ本職の方、ミシン縫製する方は仮止めタイプを使う方が多いような印象です。万一修理で戻ってきた際にも革を傷めることなくバラすことができたりと仮止めタイプならではのメリットも有るようです。
そういったメリットも分かった上で、私は「しっかりと接着できている安心感」の方を選んでいます。このあたりは今後私自身も要・探求といった感じです。
先の記事にも書きましたが、水性ゴム系ボンドなども含めて色々と使い分けや乗り換えが発生するかもしれませんね。
最後に
接着剤について3週に渡って書いてみましたが、改めて整理してみると、ホントに奥が深いですね。
思い返してみるとレザークラフトを始めたばかりの頃は「縫い穴を開ける」とか「コバを磨く」とか派手な(?)技法にばかり目がいって接着についてはほとんど意識を向けていなかった気がします。
接着・貼り合わせはあまり目立たないけれど、仕上がりを左右するめちゃめちゃ大事な工程。バレーボールで言えばセッターのような感じでしょうか。(バレーボール経験者・HAKU談)
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