書籍レビュー『破天荒フェニックス オンデーズ再生物語』
『人は新たな希望を逃すよりも、既に手にしているものを失うことの方がはるかに怖い』
本書を読んでこのフレーズが最も心に残った。
著者は30歳の時に年商20億円に対して、14億円もの債務超過に陥っていたオンデーズを買収し、その後、見事に立て直しを行った経営者である。
前述のフレーズは、物語後半でオンデーズが海外進出を果たしたシーンで出てくる言葉である。
企業として堅実に債務を返済し財務の健全化を進めるか、それともさらに大規模な投資を行って海外出店を加速していくか。
経営判断には常に、簡単に手に入る正解はない。
何かを得ようとすれば何かを失う可能性があるのだ。
そんな中でも自分の判断を信じ、社員を鼓舞して荒波をかき分け進んでいく著者の経営手法には感銘を受けた。
リスクを把握していないわけではない。
倒産や不渡りに対する恐怖心がないわけではない。
実際に本書の中でも著者が恐怖やプレッシャーを感じる場面はいたるところに出てくる。
それでも、すでに手にしているものを守らず、新しいチャレンジを進めるその姿に、人は魅力を感じるのだろう。
著者の田中社長とは奇しくも同年代である。
今一度自分に問いたい。
自分は何を守っているのか。
本当に挑戦をしているか。
「できる方法」より「できない理由」を考えていないか。
そう思わせる一冊である。