立ち読み日記 岸恵子・著『91歳5か月』 大女優の書いた人物回顧録?
岸恵子の本が出ていたので立ち読みをした。買わずにごめんなさい。
岸恵子というと、私が知る限り、最初から大女優というか、現役感のまったくない存在だった。
一番最初に認識したのは、『GORO』という雑誌で篠山紀信が激写したグラビア写真だ。50年近くも前のことだ。
当時私は中学生で、自分の母親くらいの人の水着の写真を見せられても、よくわからなかった。
その前後に、ショーケン主演の映画に、出ている女優なのだと知るのだが、『約束』も『雨のアムステルダム』もまだ見ていなかった。
『約束』はその後に、何回も見ているが、『雨のアムステルダム』は、2010年代になるまで見ていない。
1990年代に、レンタルビデオで50年代や60年代の邦画を借りて見るようになって、岸恵子の出演作品も見ることがあったが、現役の女優としての活動は、『細雪』くらいしか思い浮かばない。
それ以外となると、ゲスト出演みたいなイメージだ。あ、テレビで向田邦子ものに出ていたようないないような……。
岸恵子に対しては、女優というよりも、本を出している人というイメージの方が大きい気がする。エッセイとか旅行記とかだ。何かをチラッと読んだことがあるが、自慢話っぽくて、最後まで読めなかった。
私の岸恵子に対する認識は、そういうものだから、女優岸恵子の本質を受け止められないでいる、かなりズレたものになっているのだと思う。
ということで、岸恵子の本だ。『91歳5か月 いま想う あの人 あのこと』というタイトルで、これまで関わり深かった人物に関して書いた(語った?)本だ。昨今の例にもれず、活字が大きく行と行の間隔が広い。とっても読みやすい、老人向けのつくりの本になっている。
目次らしきものをコピペすると、
鶴田浩二さん/萩原健一さん/中曽根康弘さん/石原慎太郎さん/瀬戸内寂聴さん/原田芳雄さん/佐田啓二さん/中井貴一さん/三國連太郎さん/佐藤浩市さん/小津安二郎さん/美空ひばりさん/力道山さん/川端康成さん ほか、
となっている。なかなか威圧的な?メンバーだ。これらの人物について語っているのだ。
私が立ち読みしたのは、萩原健一さんの章だ。その内容は、ショーケンの本に書かれてあることと、かなり食い違っていた。しかし、岸恵子のハナシにも明らかな間違いがあったりする。「言いっ放しvs言いっ放し」、みたいな感じになっている。
本を作る段階で、誰かがウラをとったり、事実を確認したりはしないらしい。
結局、ショーケンはこう言っている(書いている)けれど、事実はこうだった、と岸恵子が書いているという平行線のハナシになっている。
どっちもどっちみたいな印象を受けるけれど、もしかしたら、長生きした方が情報を上書きして、軍配が上がるのかもしれない。
しかし、これはやっぱり、誰か第三者の評論家なり伝記作家が、事実関係を整理した方がいいと思うのだ。
しかし、そんな価値もなく、意味もない小さなことだと流されればそれまでなのだけど……。
でもそんな感じだと、日本の映画史もいい加減なままになってしまう気がする。
それはそれとして、岸恵子にとっても、ショーケンは、かなり思い出深い人だったらしい。しばらく前に出した自伝(現在、岩波文庫になっている)では、ショーケンに関して1行も触れていなかったから、そんなものかと思っていたので、ショーケンのファンとしては、今回の本で1章割かれていて、少し満足した。
って、いい年をこいて、私はバカみたいだ。