もしうちの庭を見に来たら
「花がないね。春のに寂しいね。」
「この野菜の植え方は違うよ!肥料は何をやってるの?」
「あら、柿の木に若葉がたくさん。向こうにも緑がいっぱいでいいね。」
「雑草、たいへんだよね。抜いても抜いてもどんどん生えるよね。」
「日焼けが、、」
「このフェンス、いくらだったんだろう。」
「隣と比べたら、外から結構見えちゃうんじゃない?」
「ドッグランみたい。うちの犬喜ぶかも。」
「ねぇ、見たことない虫がいるよ。何これ。」
「いろんな鳥の鳴き声がする。あれはシジュウカラで、あれはヒヨドリ。」
「車、結構通るね。え、前はバス通りなの?」
「今日の晩ごはん、どうしよう。この後買い物行かなきゃ。」
「あ、LINEの返信が。庭とか、あまり興味ないんで。」
たぶん、それぞれ違う所に興味があって、他はあまり見えてなくて、見えてる部分だけで、この庭の持ち主の私がどんな人か判断する。
もっと大まかに言えば、私たち夫婦がどんな夫婦か。この年代は。この地域は。
通りすがりやたまにしか会わない人ならどう思ってもらってもいい。
もしこれから毎日顔を合わせなくてはならない人なら。
私は人には裏の顔があり、それは99個あると思っている。(裏という言葉になぜネガティブなイメージがあるのかはさておき、)それは毎日くるくる変わり、表に出てくる。
初対面は緊張したり気取ってしまったり、とかく本来の自分とは違ってしまうもの。
自分にいろんな顔やいろんな気持ちがあるように。気分次第でまた違ってくる言動があるように。
相手もまた同じ。
諦めず、見限らず、自分と相手にチャンスを。
もしうちの庭を見に来たら、夫が嬉々として豆からコーヒーをいれますよ。100個の顔から選りすぐりのひとつを表に出して。(何?このホラー感)