人生はディティールで構成されていることについて
江國香織さんの本がすきだ。
なぜなら、江國さんの書く物語は、とるにたらないことで構成されているから。
たとえば、『冷静と情熱のあいだ』にはつぎのような描写がある。
目がさめて寝室がうす暗く、水音がきこえるとぐったりしてしまう。雨は好きじゃない。昼間こうして部屋のなかで本を読んでいても、膝の裏に触れるソファの質感が水を含んでいるし、頁をめくるたびに湿った紙の匂いがする。
マーヴが仕事から戻ったとき、私はすね肉をセロリと煮込みながら、台所で本を読んでいた。「ただいま」うし