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部下への指示はWHYを伝え、HOWを任せる

こんにちは。はこにわガジェットです。
当マガジン「マネジメントハッカー」では主にマネージャーやリーダーの方を対象に仕事のマネジメントに関わるノウハウやTIPS等をお伝えしていきます。

今回のテーマはこちら。

部下への正しい指示の仕方

上司から部下への指示。上司からするとなかなかうまく伝わらなくてやきもきすることも多いかと思います。でも、逆に部下からすると指示された意味が理解できない、ということも良くあるものです。
今回は上司から部下への指示はどうしたら良いのか、についてお話しします。

ケーススタディ

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ITソリューションの販売を手掛けるA社の営業企画部に在籍する若手社員の牧野は、上司である高橋課長からこんな指示を受けた。

『当社の新商品のプロモーション用Webサイトを立ち上げることになったから、君に作成してもらいたい。トップページのイメージはこんな感じで、こんなコンテンツを準備して・・・』

牧野はおおまかな要件を確認し、早速Webサイトの作成を開始した。基本は高橋の指示に従い、具体的な指示のなかった細かい点は、これまでの経験からこれがベストだろうという自分なりの考えを持ってプロトタイプを作成した。
特にトップページには新商品のブランドイメージを意識したクオリティの高い画像を用意し、洗練されたイメージが出るよう配慮した。

そして、高橋にプロトタイプを見せて進捗を報告したのだが、高橋からは意外な指摘があった。

『こんなに格好良いサイトにしても、この商品が狙うターゲットは高齢の中小企業経営者なんだから敷居が高く感じてしまうよ。もっとベタなデザインで画像はこっちにしてくれないか。
あと、別にブランドイメージなんてどうでも良くて資料請求できればいいんだから、資料請求フォームを目立つようにしてくれよ。ボタンの色も目立つように赤がいいな。画像も目立つように複数の写真がくるくる回るようにしたらどうだ。
で、これはいつ完成できるんだ?新商品は来週発売だが。』

牧野は自分なりの工夫が受け入れられなかったことに落胆し、また高橋からの細かな指示に対応するこれからの仕事を考えてげんなりしたのだった。

部下の行動決定プロセス

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ケーススタディのように、上司からは丁寧に説明したつもりが、部下の仕事が期待と異なるアウトプットを出すことはままあります。
ここで都度、作業レベルの指示をして修正させていては時間がいくらあっても足りませんよね。

そもそも人間の行動は、以下のプロセスを経て決定されます。

①価値観の構築
何が正しいのか。目的は何なのか。

②判断
価値観に照らし合わせるとこれは良いのか悪いのか。

③行動
判断に基づいて実行する。

この、③行動が上司の期待と合わない場合、行動のみが誤っているのではなく、その上位の②判断、更にいうと①価値観が上司と合っていないのです。

逆に言えば、価値観が上司と部下で共通認識できていれば、細かい指示がなくとも部下が上司と同じレベルで判断をしてくれることになります。

阿吽の呼吸とも言うべき状態で、この状態になるととてもスムーズに仕事が進みます。

価値観を共有するための方法

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では、こうした状態になるために、どうやって価値観を部下と擦り合わせれば良いのでしょうか。

その答えが、本記事のタイトルでもある、指示を『WHY、WHAT、HOW』で整理することです。

・WHY:目的。なぜその仕事をするのか。
・WHAT:内容と目標。何をやるのか。いつまでにどの程度やるのか。
・HOW:手順。どうやるのか。

先ほどのケーススタディに当てはめると、上司である高橋の考える今回のプロジェクトはこうなります。

WHY:目的
高齢の中小企業経営者から新商品の資料請求依頼を獲得したい。

WHAT:内容と目標
新商品のプロモーション用Webサイトを発売日までに作成する。

HOW:手順
・高齢者にも親しみのある分かりやすいデザイン
・資料請求フォームをわかりやすく
・目立つ色を使う、等

ケーススタディでは高橋課長が上記のWHYを伝えず、WHATを中心に指示しているのです。そのため、指示を受けた牧野との間でそもそもの目的がすりあわず、認識齟齬が発生した結果、HOWの部分にずれが生じています。

これは極端な例ですが、実際に皆さんの職場でも近しいことは起こっているのではないでしょうか。上司は指示する際にWHYをきちんと伝えることで部下と認識の齟齬が起きないように注意したいものです。

逆にWHYがきちんと伝わっていれば部下側で工夫する余地が出てきます。
目的意識はあっているので、部下から「もっとこうしたらよいのではないか」というアイディアが出てきて、結果的に上司だけでは想像できなかった成果物ができ上ることもあるのです。

こうした、部下の能力を最大限に発揮するためにもWHYを伝えることは重要だと言えます。

HOWの指示の悪影響

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WHYを伝えることはぜひ積極的に行っていただきたいのですが、逆にHOWの伝え方には注意が必要です。

新入社員や経験の浅い人に指示をする際は、どうやって仕事を進めていいか悩んでしまうため、HOWを丁寧に説明してあげる必要があります。

しかし、一方である程度仕事ができる人に対して上司がHOWを細かく指示すると、本人の自律性を奪うことになります。自分なりに考えてやってみたのに、上司が事細かに口出ししてきてやる気がなくなった、という経験は多くの方がお持ちなのではないでしょうか。しかも、その指示が論理的な根拠に基づくものではなく、上司の個人的好みによるものであればなおさらです。

心理学者エドワード・L・デシが提唱したモチベーション理論において、内発的動機付けを生み出す源泉として以下の3つの欲求が挙げられています。

・自律性:自ら行動を選び、主体的に動きたいという欲求
・有能感:何かを成し遂げて、周囲に影響力を持ちたいという欲求
・関係性:他者と深く結びつき、互いに尊重しあう関係を作りたいという欲求

HOWの指示は上記の内、「自律性」を奪うことでメンバーのモチベーションを低下させてしまうのです。

また、メンバーのモチベーションを下げるだけでなく、メンバーが自分で考えず、上司が考えた施策を実行するだけのチームになってしまうことも問題です。

現在の変化の激しいビジネス環境では上司の経験・スキルだけですべての状況において適切な対応を取っていくことは難しく、メンバーを含めたチームの総合力で戦っていくことが重要なのですが、これができなくなってしまうのです。

これらから、上司からメンバーへの指示はできるだけ「WHY」を伝え、メンバーとの価値観の共有化を図っていくことが重要です。「HOW」はできるだけメンバーに任せ、上司はその責任を取る覚悟をメンバーに示すことで信頼感を醸成しましょう。

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